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週刊タイ経済
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自動車産業の高度化支援
自動化投資に優遇措置
BOI

 投資委員会(BOI)は11月9日、パンプリー・パヒッタヌコーン副首相兼外相を議長に開いた本会議で、自動車産業を高度化するための投資奨励策を決定した。オートメーションとロボティクスを活用した自動車生産の効率向上を促すもので、エンジン車、ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車生産の既存プロジェクトと新規プロジェクトの両方をカバーする。
 自動化システムやロボットへの投資額の50%まで、法人所得税を3年間免除する。国内の事業者の装置・システムを少なくとも30%以上使う場合には投資額の100%まで法人所得税を免除する。24年末までに投資申請することが条件。
 タイは自動車を年間190万台を生産し、東南アジアで最多、世界でも10番目につけているが、ナリット・トゥードサティラサックBOI事務局長によれば、EV化という大きな変革期を迎えている。自動車メーカーが調整を迫られるなか、自動車産業高度化への取り組みによって事業者の競争力を高め、技術変革の時代に対応できるようになると述べている。
 自動車・同部品産業はタイ経済の成長を支える重要産業で、輸出額ではトップ。1~9月合計の輸出額は1兆200億バーツを数え、前年同期比8.2%増。タイの輸出額全体の14%を占めている。業界には80~90万人の雇用があり、サプライチェーンには2300社を超える企業がつらなる。自動車メーカーは20社以上、サプライヤーはTier1が530社、Tier2とTier3が1750社ある。
 なおこの日の本会議ではサウジアラビアのリヤド、中国の成都、シンガポールの3か所にBOIの在外事務所を新たに開設することを決定した。中国と台湾にある4か所の在外事務所の人員も増やす。現在、BOIは日本(2か所)、中国(3か所)を含む12か国・地域に16の海外事務所を設置している。

BOI投資申請件数
1~9月は22%増に

 今年1~9月の投資委員会(BOI)への投資申請は1555件となり、前年同期比22%増を記録した。合計投資予定額は5168億バーツで、前年同期を31%上回った。
 ナリット・トゥードサティラサック事務局長は11月9日の記者会見で、タイへの投資に対する外国人投資家の信頼が高まっているとし、タイ経済を「ニューエコノミー」に変革することを目的に今年初めから開始した5か年投資奨励戦略は成功していると評価した。
 外国人直接投資(FDI)は申請件数で前年同期比49%増となる910件、合計投資予定額は同43%増となる3985億バーツ。中国が最大で、264件、974億バーツを占めた。シンガポールからの投資申請は133件、802億バーツ、日本からは176件、431億バーツだった。台湾が63件、361億バーツ、韓国が15件、326億バーツで続く。ナリット事務局長は、こうしたポジティブな反応はタイのポテンシャルに対する外資の信頼を反映していると述べ、BOIが戦略的分野と革新的なエコシステムの育成に注力していることで、タイへの投資は魅力的なものとなっていると述べた。
 ターゲット産業への投資申請は787件、全体の51%を占めた。投資予定額は3662億バーツで、全体の71%を占めた。業種別で最多となったのは電機・電子で、171件(前年同期比84%増)、投資予定額は2082億バーツ。アグロ・食品加工は213件(同32%増)、557億バーツ、自動車・同部品は151件(同89%増)、422億バーツ。これらプロジェクトは年間2兆バーツの輸出増と10万人以上の雇用をもたらす。
 ナリット事務局長は、投資環境をさらに改善するため、BOIが他の政府機関と協力して様々な分野で「投資のしやすさ」に関連した障害を解消していくと述べた。それには外国人事業許可(FBL)要件の緩和、外国人ビジネスマンのビザと労働許可に関する規制の緩和、クリーンで再生可能なエネルギーの供給、その他投資関連の規制緩和が含まれるとしている。

トヨタの前田副社長
セーター首相と会談

 セーター首相は11月9日午前9時半、首相官邸を訪れたトヨタ自動車の取締役・執行役員副社長である前田昌彦アジア本部長、タイ国トヨタのカリン・サラシン会長をはじめとする幹部と会談した。
 首相は、日本の自動車会社の重要性をよく認識しており、引き続きタイへの投資を支援すると述べた。また投資誘致に向け、今年12月の日本公式訪問に合わせて追加の施策やインセンティブを発表する考えを示した。
 トヨタ側は、タイが世界的な自動車生産・輸出拠点となっていることから、EVでも東南アジアでトップの生産拠点になれるようタイ政府と協力していくと伝えた。プラユット前政権から続くタイ政府のEV振興政策を支持するもので、税制優遇や補助金による長期的な支援を求めた。
 一方でタイの自動車産業のサプライチェーンを維持するため、エンジン車からハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、バッテリーEV、燃料電池車までをカバーする自動車生産に関するガイドラインの策定を要請した。首相は一緒に議論していきたいと応じた。

ケリー・エクスプレス
設備自動化に10億バーツ

 ケリー・エクスプレス(タイランド)は業務効率向上のため、物流センターの完全自動化などに10億バーツを投資する。オンライン通販プラットフォームからの受託業務への依存度を引き下げ、3倍の利幅がある個別宅配(C2C)事業への傾斜を強める。同社は昨年28億バーツ、今年上半期18億バーツの赤字だったが、ワラーウット・ナットプラディットCEOは、先端技術導入による業務効率の大幅な改善を通じて、来年には黒字転換を目指す考えを明らかにしている。
 同社のC2C事業の収益構成比は今年第2四半期で45%。オンライン通販プラットフォームを含む法人対消費者(B2C)事業が52%となっている。第1四半期のC2Cは42%で、来年は60%まで引き上げる。
 物流センターでは仕分け作業を完全自由化することで業務速度を3~4倍高めるとともに、人為的ミスの発生率を1%未満に抑えることを目指す。また自己学習機能を備えた人工知能(AI)を導入したデジタル・マッピング・システムを導入することで、運送ルートの選択効率の引き上げと迅速化、誤送の削減などを実現する。
 現在4か所ある物流センターは、それぞれ3万5000平米の広さがあるが、このうち2か所の完全自動化が完了、来年第1四半期中にはバンナーの物流センターの自動化が完了する予定になっている。導入する技術は親会社のSFホールディングから持ち込むもので、同社のデジタル・マッピング・システムを使えばドローンによる無人配送も将来的には可能になるという。
 同社の取り扱っている荷物は現在、1日190万点、従業員数は1万5000人、先端技術の導入は燃料費の削減や人手不足の解消を通じた利益体質の確立につながると、同CEOは見込んでいる。

村田電子タイ
MLCC工場を新設へ

 投資委員会(BOI)のナリット・トゥードサティラサック事務局長は、ムラタ・エレクトロニクス(タイランド)社による積層セラミック・コンデンサ(MLCC)工場建設事業80億バーツを投資認可したことを明らかにした。年間生産能力は900億個。
 EVの需要増などにともなってMLCCの需要が急増することを見込んでいる。EV1台には約3000~5000個、スマートフォン1台には500~1000個のMLCCが使用されている。
 工場はラムプーン県に建設する予定で、中国、シンガポールに続く海外第3工場となる。同社のMLCCの世界市場におけるシェアは40%に達している。約2000人の雇用創出をもたらすことが見込まれている。

最近の更新 2023年11月20日
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