仮想銀行免許の申請
3月20日から受付開始
財務省布告
来年半ばまでに事業者選定へ
財務省は3月5日、ヴァーチャル銀行(仮想銀行)の免許申請の原則、方法、要件を定めた財務省布告が制定されたことを明らかにした。4日付けの官報に記載された。物理的な本支店を持たずにテクノロジーとデータを活用して金融サービスを提供する商業銀行で、主に既存の銀行によるサービスを受けていない者やアクセスできないでいる者を顧客に想定し、適正料金で金融サービスを提供する。
免許申請者は商業銀行業務の十分な経験と専門知識、資源を持ち、コーポレート・ガバナンスも確立されていることが条件。免許が交付されれば、セキュリティやリスク管理などの各種の準備を整えて1年以内に事業を開始しなければならない。
中銀は仮想銀行免許の交付を構想した当初から免許の数は3件としてきたが、布告では免許数を指定しておらず、中銀がタイの金融機関システムに最適な数を検討するとしている。利用者の利益となるよう仮想銀行間の競争を刺激する一方で、サービス利用者やタイの金融システム全体の安定性にリスクをもたらさないことを重視して交付する数を決める考えで、3行が基本路線となっている。
財務省の報道官を兼ねるポンチャイ・ティラウェート財政局長は、仮想銀行の創設について、デジタル・エコノミーの推進と東南アジアの金融ハブを目指した金融インフラの開発という政府のビジョンに合致すると説明した。また金融サービスの利用にあたって国民の選択肢が増えると見込んでいる。
申請は3月20日から9月まで受け付ける。審査は中銀と財務省が共同であたり、審査には約9か月を要し、来年半ばまでに事業者が選定される。開業は26年の見通し。
事業者の最低登録資本金は50億バーツで、開業から5年以内に100億バーツに増やすことが求められる。仮想銀行はタイ中央銀行の監督を受け、預金は預金保険機構によって保護される。国内外の他の金融機関と提携して提携先の預金/信用システムやインターネット・バンキングを使うことはできない。
タイ中央銀行の金融機関戦略担当シニア・ダイレクターのウィパーウィン・プロムブン氏は7日、仮想銀行が本支店を持たず、少ない従業員で経営できるという強みから、金利や手数料は安く設定することができ、銀行システム全体の競争の活性化につながると考えていることを明らかにした。中銀は仮想銀行が、既存の商業銀行による融資を受けることができない人たち、特に中小事業者や個人向けに適切な料金でサービスを提供するよう監督していく考え。
金融当局は商銀が国内外のパートナーとの合弁事業として仮想銀行免許を申請することを想定している。国営商業銀行のクルンタイ銀行(KTB)は移動通信のAIS、PTTオイル&リテール・ビジネス(OR)、ガルフ・エナジー・デベロップメントと組んで免許取得を目指す。サイアム商業銀行(SCB)を傘下に置く持ち株会社であるSCB・Xは韓国のカカオ・バンクと組んで免許申請する計画を発表している。キアットナーキン・パトラ銀行はトゥルー・マネーと組んで免許取得を目指す。
セーター首相が独仏訪問
セーター首相は3月7日、ドイツのベルリンで開催された世界最大の観光見本市「ITBベルリン2024」に参加し、タイ政府による「アメージング・タイランド・ネットワーキング・イベント」でタイの観光産業を推進するためのビジョンと政策を表明した。タイの持つソフトパワーを活かして観光客の思い出に残るようなユニークなイベントやフェスティバル、コンサートを開催していく方針を明らかにした。
8日にはフランスで同国の大企業トップと精力的に面談し、タイへの投資を呼びかけた。ホテルチェーンのアコー・グループ・ワールドワイドの幹部に投資増を求めたほか、フランス・オートクチュールおよびファッション連盟の幹部には東南アジアのファッション/デザイン・ハブを目指す政策を概説し、ファッションショーの開催や若手デザイナー育成で協力を求めた。ミシュランの幹部はタイでのタイヤ製造での追加投資の計画を首相に伝えた。
自動車産業向けのシステムインテグレーションと安全技術の設計を専門とするヴァレオ、航空機のエアバス、メガネ・レンズ/フレーム製造販売のエシロール・ルックスオティカ、自動車部品サプライヤーのフォルヴィア・グループの幹部にもタイへの投資拡大を呼びかけた。9日にはフォーミュラEの主催者である国際自動車連盟(FIA)の幹部と会い、タイでのフォーミュラE開催に関心があることを伝えた。
商業省の農産物輸出統計
特定品目/市場依存が鮮明に
ナピントーン・シーサンパン商業副大臣はこのほど、農産物/アグロインダストリー製品の輸出状況を概説し、輸出農産物の大部分が一次加工にとどまっている現状を指摘した。農産物/アグロインダストリー製品の輸出企業が、輸出市場を多様化することでリスクを軽減し、また加工の価値を高めていけるよう支援していく方針を明らかにした。
ナピントーン副大臣は、タイが依然として少数品目の農産物の輸出に大きく依存し、中国を中心とした少数の市場に依存していることは明らかで、リスクを軽減するため品目と輸出市場の両方を多様化する必要があると指摘している。
昨年の物品輸出額は2850億ドルで、うち農産物/アグロインダストリー製品が全体の17・3%を占めた。輸出額は492億ドルで、農産物が268億ドル、アグロインダストリー製品が224億ドル。
農産物の輸出額で最多は果物類で69・4億ドル、農産物の輸出額全体の25・9%を占めた。米が51・4億ドル(19・2%)、ブロイラーが40・8億ドル(15・2%)、タピオカが37・0億ドル(13・8%)、ゴムが36・5億ドル(13・6%)で続く。上位5品目で農産物輸出全体の87・7%を占めている。昨年の輸出額伸び率でトップは鶏卵で前年比72・4%増となった。米の29・3%増、果物の22・8%増、食肉の6・2%増、エビの6・0%増が続く。
農産物の輸出市場では、中国が113億ドル(全体の42%)、日本が32・1億ドル(12%)、米国が15・1億ドル(5・6%)、マレーシアが11・9億ドル(4・4%)、インドネシアが9・4億ドル(3・5%)だった。これら上位5か国で農産物輸出全体の67・5%を占めている。伸び率が最も大きかったのは英国向けで114%増。以下、フィリピン(63・1%増)、南アフリカ(35・4%増)、ラオス(18・5%増)、シンガポール(11%増)が続く。
アグロインダストリー製品では水産缶詰(全体の15・5%)、砂糖(15・4%)、飼料(11・0%)、スターチ/その他加工品(10・9%)、飲料(9・1%)の上位5品目でアグロインダストリー製品の輸出額全体の61・9%を占めている。輸出市場では、米国が28・7億ドル(全体の12・8%)、中国が20・3億ドル(9・1%)、日本が17・1億ドル(7・6%)、カンボジアが14・5億ドル(6・5%)、インドネシアが13・8億ドル(6・2%)だった。これら上位5か国でアグロインダストリー製品の輸出全体の42・2%を占めている。
中国のSVOLT
EVバッテリーの量産開始
エネルギー大手のバンプーの子会社であるバンプー・ネックスは3月7日、SVOLTのタイ工場の生産ラインが正式に稼働開始したと発表した。EV用リチウムイオン・バッテリーパックの生産ラインで、長城汽車(GWM)やNETAブランドのEV向けに供給する。SVOLTタイランドは、中国のSボルト・エナジー・テクノロジーとバンプー・ネックスの合弁会社。
タイ工場で生産するのはLCTPバッテリーで、工場にはデジタル検査・分析システムなど人工知能(AI)を活用した最先端技術を導入している。生産ラインは柔軟性が高く、様々なタイプのバッテリーの生産を迅速かつ容易に切り替えることができるという。今年の納品数量は市場のEV需要に沿って2万台を超えると見込んでいる。
現在、タイ国内には以下の7社のバッテリー工場が稼働または計画中。(1)SAICモーター・CP社とMGセールス(タイランド)社のHSCO・CP・バッテリー・ショップ。(2)エナジー・アブソルート社のアミタ・テクノロジー(タイランド)。(3)BYDオート(タイランド)社のブレード・バッテリー。(4)バンプー・ネックスとSVOLT。(5)NVゴーションとヌーボー・プラス。(6)NETAオート(タイランド)。(7)CATLとアルン・プラス。
中国との貿易赤字
今年1月も増大傾向
商業省の貿易統計によれば、23年の貿易収支は51億9200万ドルの赤字になっている。輸入額が2897億5400万ドルに達した一方で、輸出額が2845億6100万ドルにとどまったためで、特に中国との貿易では366億3500万ドルの巨大赤字となっている。中国からの輸入は708億ドルだったのに対し、輸出額は341億6400万ドルだった。
今年1月のタイの貿易収支は27億5700万ドルの赤字。輸出額は前年同月比10・0%増となる226億4900万ドルとなったが、輸入額が254億700万ドルに達した。
1月の中国との貿易赤字は46億1300万ドルで最多となっている。その次に多いのは台湾との貿易での15億4100万ドルの赤字。以下、スイスが9億1300万ドル、アラブ首長国連合が7億6400万ドル、韓国が3億7200万ドル、サウジアラビアが3億7100万ドル、カタールが3億3300万ドル、日本が3億300万ドル、ブラジルが2億9000万ドル、マレーシアが2億6800万ドルの赤字で続く。中国との貿易赤字は膨らんでいるが、その他の国・地域との貿易赤字は縮小する傾向にある。
貿易収支の赤字は燃料、資本財、原材料/中間財の輸入依存度が高いことが主因で、今年1月の原油や天然ガスなど燃料の輸入額は42億6800万ドル、資本財の輸入額は60億100万ドル、原材料/中間財の輸入額は105億4300万ドルを数えている。
マーケティング・メデイア
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