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最低賃金300バーツ 四月一日からの実施が確定

 プアタイ党が昨年七月の総選挙で政権公約に掲げた最低賃金の全国一律での1日あたり300バーツへの引き上げが、いよいよ実現に向けて動き出す。四月一日からはバンコク首都圏とプーケット県の最低賃金が300バーツに改定されるほか、他県でも約40%の引き上げになる。

 プーケット県の最低賃金は1日あたり221バーツから79バーツ上昇し、300バーツになる。またバンコク都、ノンタブリ県、パトゥムタニ県、サムットプラカン県、サムットサーコン県、ナコンパトム県の最低賃金は1日あたり215バーツから85バーツ上昇し、300バーツになる。残り70県の最低賃金は二〇一一年の最低賃金から39・5%前後の引き上げになる。70県の最低賃金は再度改定され、二〇一三年一月一日より1日あたり300バーツにする。プーケット県、バンコク都、ノンタブリ県、パトゥムタニ県、サムットプラカン県、サムットサーコン県とナコンパトム県の最低賃金については1日あたり300バーツで据え置かれる。また一四年と一五年はタイ全土で最低賃金を1日あたり300バーツに据え置くことになっている。

 今年四月からの最低賃金の1日あたり300バーツへの引き上げを不服とする民間企業42社が賃金委員会を訴えていた行政訴訟で、中央行政裁判所は三月二〇日、訴えを棄却した。中央賃金委員会の決定は適切な手続きに従ったもので、雇用者は同委の決定に従わなければならないとした。原告の民間企業は、政府主導での最低賃金の引き上げは不当だと主張したが、行政裁は賃金委が労働者の生活費、インフレ、生産コスト、賃金上昇の影響も調査した上で、県小委員会の意見も聴取して決定されたことを指摘している。

 タイ工業連盟(FTI)の幹部は、中小企業は洪水の痛手に加え、賃金が大幅に上昇することで倒産が相次ぐと主張している。とくにエレクトロニクス、家具、室内インテリア用品などの産業が大きな痛手を被るとしている。

 労働集約型の工業では、最低賃金の上昇と人手不足からタイの工場をカンボジアやビルマに再配置する動きが出ている。カンボジアの賃金は1日あたり93バーツでしかなく、タイの最低賃金はカンボジアの3・2倍になる。ビルマは東南アジアで最も賃金が安く、平均で1日あたり70バーツとなっている。ベトナムでも最低賃金は200バーツで、タイの賃金はベトナムの1・5倍になる。タイ衣料製造業者協会(TGMA)のワロップ・ウィタナコーン顧問は、大手衣料メーカーの少なくとも6社が縫製工場のビルマへの再配置を計画していることを明らかにしている。

 電子コンピュータ使用者協会のサムパン・シラパナット会長は、加盟企業のほとんどすべてが四月から給与の大幅な引き上げを余儀無くされると述べている。タイ工業連盟(FTI)電機・エレクトロニクス部会のスパチャイ・スティポンチャイ部会長は、賃金が需給関係で決まるのなら重大な問題ではないが、最低賃金は法的に従わなければならないもので、大幅な引き上げは経営を圧迫するとしている。スパチャイ部会長が出身企業であるシャープの人件費は20%増になるとしている。

 タイ工業連盟(FTI)のターニット・ソーラット副会長は、最低賃金が300バーツになれば、スーパーバイザーや部門マネジャーなどの月給も引き上げる必要があることを指摘している。また政府が大卒公務員の初任給を月1万5000バーツに引き上げたことについても、民間部門の人件費増をもたらしているとしている。民間企業の大卒初任給は一般職で概ね1万~1万1000バーツ、エンジニアや経理などの専門職で1万2000~1万5000バーツだったが、求職者の多くが公務員並みの初任給を要求し始めており、以前の初任給の水準では採用が困難になりつつあるという。

 パドゥムチャイ・サソムサップ労働相は三月二一日、ホテル、レストランなどのサービス業に多いチップや手間賃などの特別収入は1日あたり300バーツの最低賃金には含めることはできないと述べ、特別収入込みで300バーツと主張する雇用側を牽制した。最低賃金に何が含まれるのかは労使が合意すべきだとし、もし合意が得られない場合には、労働裁判所の調停機能を活用するよう勧めている。

 アーティット・イサモー労働保護福祉局長は、チップなどの収入は労働法の下では福祉と定義されることを指摘している。チップの扱いについては、使用者側が22%を取り、残りを労働者に分けるよう命じた最高裁判決がある。アーティット局長は、チップや手間賃は顧客、サービス利用者が払うもので、雇用者が出すお金ではないことを指摘、賃金には当たらないとしている。


日付 : 2012年03月26日

By : 週刊タイ経済

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