ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

東芝タイランドの被災10工場 一〇月までに完全復旧

 東芝タイランドのコープカーン・ワタナウォランクン会長は七月一一日、チュラロンコン大学サシン・ビジネススクールのフォーラム「変化のアジア」で講演し、昨年の洪水被害を回顧した。先の大洪水で、東芝の工場はパトゥムタニ県バンカディ工業団地の9か所とナワナコン工業団地の1か所が冠水した。これらの工場は昨年一〇月二一日から43日間にわたって水没した。コープカーン会長は、アユタヤ、パトゥムタニ両県の7つの工業団地が冠水した昨年の大洪水は、ビジネス連続性計画(BCP)の重要性を浮き彫りにしたと述べている。

 コープカン女史はバンカディ工業団地の運営会社の会長も務める。バンカディ工業団地は洪水防止のため全長9・12㌔㍍の堤防を建設中で、建設予算は3億4516万バーツ。国が2億3010万7000バーツを補助する。二〇一二年三月二日に着工し、八月三一日に完工予定で、六月二九日現在の進捗率は57・70%となっている。コープカン会長は、将来の洪水から団地を保護するため、平均海水面から高さ5㍍の堤防を築いていることを示している。過去70年間に記録した最大降雨量をベースに十分な高さを確保したとしている。さらに継続的な監視システムを導入する予定で、ポンプも配置する。

 タイ東芝の被災工場10か所は、復旧が進んでおり、洪水前のおよそ70%の水準まで生産が戻ってきている。一〇月までには全面復旧を見込んでいる。東芝は10工場でハード・ディスク・ドライブ、半導体、エアコン、冷蔵庫、電子部品やコンピュータ部品を生産しており、累計投資額は250億バーツ、従業員数は1万人に達する。

 バンカディ工業団地の入居工場では、2社が操業を再開できないでいる。既存の顧客をつなぎとめておくことができず、銀行の支援が得られないでいる。またいくつかの会社は保険金をまだ受け取っていない。コープカン女史によれば、東芝グループの保険金の受け取り額は請求額の30%程度で、残りは支払い待ちの状態。

 先の大洪水では人的資源の重要性も浮き彫りになった。多くの従業員が通勤困難になり、多くの企業が出勤した従業員だけで工場を動かそうとしたが、欠勤した従業員の代役が務まるマルチの経験を有した従業員は少なく、複数の工程をこなすことができる熟練労働者を育てることの重要性に気づかされた。洪水はまた、多くの事業者が以前には見落としていたか、または無視したかもしれない他のリスクに気づかせる契機にもなった。コープカン女史は、洪水被災で経営者は360度、すべての角度から、すべてのリスクを注視しなければならないことに気づかされたと述べている。

 コープカン会長は、企業は一切のリスクなしで持続安定的に事業を経営していくことが不可能なことをほとんど誰もが分かったと思うと述べ、生じるはずのどのような災害にも耐え、生き抜くことができるより強い民衆、会社と社会を持つよう、我々自身が免疫力を付けなければならないと結んでいる。


日付 : 2012年07月16日

By : 週刊タイ経済

登録