二〇一三年の経済成長率 NESDBは4・5~5・5%増予測
国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局は一一月一九日に発表した「エコノミック・アウトルック」レポートで、二〇一二年のタイ経済の成長率は5・5%増と予測した。二〇一一年の0・1%増からは上向くが、3か月前の予測値の5・5~6・0%増の予測範囲の下方値にとどまることになる。一方、一三年の経済成長率は4・5~5・5%増の成長になると予測した。
一二年の一般インフレ率は3・0%増と予測した。一一年の3・8%増を下回る。また経常収支はGDP比0・8%の黒字と予測、一一年の同1・7%の黒字から低下する。NESDB事務局は一二年の成長率が5・5%増にとどまることについて、洪水の影響を受けた生産セクターの回復が前回の経済予測における見込みよりも遅れていることを理由の第一に挙げている。最も新しいところでは、一二年一一月二日時点で、まだ155社が事業運営を再開できないでいる。これは洪水の影響を受けた工業団地の工場数の18・5%に相当する。また生産を一部再開した事業者は460社で、八月時点のデータに近似したものとなっている。こうした情勢から、下半期の工業生産と輸出の伸びは従来の予測を下回ることになり、タイの経済が5・5%増を上回る成長を遂げる機会も低下するとしている。
世界経済の回復が予測よりも遅れていることも、成長率が低くなる理由で、輸出価格と輸出数量の回復に影響を及ぼしている。アジア域内国の生産と輸出は一二年一〇月に緩やかな回復に向かっているが、一二年九月から回復に向かうとした前回の経済予測よりも遅いとしている。このため今回の予測では輸出の予測値を下方修正している。
ただ国内の民間消費と民間投資は前回予測を上回って成長する見通しにある。初めての新車購入に対する税還付措置の実質的な期間延長が寄与しており、生産と輸出の回復の遅れによる影響の軽減に寄与している。
二〇一三年のタイの経済成長率は4・5~5・5%増と予測した。経常収支はGDP比1・0%の黒字。NESDB事務局は、一三年のタイ経済の成長率が5・0%増に達するには、①世界経済の成長率が3・9%増を下回らない、②一三年平均の石油価格が1バレルあたり113㌦を超えない、③政府部門の投資予算の執行率が目標の80%を下回らず、水資源管理計画とインフラ投資計画の下での予算の執行額がそれぞれ600億バーツ、100億バーツを下回らない、④旱魃問題が農業生産に激しい影響を及ぼさないといったコンディションが必要になると指摘している。
一三年の経済成長の中身に関しては、消費支出の伸びは全体で3・8%増となり、一二年予測の5・3%増から減速する。民間消費は4・0%増となり、一二年の5・2%増から鈍化する。洪水被害代替のための消費支出の効果が薄れる。ただし民間消費の成長を下支えする支援材料として、世界市場の商品価格が上向く見通しにあること、全国での300バーツへの最低賃金の引き上げ措置、生産セクターの回復、初めての新車購入者への税還付措置による勢いが、民間消費に対して一三年上半期まで効果を発揮すること、インフレ圧力がさほど大きくないことを挙げている。政府消費支出は政府部門の歳出予算の増加にともない2・5%増と予測した。
総固定資本形成(投資)の伸びは8・1%増と予測した。一二年の12・0%増から鈍化する。民間投資は8・0%増と予測され、一二年の13・7%増から鈍化する。洪水被害復興のための投資が一巡したことが理由。ただし新規投資が一三年の民間投資の推進力としての役割を高めるとしている。二〇一二年一~九月期の投資奨励の申請ベースの投資予定額と認可ベースの投資額はそれぞれ97・1%、155・9%増加している。一方、政府投資は伸びが加速する見通しで、一二年予測の5・7%増が一三年には8・5%増に加速すると予測した。政府部門の予算執行の伸びが加速することによるもので、投資予算の執行率の目標は80%に定められている。また水資源管理計画とインフラ投資計画の下での予算執行による追加の支援材料もある。
米ドル建て物品輸出額は12・2%増を見込んでいる。一二年の5・5%増を上回る。輸出価格は4・2%上昇する。また輸出数量は一二年の5・0%増を上回る8・0%増と予測される。世界経済の回復、電化製品・エレクトロニクス製品貿易の回復、世界経済の不確実性が高まった二〇一二年に各国の在庫水準が低下していることや国内の生産セクターの回復、前年の実績値が低いローベース効果が支援材料になる。観光業の成長にともないサービス輸出が好調で、成長が続く見通しにあることを合わせると、物品・サービス輸出数量は7・8%増と予測され、二〇一二年の4・2%増から加速する。
米ドル建ての物品輸入額は12・4%増と予測した。一二年予測の8・8%増から加速する。経済予測モデル沿って輸入価格は3・7%上昇する。一方で、輸入数量は8・7%増加する見通し。輸出額の伸びが加速することや投資が引き続き拡大するトレンドにあること、バーツ相場が上昇基調にあることが資本財、消費財の輸入需要の拡大をもたらすと見ている。サービス輸入も伸びが加速する見通しにあることから、一三年の物品・サービス輸入数量の伸びは8・5%増と、一二年予測の6・8%増を上回る見通し。
貿易収支は137億㌦の黒字が見込まれている。一方、経常収支は38億㌦の黒字が見込まれ、一二年予測のそれぞれ126億㌦の黒字と28億㌦の黒字を上回る。
一三年のインフレ率は2・5~3・5%増となり、一二年予測と近似した水準にとどまると予測した。世界市場の石油価格は通年平均で急騰する見通しにはなく、またバーツも上昇基調にあることが理由。いずれにしてもインフレ圧力が前年に比べて上昇するリスク材料もある。すなわち①国内のエネルギー価格構造調整、②経済システムとグローバル金融における過剰流動性による圧力で、石油価格や商品価格が予想以上に急騰する可能性がある。
日付 : 2012年11月26日
By : 週刊タイ経済
一二年の一般インフレ率は3・0%増と予測した。一一年の3・8%増を下回る。また経常収支はGDP比0・8%の黒字と予測、一一年の同1・7%の黒字から低下する。NESDB事務局は一二年の成長率が5・5%増にとどまることについて、洪水の影響を受けた生産セクターの回復が前回の経済予測における見込みよりも遅れていることを理由の第一に挙げている。最も新しいところでは、一二年一一月二日時点で、まだ155社が事業運営を再開できないでいる。これは洪水の影響を受けた工業団地の工場数の18・5%に相当する。また生産を一部再開した事業者は460社で、八月時点のデータに近似したものとなっている。こうした情勢から、下半期の工業生産と輸出の伸びは従来の予測を下回ることになり、タイの経済が5・5%増を上回る成長を遂げる機会も低下するとしている。
世界経済の回復が予測よりも遅れていることも、成長率が低くなる理由で、輸出価格と輸出数量の回復に影響を及ぼしている。アジア域内国の生産と輸出は一二年一〇月に緩やかな回復に向かっているが、一二年九月から回復に向かうとした前回の経済予測よりも遅いとしている。このため今回の予測では輸出の予測値を下方修正している。
ただ国内の民間消費と民間投資は前回予測を上回って成長する見通しにある。初めての新車購入に対する税還付措置の実質的な期間延長が寄与しており、生産と輸出の回復の遅れによる影響の軽減に寄与している。
二〇一三年のタイの経済成長率は4・5~5・5%増と予測した。経常収支はGDP比1・0%の黒字。NESDB事務局は、一三年のタイ経済の成長率が5・0%増に達するには、①世界経済の成長率が3・9%増を下回らない、②一三年平均の石油価格が1バレルあたり113㌦を超えない、③政府部門の投資予算の執行率が目標の80%を下回らず、水資源管理計画とインフラ投資計画の下での予算の執行額がそれぞれ600億バーツ、100億バーツを下回らない、④旱魃問題が農業生産に激しい影響を及ぼさないといったコンディションが必要になると指摘している。
一三年の経済成長の中身に関しては、消費支出の伸びは全体で3・8%増となり、一二年予測の5・3%増から減速する。民間消費は4・0%増となり、一二年の5・2%増から鈍化する。洪水被害代替のための消費支出の効果が薄れる。ただし民間消費の成長を下支えする支援材料として、世界市場の商品価格が上向く見通しにあること、全国での300バーツへの最低賃金の引き上げ措置、生産セクターの回復、初めての新車購入者への税還付措置による勢いが、民間消費に対して一三年上半期まで効果を発揮すること、インフレ圧力がさほど大きくないことを挙げている。政府消費支出は政府部門の歳出予算の増加にともない2・5%増と予測した。
総固定資本形成(投資)の伸びは8・1%増と予測した。一二年の12・0%増から鈍化する。民間投資は8・0%増と予測され、一二年の13・7%増から鈍化する。洪水被害復興のための投資が一巡したことが理由。ただし新規投資が一三年の民間投資の推進力としての役割を高めるとしている。二〇一二年一~九月期の投資奨励の申請ベースの投資予定額と認可ベースの投資額はそれぞれ97・1%、155・9%増加している。一方、政府投資は伸びが加速する見通しで、一二年予測の5・7%増が一三年には8・5%増に加速すると予測した。政府部門の予算執行の伸びが加速することによるもので、投資予算の執行率の目標は80%に定められている。また水資源管理計画とインフラ投資計画の下での予算執行による追加の支援材料もある。
米ドル建て物品輸出額は12・2%増を見込んでいる。一二年の5・5%増を上回る。輸出価格は4・2%上昇する。また輸出数量は一二年の5・0%増を上回る8・0%増と予測される。世界経済の回復、電化製品・エレクトロニクス製品貿易の回復、世界経済の不確実性が高まった二〇一二年に各国の在庫水準が低下していることや国内の生産セクターの回復、前年の実績値が低いローベース効果が支援材料になる。観光業の成長にともないサービス輸出が好調で、成長が続く見通しにあることを合わせると、物品・サービス輸出数量は7・8%増と予測され、二〇一二年の4・2%増から加速する。
米ドル建ての物品輸入額は12・4%増と予測した。一二年予測の8・8%増から加速する。経済予測モデル沿って輸入価格は3・7%上昇する。一方で、輸入数量は8・7%増加する見通し。輸出額の伸びが加速することや投資が引き続き拡大するトレンドにあること、バーツ相場が上昇基調にあることが資本財、消費財の輸入需要の拡大をもたらすと見ている。サービス輸入も伸びが加速する見通しにあることから、一三年の物品・サービス輸入数量の伸びは8・5%増と、一二年予測の6・8%増を上回る見通し。
貿易収支は137億㌦の黒字が見込まれている。一方、経常収支は38億㌦の黒字が見込まれ、一二年予測のそれぞれ126億㌦の黒字と28億㌦の黒字を上回る。
一三年のインフレ率は2・5~3・5%増となり、一二年予測と近似した水準にとどまると予測した。世界市場の石油価格は通年平均で急騰する見通しにはなく、またバーツも上昇基調にあることが理由。いずれにしてもインフレ圧力が前年に比べて上昇するリスク材料もある。すなわち①国内のエネルギー価格構造調整、②経済システムとグローバル金融における過剰流動性による圧力で、石油価格や商品価格が予想以上に急騰する可能性がある。
日付 : 2012年11月26日
By : 週刊タイ経済