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グリーン工業団地の造成 NESDBが候補地3か所

 国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局のアーコム・トゥームピタヤパイシット事務局長は、環境にやさしい産業を誘致するグリーン工業団地の造成のため、適正立地の研究を進めていることを明らかにした。十分な水を供給でき、洪水のリスクのない地域であることを前提に、これまでの調査研究からナコンナヨック県、プラチンブリ県、チャチュンサオ県の3か所をリストアップした。これらの県にはすでにいくつかの工業団地が造成されているが、明確な位置の確定は今後の作業になると説明している。

 アーコム事務局長は、プロジェクトのための具体策をまだ確定していないが、産業開発と環境問題に同時に対処することは長い目で見て必要だと述べている。同事務局長は、高度な技術は汚染排出を減らすことができると指摘し、環境問題がクローズアップされている東部臨海工業地帯でも工業生産をさらに増やしていくことは可能としている。工業地帯がコミュニティと友好共存することに成功した日本のモデルが参考になるとしている。

 アーコム事務局長は、長い目で見て、タイの工業部門は環境にやさしくなり、地域社会の福祉に配慮することは避けて通れないことを強調している。輸出セクターは、すでに欧州連合(EU)などの先進国の市場で環境や健康に関連した規制の強化に直面している。もはや汚染を排出する工場が作る商品は、たとえその商品自体に問題がなくても先進国では容認されなくなっている。タイが競争優位を持つ自動車などの成長産業でさえ、環境に配慮した生産技術の導入は不可避になっているとした。

 二〇一六年にASEAN経済共同体(AEC)が発足すれば、域内の道路や鉄路を通じた輸送面の連結性は顕著に強化される。このため国境横断輸送に関連した規則がもう一つの主要な懸念になっている。タイはASEAN加盟国に要求される20の協定のほとんどに署名しているが、まだ6つの法規が未解決のままとなっている。

 AECの下での地域統合についてアーコム事務局長は、タイが外国人投資家にとっての主要な投資先としての地位を保持すると考えている。とくにタイへの投資額で最大の日本企業にとって、タイの投資先としての優位性は揺るがないと見ている。中国との政治的対立などからチャイナ・プラス1としてASEAN、タイに目を向ける日本企業は増えている。ただし同事務局長は、タイの労働力不足問題は重大な懸念であり続けていると警告している。ミャンマーの改革開放で、ミャンマー人移民労働者が本国に帰ることになれば、事態はさらに悪化すると見ている。アーコム事務局長は、ミャンマーの安価な賃金が外国人投資家を惹き付け、タイへの投資が減ると懸念する声があることについて、インフラが整備されていることや、労働者のスキルの高さが、タイへの投資のインセンティブと見ていることを明らかにしている。

 労働力不足問題については、投資委員会(BOI)は投資奨励認可企業による外国人移民労働者の雇用を原則として許可していない。産業界はこの厳格な規制の緩和を政府に求めている。とくに労働集約的な産業では労働力不足が深刻で、数千の工場が閉鎖を余儀なくされると警告している。

 外国人移民労働者は、政府による登録制度が導入されており、国籍証明を取得して移民登録をした外国人以外は雇用や就労が禁止される。住宅ビジネス協会は、建設や不動産セクターで、違法なミャンマー移民を雇用できなくなることは労働力不足に拍車をかけると懸念している。イサラ・ブンヤン会長は、ミャンマー人労働者は建設セクターの主要な労働力であり、パスポートを保持した上でタイで合法的に働くことをミャンマー人労働者に要求する厳密な規則は、建設産業に大きな打撃を与えるとしている。現在、少なくとも100万人を超えるミャンマー人労働者がタイで就労している。これまでに登録したミャンマー、ラオス、カンボジア国籍の外国人労働者は138万人に過ぎないが、実際には300~400万人が就労しているものと見積もられている。

 NESDB事務局の最新の研究によると、タイの労働力不足は、少子化の進展とともに今後10年間で一段と厳しさを増す見通しとなっている。試算では10年後には、国全体で4652万人の労働力が必要で、536万人が不足する。しかし近隣諸国も経済発展により賃金が上昇し、タイでの就労で一定のスキルを身につけた移民労働者が本国に戻る流れも想定され、タイの工場労働力の不足はますます深刻なものになる。



日付 : 2012年12月17日

By : 週刊タイ経済

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