一二年の工業生産は2・5%増 13年の成長率予測は4~5%増
工業省工業経済事務局は一月二八日、二〇一三年の工業部門のGDP成長率を4・0~5・0%増の間と予測した。工業生産指数(MPI)の伸び率は3・5~4・5%増と見積もっている。政府支出と民間支出が消費と投資の双方で拡大することが工業生産に寄与すると見ている。
ナッタポン・ナッタソムブーン事務局長は、初めての新車購入者に対する物品税還付などの政府の経済刺激政策、金融緩和、石油価格の安定とインフレ率の低位安定、新興国やアジア、ASEAN地域の経済成長は工業部門の成長に寄与すると述べている。ただし工業部門全体に影響を及ぼすリスクもあり、経済危機による貿易相手国経済の減速、バーツ高、全国一律での最低賃金の1日あたり300バーツへの引き上げなど、工業事業者が警戒すべきリスクも少なくない。特にバーツの対ドル・レートは年初時点に比べて1バーツ切り上がっており、二〇一三年の工業製品の輸出額は、バーツ建てにすると1976億1800万バーツ減少する計算になる。バーツが年初時点に比べて3・26%上昇していることで、輸出額が2・8%押し下げられることになり、その結果、輸出依存度の高い工業部門のGDP成長率は1%幅で下押しされることになる。
ナッタポン事務局長は、バーツ高の影響が大きい業種として、第一に輸出の比率が高く、原材料や中間財の輸入が少ないゴム、家具などを挙げている。第二に製品輸出の比率も原料輸入の比率も大きい、医療機器、宝石、機械、電機・エレクトロニクスなど、第三に製品輸出は少ないが、製品輸入の大きい化学、鉄鋼などの業種を挙げている。輸出の比率が高く、原材料や中間財の輸入が少ない製品は、バーツ高による原料コストの減少の恩恵が及ばないため、輸出採算が著しく悪化する。また製品輸出は少ないが、輸入の多い業種は、国内市場での安価な輸入品との価格競争力が低下する。
OIEによれば、一二年一二月の工業生産指数は前年同月比で23・4%上昇した。洪水被害の影響で前年同月の数値が異常に低かったローベース効果が一因。同様の理由から第4四半期(一〇~一二月)平均の工業生産指数は前年同期比44・0%増を記録した。また一二年通年では2・5%増となった。一一年は年初の東日本大震災、年末のタイ大洪水の影響から工業生産は9・1%収縮していたが、一二年はプラス成長に戻した。一二年一二月の工業製品の輸出は22・8%増。一二年通年では5・9%増となった。
一二月の工業生産指数は前年同月比で23・4%増となったものの、一一月の82・3%増と比べて伸び率は低下しており、前月比では指数は6・3%減少している。自動車、ハード・ディスク・ドライブ、タバコ、鉄鋼、エレクトロニクスなどの生産が鈍化した。
ナッタポン事務局長は、一三年の工業部門を展望して、前年比での成長は続くと述べている。特に自動車工業は、旺盛な需要から生産を急いでいる状況で、通年の国内新車生産台数は前年比2・57%増となる250万台に達すると予測している。輸出は前年比22・18%増となる125万台に達し、国内販売は新車スキームの反動から前年比12・31%減になると予測している。
一三年に成長が期待できるのは、関連工業での需要が拡大する鉄鋼業、国内市場が拡大している電機・エレクトロニクス工業など。一方で一三年の輸出展望に関してはマイナス要因が多い。世界経済の不確実性はなお高く、欧州の公的債務危機は事業者や消費者の信頼感に悪影響を及ぼしている。ただし、ASEANの市場は拡大しており、BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)の新興市場も成長が続いている。このため一三年の工業製品の輸出は前年比で小幅の減少にとどまると見ている。繊維の輸出は2・07%減、衣料の輸出は0・42%減、布地の輸出はASEAN市場での需要増から1・30%増になると予測した。
一三年の工業部門にとって最大の課題はコスト増。すでに各種コストは一二年終わりから上昇傾向にあるが、一三年はコスト上昇圧力が高まりそう。最低賃金の引き上げ、電力料金の燃料係数(Ftチャージ)の上昇、国内の燃料価格の補助金削減、自然災害などによる原材料相場の変動などが生産コストの上昇要因になる。最低賃金の全国一律での300バーツへの引き上げは、32・5%の上昇率となるもので、一二年四月の29・6%増に引き続き、タイの産業界がかつて経験したことのない上昇率となっている。コスト負担の増加に加え、近隣国との賃金格差も広がることになる。
一方、タイ中央銀行が一月三一日に発表した月例経済金融報告によれば、足元の景気はやや減速している。一二年一二月には世界経済の先行き不安から海外からの引き合いが細る兆しがあり、それにともない工業生産や輸出が前月比で収縮した。また一二月には民間消費と民間投資も前月比で減少している。輸出の鈍化は大底を打ったものと見られるが、回復ペースは緩やかなものにとどまりそうな見通しとなっている。
中銀月例報告によれば、一二月の工業生産と輸出は前月比でそれぞれ5・0%、2・4%減少しており、一一月の同9・1%増、6・7%増から収縮に転じている。ただし、第4四半期の工業生産と輸出は前年同期比44・0%増、18・2%増を記録しており、第3四半期の11・0%減、3・0%減からプラス成長に転じている。一二月の貿易収支は、商業省の統計では23億7000万ドルの赤字で、一一月の14億5400万ドルの赤字に引き続き、悪化している。統計の取り方が異なるタイ中央銀行の指標では、一二月の貿易収支は3億ドルの黒字となっているが、一一月の6億ドルの黒字から黒字幅は減少しており、貿易収支は脆弱な状態が続いている。
カシコン・リサーチ・センター社(KRC)は一二年第4四半期の経済成長率が、従来予測の前年比13・0%増から上振れし、14・0%増になったと推定。この結果、一二年通年の経済成長率は5・3%増に達したと予測している。KRCは一三年第1四半期(一~三月)の経済成長率が5・3%増、一三年通年の経済成長率は4・5~5・5%増と予測した。
日付 : 2013年02月04日
By : 週刊タイ経済
ナッタポン・ナッタソムブーン事務局長は、初めての新車購入者に対する物品税還付などの政府の経済刺激政策、金融緩和、石油価格の安定とインフレ率の低位安定、新興国やアジア、ASEAN地域の経済成長は工業部門の成長に寄与すると述べている。ただし工業部門全体に影響を及ぼすリスクもあり、経済危機による貿易相手国経済の減速、バーツ高、全国一律での最低賃金の1日あたり300バーツへの引き上げなど、工業事業者が警戒すべきリスクも少なくない。特にバーツの対ドル・レートは年初時点に比べて1バーツ切り上がっており、二〇一三年の工業製品の輸出額は、バーツ建てにすると1976億1800万バーツ減少する計算になる。バーツが年初時点に比べて3・26%上昇していることで、輸出額が2・8%押し下げられることになり、その結果、輸出依存度の高い工業部門のGDP成長率は1%幅で下押しされることになる。
ナッタポン事務局長は、バーツ高の影響が大きい業種として、第一に輸出の比率が高く、原材料や中間財の輸入が少ないゴム、家具などを挙げている。第二に製品輸出の比率も原料輸入の比率も大きい、医療機器、宝石、機械、電機・エレクトロニクスなど、第三に製品輸出は少ないが、製品輸入の大きい化学、鉄鋼などの業種を挙げている。輸出の比率が高く、原材料や中間財の輸入が少ない製品は、バーツ高による原料コストの減少の恩恵が及ばないため、輸出採算が著しく悪化する。また製品輸出は少ないが、輸入の多い業種は、国内市場での安価な輸入品との価格競争力が低下する。
OIEによれば、一二年一二月の工業生産指数は前年同月比で23・4%上昇した。洪水被害の影響で前年同月の数値が異常に低かったローベース効果が一因。同様の理由から第4四半期(一〇~一二月)平均の工業生産指数は前年同期比44・0%増を記録した。また一二年通年では2・5%増となった。一一年は年初の東日本大震災、年末のタイ大洪水の影響から工業生産は9・1%収縮していたが、一二年はプラス成長に戻した。一二年一二月の工業製品の輸出は22・8%増。一二年通年では5・9%増となった。
一二月の工業生産指数は前年同月比で23・4%増となったものの、一一月の82・3%増と比べて伸び率は低下しており、前月比では指数は6・3%減少している。自動車、ハード・ディスク・ドライブ、タバコ、鉄鋼、エレクトロニクスなどの生産が鈍化した。
ナッタポン事務局長は、一三年の工業部門を展望して、前年比での成長は続くと述べている。特に自動車工業は、旺盛な需要から生産を急いでいる状況で、通年の国内新車生産台数は前年比2・57%増となる250万台に達すると予測している。輸出は前年比22・18%増となる125万台に達し、国内販売は新車スキームの反動から前年比12・31%減になると予測している。
一三年に成長が期待できるのは、関連工業での需要が拡大する鉄鋼業、国内市場が拡大している電機・エレクトロニクス工業など。一方で一三年の輸出展望に関してはマイナス要因が多い。世界経済の不確実性はなお高く、欧州の公的債務危機は事業者や消費者の信頼感に悪影響を及ぼしている。ただし、ASEANの市場は拡大しており、BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)の新興市場も成長が続いている。このため一三年の工業製品の輸出は前年比で小幅の減少にとどまると見ている。繊維の輸出は2・07%減、衣料の輸出は0・42%減、布地の輸出はASEAN市場での需要増から1・30%増になると予測した。
一三年の工業部門にとって最大の課題はコスト増。すでに各種コストは一二年終わりから上昇傾向にあるが、一三年はコスト上昇圧力が高まりそう。最低賃金の引き上げ、電力料金の燃料係数(Ftチャージ)の上昇、国内の燃料価格の補助金削減、自然災害などによる原材料相場の変動などが生産コストの上昇要因になる。最低賃金の全国一律での300バーツへの引き上げは、32・5%の上昇率となるもので、一二年四月の29・6%増に引き続き、タイの産業界がかつて経験したことのない上昇率となっている。コスト負担の増加に加え、近隣国との賃金格差も広がることになる。
一方、タイ中央銀行が一月三一日に発表した月例経済金融報告によれば、足元の景気はやや減速している。一二年一二月には世界経済の先行き不安から海外からの引き合いが細る兆しがあり、それにともない工業生産や輸出が前月比で収縮した。また一二月には民間消費と民間投資も前月比で減少している。輸出の鈍化は大底を打ったものと見られるが、回復ペースは緩やかなものにとどまりそうな見通しとなっている。
中銀月例報告によれば、一二月の工業生産と輸出は前月比でそれぞれ5・0%、2・4%減少しており、一一月の同9・1%増、6・7%増から収縮に転じている。ただし、第4四半期の工業生産と輸出は前年同期比44・0%増、18・2%増を記録しており、第3四半期の11・0%減、3・0%減からプラス成長に転じている。一二月の貿易収支は、商業省の統計では23億7000万ドルの赤字で、一一月の14億5400万ドルの赤字に引き続き、悪化している。統計の取り方が異なるタイ中央銀行の指標では、一二月の貿易収支は3億ドルの黒字となっているが、一一月の6億ドルの黒字から黒字幅は減少しており、貿易収支は脆弱な状態が続いている。
カシコン・リサーチ・センター社(KRC)は一二年第4四半期の経済成長率が、従来予測の前年比13・0%増から上振れし、14・0%増になったと推定。この結果、一二年通年の経済成長率は5・3%増に達したと予測している。KRCは一三年第1四半期(一~三月)の経済成長率が5・3%増、一三年通年の経済成長率は4・5~5・5%増と予測した。
日付 : 2013年02月04日
By : 週刊タイ経済