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BOIの新投資奨励戦略 投資区制度の廃止に反対意見

 投資委員会(BOI)事務局は一月二三日、外国人合同商工会議所(JFCCT)との会議を開き、新投資奨励戦略について意見交換した。会議に出席したプラサート・ブンチャイスック工業大臣は、JFCCTからは現行の投資区域制度を完全に廃止するのではなく、融合的なアプローチをとって欲しいとの要望が出たことを明らかにしている。

 ウドム・ウォンウィワットチャイBOI事務局長によれば、新投資戦略が重視する産業は、インフラ/ロジスティック、基礎工業、医科学、代替エネルギー/環境サービス、産業支援サービス、高度技術、食品・農産物加工、ホスピタリティ/ウェルネス、自動車・輸送機器、電機・エレクトロニクスの10グループ。10グループ全体で約130の業種をカバーする。このうち約100業種は税制優遇を付与し、残る30業種は機械・原材料輸入関税の免除や土地所有、外国人専門家雇用などの非税制優遇特典を付与する。付加価値が低い、ローテク産業、製造工程が複雑でなく他の産業との連関が少ない、労働集約的、奨励を得なくても事業経営が可能な約80の業種は投資奨励を取りやめる。このほかに環境負荷が大きい、または大量のエネルギーを消費する業種、事業権を得ている、あるいは国が保護する独占事業や関連法規に抵触する事業についても投資奨励の廃止対象になる。新投資戦略案は、三月にキティラット・ナ・ラノーン副首相兼財務相を議長とするBOI本会議に提出し、六月に適用を開始する考え。

 プラサート工業相は、JFCCTが投資区域制度について所得分散の側面からも有益だと主張していることを明らかにしている。今年一月からの全国一律での最低賃金の300バーツへの引き上げで、タイの労働コスト面での競争力は低下している。企業が首都圏ほどにはインフラが整わず、消費地や港湾までの輸送費用もかさむ地方部にも投資してきたのは、地方の賃金が安かったことと、BOIによる投資優遇が背景にあった。賃金が全国で同じレートになった今、輸送に不便な地方部に投資する魅力は低下している。その上、BOIが投資区域制度を廃止すれば、企業が地方部に投資するインセンティブは働かなくなるというのがJFCCTの主張で、それは発展の地方分散を進めようとする国にとっても得策ではないとしている。JFCCTではこのほか、外国人ビジネスマンがタイでの会議やシンポジウムに出席する際のビジネス・ビザ、労働許可の取得を求める場合に対する規制についても改善を求めている。

 日本貿易振興機構(JETRO)の林康夫元理事長は、一月二四日に都内で開かれた泰日経済技術振興協会(TPA)の創立40周年記念のシンポジウムで講演し、既存の投資家への衝撃を最小化するため、投資奨励政策の変更は徐々に実施すべきとの見解を示した。突然の大きな変化は投資を激減させる恐れもあるとしている。また賃金上昇と労働力不足は、タイの日系企業にとって大きな懸念になっていると述べている。ただ賃金が上がれば、生産性も向上するはずで、生産性が改善されればタイは競争力を高めることができるとしている。またタイ人の所得水準が上がることは、個人消費の拡大となって日系企業にもプラスになる。日本企業が、天然資源が豊富なメコン流域諸国への投資機会をうかがっていることを示し、輸送網の接続性が強化されれば、カンボジアやラオスの魅力は高まるとしている。ミャンマーのダウェー深海港開発も日本の企業を惹き付けるとした。

 ウィトゥーン・シマチョークディ工業省次官は、賃金上昇問題における、特に日系企業の懸念を理解していると述べるとともに、中小企業の競争力を強化するための取り組みも進めることを約束している。

 ウドム・ウォンウィワットチャイBOI事務局長は二四日にチョンブリ県で開催されたセミナーで講演し、新投資奨励政策は新たに投資申請する投資家に適用されるだけで、申請済みの投資案件には適用されないことを説明している。新政策の下でも法人税免除期間は8年を超えないが、柔軟性を高める。投資区域制度による投資優遇は新方針の下では廃止され、産業クラスター形成が重要視される。また産業クラスター優遇はサプライチェーン全体をカバーすると説明している。


日付 : 2013年02月04日

By : 週刊タイ経済

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