第1四半期の経済成長率は5・3%増 NESDB統計 前四半期比ではマイナス成長に
国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局が五月二〇日に発表した国内総生産(GDP)統計によると、二〇一三年第1四半期にタイ経済は5・3%増となり、二〇一二年第4四半期の19・1%増から大きく減速した。今年第1四半期は、比較ベースとなる前年同期がまだ大洪水からの復興途上だったこともあり、ローベース効果から6~7%増の成長率が予測されていただけに、予想を下回る低調なものになっている。成長率の鈍化は、国内外の需要の鈍化によるもので、季節調整済みのGDPは前四半期比2・2%減となり、前の四半期の2・8%増からマイナス成長に転じている。
名目ベースの国内総生産(GDP)は2兆9970億バーツで、生産要素からの報酬として海外に支払った正味970億バーツを差し引いた国民総生産(GNP)は2兆9000億バーツとなり、実質で5・8%増となった。
消費支出は4・2%増となった。支援要因は初めての新車購入者に対する税還付措置で、この四半期の乗用車の販売台数は121・8%増を記録した。しかしその他の分野における支出は減速した。失業率、インフレ率、金利が低い水準にあり、また最低賃金の引上げなど消費支出の促進要因は数多くあったにもかかわらず、新車スキームによる自動車への消費支出以外に消費を牽引する材料は見つからない。いずれにしても景気全般に対する消費者信頼感指数は第1四半期平均で73・8ポイントとなり、前の四半期の69・4ポイントから改善した。同指数の改善は5・四半期連続となっており、直近の6年間で最高レベルとなっている。
総固定資本形成(投資)は6・0%増で、前年同期の5・2%増から伸びが加速したものの、一二年最終四半期の22・9%増からは減速した。民間投資は3・1%増となり、前の四半期の20・9%増から減速した。設備投資と建設投資の両方で伸びが鈍化した。民間の設備投資は1・5%増となり、前の四半期の24・1%増から減速した。資本財の輸入数量の伸びが1・6%増にとどまり、前の四半期の32・6%増から減速した。前年同期に生産力の復興のための資本財の輸入が急増していたことが理由。商用目的の自動車の販売台数は17・1%増で、前の四半期の285・5%増を下回った。民間の建設投資は8・9%増で、前の四半期の10・6%増を下回った。鉄鋼とセメントの販売数量はそれぞれ10・6%増、15・1%増に鈍化した。一方で政府投資は18・8%増となり、前の四半期における31・1%増を下回った。
いずれにしても新規の投資は良好な水準で拡大する見通しにある。投資委員会(BOI)を通じた投資奨励の申請額は2750億バーツに達し、前年同期を24・3%上回った。また第1四半期平均の業況判断指数(BSI)は52・2ポイントとなり前の四半期の51・6ポイントから小幅上昇した。3か月先の業況判断指数も前の四半期の55・5ポイントから56・6ポイントに上昇しており、事業者の信頼感が上向いていることを示している。
第1四半期の物品輸出は561億8100万ドルとなり、4・5%増となった。世界経済の減速とバーツ高により低い水準の成長にとどまっている。工業製品の輸出は8・1%増となった一方、農産物の輸出は3・2%増だった。
輸出が増えたのは、自動車(16・8%増)、電化製品(13・4%増)、鉄鋼製品(55・9%増)、コメ(8・6%増)、タピオカ製品(34・9%増)など。主力市場向けは、米国、EU(15)、日本向けが、それぞれ2・6%増、8・7%増、1・5%増の低い水準にとどまった。一方、ASEAN(9)、中国、香港、オーストラリア向けの輸出は満足のいく水準で成長を続けており、それぞれ順に5・9%増、7・3%増、11・2%増、33・6%増となった。
第1四半期の農産物の輸出は3・2%増となった。輸出数量は6・5%増となったが、輸出価格は世界市場の商品市況に連動して下落した。コメの輸出額は8・6%増えた。輸出を急いだことと、国内の洪水問題により前年同期の数値が低かったローベース効果が押し上げた。タピオカ製品の輸出は数量が増加したものの、輸出価格は引き続き収縮した。一方、天然ゴムの輸出は収縮した。輸出価格の下落が主因。砂糖の輸出も減少に転じた。価格の下落と数量の減少による。農産物の輸出価格は全体で3・0%下落した。
工業製品の輸出は数量と金額の両方で鈍化した。数量の伸びは7・0%増にとどまった。輸出が順調に増加したのは自動車、電化製品、鉄鋼製品、化学薬品で、それぞれ順に16・8%増、13・4%増、55・9%増、15・9%増となった。生産が回復していなかった一二年第1四半期の数値が低かったローベース効果が寄与している。
第1四半期の製造業の成長率は4・8%増の低い水準にとどまった。季節調整済みの前四半期比では5・9%減となった。工業生産指数は、ローベース効果という支援要因があったものの前年同期比2・9%増にとどまった。
この四半期の工業部門の成長は、輸出比率が60%以下の工業の成長が貢献している。なかでも自動車の生産は47・5%増となった。繊維、ゴム製品の生産もそれぞれ7・7%増、2・2%増となった。一方、輸出比率が60%以上の工業の成長率は5・4%減となった。中でも水産加工品(6・9%減)、既製服(14・3%減)、エレクトロニクス製品(7・4%減)、ハードディスクドライブ(7・3%減)の生産が落ち込んだ。このため工業部門の成長は全体として低い水準にとどまった。第1四半期の設備稼働率は平均で66・8%で、前の四半期は66・9%だった。
第1四半期の農林水産業の成長率は0・5%増となった。年度米の生産の減速によるもので、これより前の期に収穫を急いだことが理由。一方、天然ゴム、サトウキビの生産や畜産は引き続き順調に拡大している。しかしながら主要農産物の価格は下げ続けている。特にパーム椰子と天然ゴムの価格が値下がりしている。収量が増加して在庫が高水準にあり、世界市場における商品価格が低迷しているため。この結果、農業所得は2・2%減少した。
ホテル・レストラン業は14・8%増と順調に拡大した。一二年第1四半期は5・6%増、最終四半期は25・7%増だった。一三年第1四半期の外国人観光客数は過去最高となる680万人に達した。前年同期比では18・9%増。中でも東アジア地域と欧州からの観光客数はそれぞれ28・5%増、10・3%増となった。四半期平均のホテル客室稼働率は70・5%で、前年の第1四半期の66・4%を上回った。外国人観光客数の増加率上位3か国は、順に中国、ロシア、日本となっている。
不動産業の成長率は4・4%増となり、前の四半期の8・0%増から伸びが鈍化した。住宅の購入需要は引き続き拡大している。このことは商業銀行の住宅ローン貸付が拡大したことに反映されている。商業銀行の不動産購入目的の個人貸付残高は12・4%増となった。またバンコク首都圏における住宅の権利登記件数は14・1%増となった。これらはサプライサイドの指標の成長に一致するもので、商業銀行の事業者向け貸出残高と新たに開始された不動産プロジェクト数はそれぞれ15・4%増、6・9%増を記録した。不動産事業者の信頼感指数の動向とも連動するものとなっている。一方、価格水準は引き続き上昇している。コンドミニアム、土地付きタウンハウス、土地、一戸建住宅の価格は前年同期をそれぞれ順に8・8%、6・9%、5・1%、4・4%上回っている。
建設業の成長率は10・5%増となった。一二年第1四半期は0・8%増、最終四半期は14・1%増だった。政府部門の建設投資と民間部門の建設投資がそれぞれ13・4%、8・9%増加したことによるもので、セメント販売数量と鉄鋼製品の販売数量もそれぞれ15・1%、10・6%増となった。
日付 : 2013年05月27日
By : 週刊タイ経済
名目ベースの国内総生産(GDP)は2兆9970億バーツで、生産要素からの報酬として海外に支払った正味970億バーツを差し引いた国民総生産(GNP)は2兆9000億バーツとなり、実質で5・8%増となった。
消費支出は4・2%増となった。支援要因は初めての新車購入者に対する税還付措置で、この四半期の乗用車の販売台数は121・8%増を記録した。しかしその他の分野における支出は減速した。失業率、インフレ率、金利が低い水準にあり、また最低賃金の引上げなど消費支出の促進要因は数多くあったにもかかわらず、新車スキームによる自動車への消費支出以外に消費を牽引する材料は見つからない。いずれにしても景気全般に対する消費者信頼感指数は第1四半期平均で73・8ポイントとなり、前の四半期の69・4ポイントから改善した。同指数の改善は5・四半期連続となっており、直近の6年間で最高レベルとなっている。
総固定資本形成(投資)は6・0%増で、前年同期の5・2%増から伸びが加速したものの、一二年最終四半期の22・9%増からは減速した。民間投資は3・1%増となり、前の四半期の20・9%増から減速した。設備投資と建設投資の両方で伸びが鈍化した。民間の設備投資は1・5%増となり、前の四半期の24・1%増から減速した。資本財の輸入数量の伸びが1・6%増にとどまり、前の四半期の32・6%増から減速した。前年同期に生産力の復興のための資本財の輸入が急増していたことが理由。商用目的の自動車の販売台数は17・1%増で、前の四半期の285・5%増を下回った。民間の建設投資は8・9%増で、前の四半期の10・6%増を下回った。鉄鋼とセメントの販売数量はそれぞれ10・6%増、15・1%増に鈍化した。一方で政府投資は18・8%増となり、前の四半期における31・1%増を下回った。
いずれにしても新規の投資は良好な水準で拡大する見通しにある。投資委員会(BOI)を通じた投資奨励の申請額は2750億バーツに達し、前年同期を24・3%上回った。また第1四半期平均の業況判断指数(BSI)は52・2ポイントとなり前の四半期の51・6ポイントから小幅上昇した。3か月先の業況判断指数も前の四半期の55・5ポイントから56・6ポイントに上昇しており、事業者の信頼感が上向いていることを示している。
第1四半期の物品輸出は561億8100万ドルとなり、4・5%増となった。世界経済の減速とバーツ高により低い水準の成長にとどまっている。工業製品の輸出は8・1%増となった一方、農産物の輸出は3・2%増だった。
輸出が増えたのは、自動車(16・8%増)、電化製品(13・4%増)、鉄鋼製品(55・9%増)、コメ(8・6%増)、タピオカ製品(34・9%増)など。主力市場向けは、米国、EU(15)、日本向けが、それぞれ2・6%増、8・7%増、1・5%増の低い水準にとどまった。一方、ASEAN(9)、中国、香港、オーストラリア向けの輸出は満足のいく水準で成長を続けており、それぞれ順に5・9%増、7・3%増、11・2%増、33・6%増となった。
第1四半期の農産物の輸出は3・2%増となった。輸出数量は6・5%増となったが、輸出価格は世界市場の商品市況に連動して下落した。コメの輸出額は8・6%増えた。輸出を急いだことと、国内の洪水問題により前年同期の数値が低かったローベース効果が押し上げた。タピオカ製品の輸出は数量が増加したものの、輸出価格は引き続き収縮した。一方、天然ゴムの輸出は収縮した。輸出価格の下落が主因。砂糖の輸出も減少に転じた。価格の下落と数量の減少による。農産物の輸出価格は全体で3・0%下落した。
工業製品の輸出は数量と金額の両方で鈍化した。数量の伸びは7・0%増にとどまった。輸出が順調に増加したのは自動車、電化製品、鉄鋼製品、化学薬品で、それぞれ順に16・8%増、13・4%増、55・9%増、15・9%増となった。生産が回復していなかった一二年第1四半期の数値が低かったローベース効果が寄与している。
第1四半期の製造業の成長率は4・8%増の低い水準にとどまった。季節調整済みの前四半期比では5・9%減となった。工業生産指数は、ローベース効果という支援要因があったものの前年同期比2・9%増にとどまった。
この四半期の工業部門の成長は、輸出比率が60%以下の工業の成長が貢献している。なかでも自動車の生産は47・5%増となった。繊維、ゴム製品の生産もそれぞれ7・7%増、2・2%増となった。一方、輸出比率が60%以上の工業の成長率は5・4%減となった。中でも水産加工品(6・9%減)、既製服(14・3%減)、エレクトロニクス製品(7・4%減)、ハードディスクドライブ(7・3%減)の生産が落ち込んだ。このため工業部門の成長は全体として低い水準にとどまった。第1四半期の設備稼働率は平均で66・8%で、前の四半期は66・9%だった。
第1四半期の農林水産業の成長率は0・5%増となった。年度米の生産の減速によるもので、これより前の期に収穫を急いだことが理由。一方、天然ゴム、サトウキビの生産や畜産は引き続き順調に拡大している。しかしながら主要農産物の価格は下げ続けている。特にパーム椰子と天然ゴムの価格が値下がりしている。収量が増加して在庫が高水準にあり、世界市場における商品価格が低迷しているため。この結果、農業所得は2・2%減少した。
ホテル・レストラン業は14・8%増と順調に拡大した。一二年第1四半期は5・6%増、最終四半期は25・7%増だった。一三年第1四半期の外国人観光客数は過去最高となる680万人に達した。前年同期比では18・9%増。中でも東アジア地域と欧州からの観光客数はそれぞれ28・5%増、10・3%増となった。四半期平均のホテル客室稼働率は70・5%で、前年の第1四半期の66・4%を上回った。外国人観光客数の増加率上位3か国は、順に中国、ロシア、日本となっている。
不動産業の成長率は4・4%増となり、前の四半期の8・0%増から伸びが鈍化した。住宅の購入需要は引き続き拡大している。このことは商業銀行の住宅ローン貸付が拡大したことに反映されている。商業銀行の不動産購入目的の個人貸付残高は12・4%増となった。またバンコク首都圏における住宅の権利登記件数は14・1%増となった。これらはサプライサイドの指標の成長に一致するもので、商業銀行の事業者向け貸出残高と新たに開始された不動産プロジェクト数はそれぞれ15・4%増、6・9%増を記録した。不動産事業者の信頼感指数の動向とも連動するものとなっている。一方、価格水準は引き続き上昇している。コンドミニアム、土地付きタウンハウス、土地、一戸建住宅の価格は前年同期をそれぞれ順に8・8%、6・9%、5・1%、4・4%上回っている。
建設業の成長率は10・5%増となった。一二年第1四半期は0・8%増、最終四半期は14・1%増だった。政府部門の建設投資と民間部門の建設投資がそれぞれ13・4%、8・9%増加したことによるもので、セメント販売数量と鉄鋼製品の販売数量もそれぞれ15・1%、10・6%増となった。
日付 : 2013年05月27日
By : 週刊タイ経済