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中銀月例経済金融報告 ~タイ中央銀行の一二月二七日の発表より~

 二〇一三年一一月期の景気は全体として前月から収縮している。民間支出が消費と投資の双方で収縮したことに起因している。ただし輸出向け生産は前月から上向いた。物品輸出は緩やかに上向きつつある。観光業は、中国のツアー規制や国内政治情勢の悪化にもかかわらず、拡大基調が続いている。

 経済安定性に関しては、インフレ率は小幅上昇した。既製食品でコスト増の価格転嫁が進んだ。経常収支は貿易収支とサービス・所得・移転収支の黒字により、黒字となっている。資本収支は赤字。外国人投資家による証券の売り越しが響いている。この結果、国際収支は赤字となった。

 一一月の経済情勢の詳細は次のとおり。

 民間消費の指標は前月から収縮した。消費者は信頼感の悪化と家計債務の増大から支出に慎重になっている。これを反映して民間消費指数は前年同月比で2・4%低下した。耐久財、とくに自動車の消費は前年同期のハイベース効果と新車需要の低下により収縮している。加えて消費財輸入も特に耐久財で減少した。一方、非耐久財の消費は伸びが鈍化した。食品・飲料の輸入や燃料消費の伸びが鈍化している。

 民間投資は前月から小幅の減少にとどまったが、前年同月比では民間投資指数は7・8%減となった。商用車販売と機械輸入が減少している。このほかに一部の事業者は経済情勢の推移を見守るため、投資を先延ばししている。一方、建設投資も伸びは鈍化した。

 海外景気が上向いている結果、物品輸出は緩やかに上向きつつある。とくに農産物とアグロインダストリー、電化製品、石油などの工業製品の輸出が上向いている。ただし一部の製品は生産面に制約を抱えている。特に水産品の輸出は、エビの早期死亡症候群(EMS)流行問題により生産が減少するという生産面の制約を抱えている。また電子部品・製品の輸出は、タイの主力製品の技術が市場のニーズや人気に応えることができないでいるという技術面の制約を抱えている。鉄鋼・金属の輸出も前年同期のハイベース効果により減少しているため、輸出は前年同月比で4・0%減となった。ドル建ての物品輸出額は185億6900万ドルだった。

 物品輸出が緩やかに上向きつつある結果、工業生産は前月比で幾分、上向いた。特に輸出向け生産が上向いている。ただし前年同月比では工業生産指数は10・6%減となった。前年に生産が加速していた自動車の生産がハイベース効果によって収縮した。海外からの注文は増えているものの、国内需要の減少を穴埋めするには至っていない。また冷凍エビの生産はEMSによる供給減の問題に直面している。ハード・ディスク・ドライブの生産は、消費者の嗜好の変化に加え、前年同月の増産によるハイベース効果の影響から収縮した。

 輸入額は170億5500万ドルで、前年同月比9・3%減となった。原油を除くほぼすべての品目で収縮している。経済活動全般の減速に一致した動きとなっている。

 農業所得は前年同月比5・8%増となった。主に収量の増加が寄与している。特にコメは、水量と天候に恵まれて生産が増えた。また天然ゴムはこれまでの栽培面積拡大により生産が増加した。しかしながらエビの生産は疫病問題に直面している。農産物価格は小幅上昇した。エビと畜産品の生産量が重要を下回ったことで価格が上昇した。しかし米価は引き続き下落している。世界市場の米価の下落に連動したもので、主要生産国の収量増による。また天然ゴムの価格は市場出荷量増が主要輸入国である中国の需要増を上回っていることによる需給緩和から値下がりした。

 観光業に関しては、この月の外国人観光客数は240万人で、前年同月比11・9%増となった。すべての地域からの観光客が増えていることで、中国の海外ツアー規制や国内政治情勢の悪化にもかかわらず、順調に拡大している。

 政府部門の支出は前年同月比で減少した。前年同月に予算外基金への交付金拠出や投資予算の執行が加速していたハイベース効果に加え、政治デモの影響で一部の投資予算の執行が遅れていることが理由。政府収入は物品税、付加価値税、関税などの収入が減少している。経済活動の減速によるもの。支出が収入を上回ったため政府現金収支は1180億バーツの赤字となった。

 経済安定性は全体として良好な状態を保っている。一般インフレ率は前月から小幅上昇し、1・92%増となった。生鮮食品とエネルギーの物価が上昇した。コアインフレ率も上昇して0・85%増となった。既製食品でコスト増の価格転嫁が進んだ。経常収支は黒字。貿易黒字と観光収入が上向いたことによる。また海外への利益・配当送金も減少した。一方、資本収支は主に外国人投資家の証券売り越しにより赤字となった。この結果、国際収支は赤字となった。


日付 : 2014年01月06日

By : 週刊タイ経済

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