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「バンコク封鎖」 13日から7か所で集会強行 行政機能・交通マヒなどの懸念強まる

 一〇月末から続く反政府デモは、下院解散でも収束せず、タクシン体制の排除を目指して一月一三日から「バンコク・シャットダウン」と称する運動が展開される。ステープ・トゥアクスバン元民主党幹事長率いるPDRCは、一月一三日午前9時から、アソーク交差点、ラーチャプラソン交差点、パトゥムワン交差点、戦勝記念塔、ルンピニ公園前、新官庁コンプレックス、ラートプラオ交差点の7か所にステージを設け、集会地とする。また官公庁への電気・水道供給をストップする。政府は約2万人の治安維持要員を配置する方針だが、デモ隊の強制排除は考えていないとしている。一方、選挙委員会(EC)は二月二日の選挙投票日の延期を政府に働きかけており、情勢はますます混沌としている。

 一三日以降、デモ隊の集会地付近では激しい交通渋滞が予想されており、二〇一〇年四月、五月時のような騒乱の事態が生じる可能性もある。在タイ日本国大使館は、在留邦人に対し、デモ隊の抗議行動、デモ集会の予定されている地域周辺にはできるだけ近づかないなど、自衛措置を呼びかけている。

 タイ運輸省は、「バンコク封鎖」で市内中心部の交通がマヒする見通しにあることを受け、公共交通機関の利用を呼びかけている。郊外には合計で1万8000台が駐車可能なスペースを確保。自宅からマイカーで市内に通勤・通学している人に、公共交通機関への乗り換えを促している。運輸省が確保した駐車場スペースは全部で36か所。チャオプラヤ川の水上バスは増便し、他の公共交通との連絡を良くするための特別ルートも運行もする。運輸省の見積もりでは、「バンコク封鎖」で約100万人の通勤や通学に支障が出る。運輸省では高速道路を利用する路線バスの増便などの対策もとる。

 反政府デモ隊はジンラック政府の即時退陣を要求。「国民会議」を設置して、政治改革を実現した後、総選挙を実施すべきと主張している。政府は、政治改革は二月二日の総選挙と平行して進めることが可能として、予定通り選挙を進める方針。ただ28選挙区で候補者がゼロとなっているため、二月二日の投開票を経ても下院議会を召集することができない。ECはこうした事情も考慮して、総選挙の延期を政府に働きかけている。

 政治情勢の行方は極めて不透明で、デモはさらに長期化する可能性が強まっている。政治空白は年半ばまで長期化する可能性もあり、さらに軍の関与による政変、官憲とデモ隊間、反政府・親政府デモ隊間の衝突による大規模な暴動の発生も懸念されている。政治的不確実性はすでに、消費者、事業者、外国人観光客の信頼感の悪化を通じて景気にも悪影響を及ぼしている。

 経済界は、デモ隊によるバンコク各地での占拠計画を強く警戒しているが、デモは激しいものにはならず、影響は軽微にとどまると楽観する企業も少なくない。市内にオフィスを構える企業の多くは、一三日も通常通り業務を続ける。タイ証券取引所(SET)も市場を閉鎖しないとしている。銀行、取引所、証券会社などは、一〇年の首都暴動、一一年の大洪水を受け、事業継続計画(BCP)を確立済みで、たとえ首都機能がマヒしても、金融活動に関しては継続性を保証するとしている。

 一〇年の赤シャツ派による暴動事件では、SETの建物の一部が放火被害を受けている。チャラムポーン・チョーティカサティアンSET所長は、暴動に発展するケースも含めて様々な状況に基づく事業継続計画を準備していると述べている。SETは予備電源も確保してあるため、たとえ電気を止められても取引は中断されないと説明している。職員の通勤難に対しても送迎手段を確保する。証券会社も自社のバックアップ・オフィスを確保してある。証券会社が支店営業を断念する場合も、インターネットなどを通じて売買取次が可能。

 タイ中央銀行のクルーク・ワニッカクン副総裁は、商業銀行に特別な指示は出していないと述べている。各行がすでにBCPを準備しているため。同副総裁は、電気や水道が止まったとしても銀行業務取引はいささかも混乱しないと述べている。デモ隊が集結するエリアの支店は業務を中止する可能性があるが、他の支店を利用することは可能で、全国に4万台以上あるATM端末を通じて現金を引き下ろすことができる。一三年一一月三〇日現在、商業銀行の支店は全国6579か所にあり、バンコクだけでも2138か所ある。

 タイ銀行協会のチャートシリ・ソーポンパニット会長は、支店を閉鎖するかどうかは各行が独自に判断すると述べている。商銀各校は、ATM端末の利用者が増えそうな場所では、現金の補充を通常よりも多めにする方針。

 ステープ・リアムシリジャラン・エネルギー省次官は、73か所の給油所、21か所のLPGステーション、7か所のNGVステーションについて、警戒していることを明らかにしている。エネルギー省は対象となるサービス・ステーションの事業者に十分な石油・ガスを確保し、監視カメラを設置して状況を当局に逐一知らせるよう要請している。デモ行進のルート上にあるサービス・ステーションの事業者は状況を見て、営業を取りやめることを考えているとしている。デモ隊による封鎖が長期化するケースを想定して、エネルギー安定供給のための対策を練る。エネルギー省は最長で2か月間続くことを想定して緊急事態管理センターを設置する考え。同エネルギー省次官によれば、石油・ガスの供給がストップしないよう、昼間の市内への搬入を許可することも考えている。夜間の搬入ではデモ隊に捕らわれるリスクがあるため。

 エネルギー省は、タイ発電公団(EGAT)による電力供給についても供給が途絶えることはありえないとしているが、バンコクでの配電は内務省が監督する首都電力公団(MEA)が受け持っており、末端ユーザーへの電力供給にまでは責任持てないとしている。これに対し、MEAは全力を尽くすとしているが、デモ隊が占拠するエリアで電線が切られると、総理府、財務省、首相・閣僚の私邸などの停電を阻止することが難しいことを認めている。

 一方、建設業界は、抗議デモ発生エリアでの建設作業ストップの可能性があると見ている。

 タイ工業連盟(FTI)のターニット・ソーラット副会長は、輸出入でも信用状、船荷証券などの文書の配達で、シーロム通りなどにオフィスを構える企業に影響が出る可能性があることを指摘しているが、一般的にこうした文書の大半はバイク便で配達されていることから大きな問題にはならないと見ている。ただし関税局が業務できなくなるような場合には、輸出入に大きな影響が出るとしている。またクロントイ港は影響を受ける恐れがあり、レムチャバン港の利用を助言している。

【タイ政府の外国企業向け各種窓口の状況】

★入国管理局(警察庁出入国管理課)
 官庁コンプレックスの業務は未定。
 以下の2か所で臨時営業する
 (1)メジャー・ハリウッド・スクサワット1階
 Major Hollywood Suksawat,Suksawat Road, Ratburana
 (2)ビックCラートプラオ店5階(インペリアルワールド内)
 Imperial World Ladprao/Big C 2539 Soi Ladprao 81-83   Ladprao Road,Wangthonglang
★社会保険関係(労働省社会保障事務局)
 内務省に近い本部は閉鎖の可能性あり。
 問い合わせは労働省短縮ダイヤル1506
 http://www.sso.go.th/wpr/eng/faq_ContactAddress.html
★労働許可関係(労働省雇用局)
 原則として営業継続の方針。
 問い合わせは労働省短縮ダイヤル1506
 http://wp.doe.go.th/joomla_wp/index.php
★関税関係
 関税局ならびに各地方税関は原則営業継続の方針。
 関税情報センターの短縮ダイヤルは1164
 http://www.customs.go.th/wps/wcm/connect/custen/    contactus/contractus
★税関係
 国税局ならびに各税務署は原則営業
 国税局の短縮ダイヤルは1161
 http://www.rd.go.th/publish/30195.0.html
★原産地証明書(商業省外国貿易局)
 ノンタブリ県の本部は13~15日まで窓口閉鎖。
 スワナプーム空港にて臨時業務を行なう。
 Suvarnabhumi airport cargo,clearance customs bureau,
 CE-1 Bldg., 2 Floor  Tel : 02-1340941-2
 Office of Foreign Trade, Chonburi Province 
 Tel : 038-341173-4   http://www.dft.go.th/
★投資奨励(BOI事務局)
 本会議決定が必要な事業以外は引き続きBOI事務局内部で審査・承認。http://www.boi.go.th/

 イミグレが都内2か所で臨時業務

 警察庁入国管理課は、反政府デモ隊が一月一三日よりジェーンワタナ通りの官庁コンプレックスを集会拠点の一つとすることに対応するため、同日から状況が改善するまでの間、都内2か所の入管事務所で日本人を含めた全ての外国人に対して、滞在許可取得などの窓口業務を行なうと発表している。通常はラオス、カンボジア、ミャンマー3か国の移民労働者のみを対象として窓口業務を行なっている事務所で、場所は都内ラートブラナ区のスクサワット通りにあるメジャー・ハリウッド・スクサワット1階とラートプラオ通りにあるインペリアル・ワールド5階。官庁コンプレックスの入管事務所については、一三日以降窓口業務を行なうかどうかは未定。都内2か所の入管事務所はいずれも一二月に一時使用していた場所。日本人の多くはインペリアル・ワールド5階を利用することになるが、アートナロン・ラムイントラ高速道路の利用が便利。最寄り駅の地下鉄ラートプラオ駅周辺はデモ隊が拠点とするため注意が必要となっている。

 なお業務内容は、滞在許可取得・同延長、90日レポート、旅券切替・紛失に伴う出入国管理業務など。電話での問い合わせは短縮ダイヤル1111、ウェブサイトは「http://bangkok.immigration.go.th」。


日付 : 2014年01月13日

By : 週刊タイ経済

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