二〇一三年のBOI投資申請 合計投資予定額は1兆バーツ超え
投資委員会(BOI)のウドム・ウォンウィワットチャイ事務局長が一月一四日に明らかにしたところによれば、二〇一三年の投資申請は2237件、合計投資予定額は1兆1104億バーツ、予定雇用総数は20万7463人を記録した。BOI事務局の想定を上回るもので、投資額は1兆バーツを突破した。ただし一二年に比べると、件数、金額ともにマイナスとなっている。
BOIの通年目標は9000億バーツだったが、実際の申請額は1兆バーツを上回った。持続可能な開発のための投資奨励政策が一三年末で満了することになったため駆け込み申請が増えた。一二月だけで投資申請は554件、合計投資予定額は2703億バーツに達している。とくに一二月最終週には、天然ガス火力発電、再生可能エネルギー、バイオ燃料などの大型投資案件の申請が相次いだ。
BOIの業種分類で、最も投資申請が多かったのはサービス/インフラで、申請件数は849件。合計投資予定額は5228億バーツを数え、前年比21%増となった。2番目に多かったのは金属・機械・輸送機器の448件。合計投資予定額は2543億バーツで、前年比4%増だった。農業・アグロインダストリーは362件、合計投資予定額は1227億バーツで、前年比38%増。エレクトロニクス・電機は285件、1019億バーツで、前年39%減。化学・紙・プラスチックは174件、合計投資予定額は492億バーツで、前年比72%減。鉱業・セラミック・基礎金属は40件、合計投資予定額は437億バーツで、前年比2%減。軽工業の投資申請は79件で、合計投資予定額は158億バーツ、前年比50%減だった。
事業規模別に見ると、投資額が10億バーツを超える大規模案件は173件で、合計投資予定額は7675億バーツ、全体の69%を占めた。外国からの直接投資は1132件で、合計投資予定額は5247億6800万バーツ。投資件数は前年の1584件から28・5%減となった一方、合計投資予定額は前年の6479億7400万バーツから19%減だった。日本からの投資は562件、合計投資予定額は2828億4800万バーツで、外国人直接投資全体の54%を占めた。日本からの投資の多くは金属加工、自動車・同部品となっている。中国からの投資は45件、合計投資予定額は425億3000万バーツだった。以下、マレーシアからの投資が35件、291億9000万バーツ、シンガポールからの投資が93件、227億8100万バーツ、香港からの投資が39件、201億8100万バーツだった。
なおBOIは、委員の任期が昨年一〇月に満了しているが、新たな委員の任命が下院解散によって棚上げされたままとなっており、本会議は開けない状態が続いている。官邸筋は、政府が新たに委員を任命することが法律上可能かどうか、また任命できた場合には本会議を開いて本会議承認を要する大規模投資案件や特殊な投資案件について投資奨励を承認できるのかどうかを選挙委員会(EC)に問い合わせているところ。プアタイ党政権で投資委員会の本会議議長を務めてきたキティラット・ナ・ラノーン副首相兼財務相によれば、認可待ちの投資案件の合計投資予定額は4000億バーツにのぼる。
消息筋によれば、本会議認可待ちの案件中、最大のものはタイ国トヨタの乗用車生産と部品生産事業で、一三年一〇月に投資奨励を申請している。BOI本会議は通常であれば毎月開催されている。またBOIは新投資戦略を年末にも発表する予定だったが、これも本会議での最終決定が行なえずに、導入計画が棚上げされたままとなっている。
BOIの小委員会は、投資額が2億バーツまでの案件について承認する権限を有しているが、一三日からの反政府デモ隊の「バンコク封鎖」でBOIのオフィスが入居するビルが包囲され、通常業務に支障が出ている。なおBOIは、首相または首相代理となる副首相を議長とし、経済担当省の大臣と事務次官、4人の専門家と、経済3団体の長で構成される。
ウドムBOI事務局長は、一四年に関し、外国人投資家の信頼感をつなぎとめることに最優先で取り組みたいと述べている。ASEAN経済共同体(AEC)の発足を一五年末に控えて日本からの投資の波は続きそう。また第2次エコカー生産プロジェクトでも海外からの投資が期待される。代替エネルギー、空輸、アグロインダストリーも投資が拡大しそう。世界経済の回復と輸出の改善、金利とインフレ率が低位にとどまることも投資環境の改善に資すると見ている。一方で、投資に悪影響を及ぼしそうなのは政治的不確実性の高まりで、これからタイへの初めての投資を検討している投資家に及ぼす影響が大きい。このほかに運輸インフラ開発と治水プロジェクトの遅れも関連分野での投資に影響を及ぼすと見ている。
ウドム事務局長は新投資奨励政策について一四年中に正式発表すると述べている。新政策の中身を確定し、投資家に準備期間を与えた上で導入する。ウドム事務局長によれば、新投資戦略が重視する産業は①アグロインダストリー、②自動車・同部品、③エレクトロニクス、④機械・工具、⑤クリエイティブ産業(ソフトウェア、アニメ、デザインセンター)、⑥高付加価値サービス(地域統括事務所など)、⑦代替エネルギー、⑧生物工学・ナノ工学・バイオプラスチック、⑨環境分野の産業(廃棄物処理、リサイクルなど)。投資区域制度も、地域的な新工業クラスター制度に変更することで、地方における産業クラスターの形成を目指す。新投資戦略の下で得られる特典は、基本特典(ベーシック・インセンティブ)とプロジェクト価値に基づく追加特典(メリット・ベース・インセンティブ)に二分割され、国家開発に益する事業への投資を重視する。
BOI事務局が一三年央にまとめた原案によれば、投資奨励対象は9グループ全体で約130の業種をカバーする。このうち約100業種は税制優遇を付与し、残る30業種は機械・原材料輸入関税の免除や土地所有、外国人専門家雇用などの非税制優遇特典だけを付与することを想定している。付加価値が低い工業、ローテク産業、製造工程が複雑でなく他の産業との連関が少ない業種、労働集約型工業、奨励を得なくても事業経営が可能な業種は投資奨励を取りやめる方針。このほかに環境負荷が大きい、またはエネルギー大量消費業種、事業権付与事業、あるいは国が保護する独占事業や関連法規に抵触する事業についても投資奨励の廃止対象になるとしている。
日付 : 2014年01月20日
By : 週刊タイ経済
BOIの通年目標は9000億バーツだったが、実際の申請額は1兆バーツを上回った。持続可能な開発のための投資奨励政策が一三年末で満了することになったため駆け込み申請が増えた。一二月だけで投資申請は554件、合計投資予定額は2703億バーツに達している。とくに一二月最終週には、天然ガス火力発電、再生可能エネルギー、バイオ燃料などの大型投資案件の申請が相次いだ。
BOIの業種分類で、最も投資申請が多かったのはサービス/インフラで、申請件数は849件。合計投資予定額は5228億バーツを数え、前年比21%増となった。2番目に多かったのは金属・機械・輸送機器の448件。合計投資予定額は2543億バーツで、前年比4%増だった。農業・アグロインダストリーは362件、合計投資予定額は1227億バーツで、前年比38%増。エレクトロニクス・電機は285件、1019億バーツで、前年39%減。化学・紙・プラスチックは174件、合計投資予定額は492億バーツで、前年比72%減。鉱業・セラミック・基礎金属は40件、合計投資予定額は437億バーツで、前年比2%減。軽工業の投資申請は79件で、合計投資予定額は158億バーツ、前年比50%減だった。
事業規模別に見ると、投資額が10億バーツを超える大規模案件は173件で、合計投資予定額は7675億バーツ、全体の69%を占めた。外国からの直接投資は1132件で、合計投資予定額は5247億6800万バーツ。投資件数は前年の1584件から28・5%減となった一方、合計投資予定額は前年の6479億7400万バーツから19%減だった。日本からの投資は562件、合計投資予定額は2828億4800万バーツで、外国人直接投資全体の54%を占めた。日本からの投資の多くは金属加工、自動車・同部品となっている。中国からの投資は45件、合計投資予定額は425億3000万バーツだった。以下、マレーシアからの投資が35件、291億9000万バーツ、シンガポールからの投資が93件、227億8100万バーツ、香港からの投資が39件、201億8100万バーツだった。
なおBOIは、委員の任期が昨年一〇月に満了しているが、新たな委員の任命が下院解散によって棚上げされたままとなっており、本会議は開けない状態が続いている。官邸筋は、政府が新たに委員を任命することが法律上可能かどうか、また任命できた場合には本会議を開いて本会議承認を要する大規模投資案件や特殊な投資案件について投資奨励を承認できるのかどうかを選挙委員会(EC)に問い合わせているところ。プアタイ党政権で投資委員会の本会議議長を務めてきたキティラット・ナ・ラノーン副首相兼財務相によれば、認可待ちの投資案件の合計投資予定額は4000億バーツにのぼる。
消息筋によれば、本会議認可待ちの案件中、最大のものはタイ国トヨタの乗用車生産と部品生産事業で、一三年一〇月に投資奨励を申請している。BOI本会議は通常であれば毎月開催されている。またBOIは新投資戦略を年末にも発表する予定だったが、これも本会議での最終決定が行なえずに、導入計画が棚上げされたままとなっている。
BOIの小委員会は、投資額が2億バーツまでの案件について承認する権限を有しているが、一三日からの反政府デモ隊の「バンコク封鎖」でBOIのオフィスが入居するビルが包囲され、通常業務に支障が出ている。なおBOIは、首相または首相代理となる副首相を議長とし、経済担当省の大臣と事務次官、4人の専門家と、経済3団体の長で構成される。
ウドムBOI事務局長は、一四年に関し、外国人投資家の信頼感をつなぎとめることに最優先で取り組みたいと述べている。ASEAN経済共同体(AEC)の発足を一五年末に控えて日本からの投資の波は続きそう。また第2次エコカー生産プロジェクトでも海外からの投資が期待される。代替エネルギー、空輸、アグロインダストリーも投資が拡大しそう。世界経済の回復と輸出の改善、金利とインフレ率が低位にとどまることも投資環境の改善に資すると見ている。一方で、投資に悪影響を及ぼしそうなのは政治的不確実性の高まりで、これからタイへの初めての投資を検討している投資家に及ぼす影響が大きい。このほかに運輸インフラ開発と治水プロジェクトの遅れも関連分野での投資に影響を及ぼすと見ている。
ウドム事務局長は新投資奨励政策について一四年中に正式発表すると述べている。新政策の中身を確定し、投資家に準備期間を与えた上で導入する。ウドム事務局長によれば、新投資戦略が重視する産業は①アグロインダストリー、②自動車・同部品、③エレクトロニクス、④機械・工具、⑤クリエイティブ産業(ソフトウェア、アニメ、デザインセンター)、⑥高付加価値サービス(地域統括事務所など)、⑦代替エネルギー、⑧生物工学・ナノ工学・バイオプラスチック、⑨環境分野の産業(廃棄物処理、リサイクルなど)。投資区域制度も、地域的な新工業クラスター制度に変更することで、地方における産業クラスターの形成を目指す。新投資戦略の下で得られる特典は、基本特典(ベーシック・インセンティブ)とプロジェクト価値に基づく追加特典(メリット・ベース・インセンティブ)に二分割され、国家開発に益する事業への投資を重視する。
BOI事務局が一三年央にまとめた原案によれば、投資奨励対象は9グループ全体で約130の業種をカバーする。このうち約100業種は税制優遇を付与し、残る30業種は機械・原材料輸入関税の免除や土地所有、外国人専門家雇用などの非税制優遇特典だけを付与することを想定している。付加価値が低い工業、ローテク産業、製造工程が複雑でなく他の産業との連関が少ない業種、労働集約型工業、奨励を得なくても事業経営が可能な業種は投資奨励を取りやめる方針。このほかに環境負荷が大きい、またはエネルギー大量消費業種、事業権付与事業、あるいは国が保護する独占事業や関連法規に抵触する事業についても投資奨励の廃止対象になるとしている。
日付 : 2014年01月20日
By : 週刊タイ経済