中銀月例経済金融報告 タイ中央銀行の一月三一日の発表より
二〇一三年一二月期の景気は全体として前月に引き続き減速している。特に工業生産と民間部門の支出が落ち込んでいる。企業部門と家計部門が景気の先行きと国内政治情勢を懸念していることが理由。海外需要に関しては、中国の格安ツアー規制もあって観光セクターの成長が鈍化している。他方、物品輸出は海外需要の回復動向に一致して幾分上向いた。
経済安定性に関しては、インフレ率は生鮮食品物価の低下により小幅低下した。経常収支は貿易収支の黒字により、黒字となっている。資本収支は赤字。外国人投資家による証券の売り越しとタイ人投資家の海外債券投資増が響いている。この結果、国際収支は小幅の赤字となった。
一二月の経済情勢の詳細は次のとおり。
経済活動は引き続き低迷している。特に工業生産と投資が減少している。工業生産指数は前年同月比で6・1%減となった。自動車の生産が、前年のハイベース効果に加え、海外からの注文は増えているものの、国内需要の減少を穴埋めするには至っていないことから収縮している。またビールの生産は需要動向に沿って減少した。九月の物品税構造の改正による価格の上昇が影響した。また在庫が高水準にあることも生産減につながった。冷凍エビの生産は依然としてEMS(早期死亡症候群)による供給減の問題に直面している。民間投資指数は前年同月比8・1%減となった。これまでの期に多くの企業が投資を加速させていたことの反動によるもので、また一部の事業者は経済・政治情勢を見守るため投資を先延ばししている。このため機械・機器への投資は収縮した。一方で、建設投資も鈍化した。工業生産と投資が収縮した結果、資本財、自動車・同部品、さらには燃料を除く原材料・中間財の輸入は減少した。輸入額は162億8000万ドルにとどまり、前年同月比で9・3%減となった。
民間消費は前月から横ばい。消費者は依然として支出に慎重になっている。民間消費指数は前年同月比で0・2%低下した。耐久財では特に自動車の消費が落ち込んでいる。前年同期のハイベースに加え、新車需要も減少している。一方、非耐久財の消費は食品・飲料などの一部のカテゴリーで鈍化している。
観光に関しては、成長率が鈍化した。一三年一〇月からの中国の海外ツアー規制法の適用、さらには国内政治情勢の悪化の影響が強まっている結果、この月の外国人観光客数は260万人で、前年同月比6・7%増の伸びとなり、伸び率で前月の11・9%増を下回った。
世界経済が上向いている結果、物品輸出は緩やかに上向きつつある。輸出額は182億7700万ドルとなり、前年同期を1・8%上回った。農産物、特にコメとゴムの輸出が拡大した。また工業製品も特に石油製品、石油化学、電化製品、エレクトロニクス部品・機器などで上向いた。いずれにしても一部のカテゴリーの物品の輸出は依然として収縮している。生産における制約に直面しているためで、たとえばエビの疫病により水産品の輸出は減少している。またハード・ディスク・ドライブは消費者の嗜好する商品技術の変化の波をかぶっている。
農業所得は前年同月比6・9%増となった。主に価格の上昇が寄与している。パーム椰子とキャッサバの価格は代替燃料用の需要増にともない上昇した。またエビと畜産品も需要を満たしていないことから価格が上昇している。ただしコメは世界市場の米価に連動して引き続き下落している。主要生産国の収量が増えていることが理由となっている。天然ゴムの価格は下落した。市場出荷量が増加する一方、主要輸入国である中国を初めとする需要は、価格の上昇をもたらすには十分なものとなっていない。農産物の生産高に関しては、十分な水量と気候条件に恵まれたコメの収量が増えている。また天然ゴムの生産量も栽培面積増により増加している。
政府部門の支出は前年同月比で増加した。地方自治体への交付を急いだことと物品・サービスの調達経費の執行が増えた。収入に関しては、物品税収や国際貿易ベースの税収が落ち込んだ。経済活動の減速に一致した動き。加えて、前年同期には3G用周波数の免許入札の収益金の納付があり、比較ベースが高くなっていた。支出が収入を上回ったため政府現金収支は1180億バーツの赤字となった。
経済安定性では、一般インフレ率は前月から小幅低下し、1・67%増となった。野菜・果物の市場出荷量が増えたことで、生鮮食品物価が低下した。経常収支は貿易黒字により黒字となった一方、資本収支は外国人投資家の証券売り越しとタイ人投資家による海外債券への投資増により赤字となった。全体として国際収支は小幅の赤字となった。
二〇一三年通年のタイの景気は、伸びが鈍化した。前年に支出が加速していた民間消費が減速したことに加え、一部の事業者は経済・政治情勢を見守るため投資を先送りした。同時に物品輸出の回復も遅れた。というのも一部の工業で原料不足問題に直面したことに加え、一部の製品は生産技術面の制約から変化する世界市場のニーズに十分に応えることができなかったからである。政府部門に関しては、景気刺激の役割が前年に比べて低下した。投資予算の執行が通常の水準を下回った。観光セクターは高い伸びとなり、一三年のタイ経済の主要な推進力となった。
日付 : 2014年02月03日
By : 週刊タイ経済
経済安定性に関しては、インフレ率は生鮮食品物価の低下により小幅低下した。経常収支は貿易収支の黒字により、黒字となっている。資本収支は赤字。外国人投資家による証券の売り越しとタイ人投資家の海外債券投資増が響いている。この結果、国際収支は小幅の赤字となった。
一二月の経済情勢の詳細は次のとおり。
経済活動は引き続き低迷している。特に工業生産と投資が減少している。工業生産指数は前年同月比で6・1%減となった。自動車の生産が、前年のハイベース効果に加え、海外からの注文は増えているものの、国内需要の減少を穴埋めするには至っていないことから収縮している。またビールの生産は需要動向に沿って減少した。九月の物品税構造の改正による価格の上昇が影響した。また在庫が高水準にあることも生産減につながった。冷凍エビの生産は依然としてEMS(早期死亡症候群)による供給減の問題に直面している。民間投資指数は前年同月比8・1%減となった。これまでの期に多くの企業が投資を加速させていたことの反動によるもので、また一部の事業者は経済・政治情勢を見守るため投資を先延ばししている。このため機械・機器への投資は収縮した。一方で、建設投資も鈍化した。工業生産と投資が収縮した結果、資本財、自動車・同部品、さらには燃料を除く原材料・中間財の輸入は減少した。輸入額は162億8000万ドルにとどまり、前年同月比で9・3%減となった。
民間消費は前月から横ばい。消費者は依然として支出に慎重になっている。民間消費指数は前年同月比で0・2%低下した。耐久財では特に自動車の消費が落ち込んでいる。前年同期のハイベースに加え、新車需要も減少している。一方、非耐久財の消費は食品・飲料などの一部のカテゴリーで鈍化している。
観光に関しては、成長率が鈍化した。一三年一〇月からの中国の海外ツアー規制法の適用、さらには国内政治情勢の悪化の影響が強まっている結果、この月の外国人観光客数は260万人で、前年同月比6・7%増の伸びとなり、伸び率で前月の11・9%増を下回った。
世界経済が上向いている結果、物品輸出は緩やかに上向きつつある。輸出額は182億7700万ドルとなり、前年同期を1・8%上回った。農産物、特にコメとゴムの輸出が拡大した。また工業製品も特に石油製品、石油化学、電化製品、エレクトロニクス部品・機器などで上向いた。いずれにしても一部のカテゴリーの物品の輸出は依然として収縮している。生産における制約に直面しているためで、たとえばエビの疫病により水産品の輸出は減少している。またハード・ディスク・ドライブは消費者の嗜好する商品技術の変化の波をかぶっている。
農業所得は前年同月比6・9%増となった。主に価格の上昇が寄与している。パーム椰子とキャッサバの価格は代替燃料用の需要増にともない上昇した。またエビと畜産品も需要を満たしていないことから価格が上昇している。ただしコメは世界市場の米価に連動して引き続き下落している。主要生産国の収量が増えていることが理由となっている。天然ゴムの価格は下落した。市場出荷量が増加する一方、主要輸入国である中国を初めとする需要は、価格の上昇をもたらすには十分なものとなっていない。農産物の生産高に関しては、十分な水量と気候条件に恵まれたコメの収量が増えている。また天然ゴムの生産量も栽培面積増により増加している。
政府部門の支出は前年同月比で増加した。地方自治体への交付を急いだことと物品・サービスの調達経費の執行が増えた。収入に関しては、物品税収や国際貿易ベースの税収が落ち込んだ。経済活動の減速に一致した動き。加えて、前年同期には3G用周波数の免許入札の収益金の納付があり、比較ベースが高くなっていた。支出が収入を上回ったため政府現金収支は1180億バーツの赤字となった。
経済安定性では、一般インフレ率は前月から小幅低下し、1・67%増となった。野菜・果物の市場出荷量が増えたことで、生鮮食品物価が低下した。経常収支は貿易黒字により黒字となった一方、資本収支は外国人投資家の証券売り越しとタイ人投資家による海外債券への投資増により赤字となった。全体として国際収支は小幅の赤字となった。
二〇一三年通年のタイの景気は、伸びが鈍化した。前年に支出が加速していた民間消費が減速したことに加え、一部の事業者は経済・政治情勢を見守るため投資を先送りした。同時に物品輸出の回復も遅れた。というのも一部の工業で原料不足問題に直面したことに加え、一部の製品は生産技術面の制約から変化する世界市場のニーズに十分に応えることができなかったからである。政府部門に関しては、景気刺激の役割が前年に比べて低下した。投資予算の執行が通常の水準を下回った。観光セクターは高い伸びとなり、一三年のタイ経済の主要な推進力となった。
日付 : 2014年02月03日
By : 週刊タイ経済