NESDBの最新経済予測 今年の経済成長率は3~4%増
国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局は二月一七日に公表した『エコノミック・アウトルック』最新号で、二〇一四年の経済成長率を3・0~4・0%増と予測した。昨年一一月時点の4・0~5・0%増から下方修正した。同日発表になった一三年の経済成長率は2・9%増にとどまっているため、一四年はわずかながらも成長率が上向くものと見ている。
NESDB事務局は今回の予測にあたって、一四年の世界経済の成長率が一三年の3・1%増を上回る3・6%増へと回復することを前提にしている。またドバイ原油価格の通年平均は1バレルあたり102・5~107・5ドルと、前回予測時の105~110ドルよりも低く見積もった。バーツの対ドル・レートは1ドル=32・0~33・0ドルとし、前回予測時の31・5~32・5ドルよりもバーツ安に修正した。
NESDB事務局が同日に発表したGDP統計によれば、一三年第4四半期(一〇~一二月期)にタイ経済の成長率は0・6%増となり、前の四半期の2・7%増から減速している。季節調整済みの前四半期比でも0・6%増。一三年通年のタイ経済は2・9%増となった。家計消費支出が0・2%増にとどまり、総固定資本形成(投資)と輸出額はそれぞれ1・9%、0・2%収縮した。一般インフレ率は2・2%増、経常収支はGDP比0・6%の赤字だった。
一四年の経済成長率が一三年の2・9%増を上回ると見ているのは、世界経済が上向くことで輸出が回復することが支援要因になるため。また観光業も成長が持続しそう。ただし国内政治情勢の悪化から外国人観光客数の伸び率は前年比3・0%増と、過去2年間の伸び率を大幅に下回ると見ている。政府支出は、消費、投資ともに前回予測を大幅に下回るものの、前年比でのプラス成長を維持する見通しで、経済成長を下支えする。政治空白から新規プロジェクトの実行は遅延を余儀なくされるが、すでに進行中のプロジェクトの投資予算は迅速に消化されるものと期待している。
一四年の経済成長の支援要因には、世界経済と世界貿易数量の伸び率が一三年のそれぞれ3・1%増と2・7%増から、一四年にはそれぞれ3・6%増と4・9%増に上向くことを挙げている。またバーツの対ドル・レートは前年平均の1ドル=30・7ドルから下落する見通し。これらが輸出の成長機会をもたらす。一三年に0・2%減、一二年に3・1%増の低い水準にとどまった輸出は一四年に7・0%増が期待される。このほか石油価格とインフレ圧力は低位横這いの見通しで、世界市場における石油価格と商品価格は依然として弱基調にある。一方、国内需要の回復もゆっくりとしたものにとどまっている。
一方でリスク材料と制約要因としては、観光業の成長が鈍化することを挙げている。多くの国・地域が自国民に対しタイへの渡航で注意勧告を出している。二月一四日時点で注意勧告を出している国は48か国・地域にのぼり、一二月時点の40か国・地域から増加した。また一月の外国人観光客数はわずか0・06%増の伸びにとどまっている。
政府部門の需要による推進力は低い水準にとどまっている。2兆バーツ運輸インフラ開発計画と3500億バーツ治水プロジェクトの双方が従来計画よりも遅れている。さらに新政府発足の遅れが二〇一五年度歳出予算の編成の遅れをもたらす。
民間需要も依然として成長に制約を抱えている。家計支出の成長は一三年上半期の比較ベースが正常なトレンドを上回る水準になっているというハイベース効果の影響を受ける。また農産物市況は依然として弱基調が続いており、とくに米価は低迷している。籾米担保貸付政策も不確実性が高まっている。政治情勢悪化で消費者の信頼感の回復は遅れている。消費者信頼感指数は二〇一三年三月以降、下落し続けている。さらに金融機関による融資審査が厳格化している。
家計消費支出は、前年の数値が異常に高かったハイベース効果の影響を受ける。一三年の第1四半期と第2四半期の乗用車の販売台数はそれぞれ21万214台、15万8563台の高水準にあった。これに対し、正常な状態での四半期の乗用車販売台数は約9万台に過ぎない。第1四半期と第2四半期の乗用車販売台数は、ハイベース効果のため、前年同期比でそれぞれ38~48%減、20~30%減になりそうで、一三年の第3四半期、第4四半期と同様に民間消費の成長を下押しすることになる。政治対立状況と新政府発足の遅れは、籾米担保貸付政策などの農産物価格介入措置の先行きを不透明なものにしており、家計消費支出の成長に対する主要なリスク要因になる。このほか政治対立の長期化を受け、消費者と企業の信頼感回復は遅れる見通しとなっている。
一四年に消費支出の伸びは全体で1・6%増となり、一三年の1・0%増から上向くが、前回予測の2・9%増を下回る見通し。民間消費の成長率は2・7%増から1・4%増に下方修正した。政府消費支出も前回予測の3・8%増を下回る2・0%増にとどまる見通し。
民間投資も、一三年一二月の設備稼働率は60・14%と依然として低い水準にとどまっていることで、生産増強のための投資が生まれにくい。政治問題により投資奨励認可が遅れていることや、日本円が下落していること、長期金利が上昇傾向にあることもマイナスになる。業況判断指数は中間値の50ポイントを6か月連続で下回っている。企業は政治情勢が落ち着き、投資奨励政策と政府の主要インフラ投資計画が明確化するのを待っている。このほか農産物の生産は第2、第3四半期に旱魃問題による影響を受けるリスクを抱えている。
投資支出の伸びは3・1%増と予測され、一三年の1・9%減から上向くが、前回予測の7・1%増を下回る。政府投資支出は前回予測の12・0%増から0・3%増へと大幅に下方修正された。民間投資の成長率も5・8%増から3・8%増に引き下げた。
一四年の米ドル建ての物品輸出額は5・0~7・0%増が見込まれている。前回予測の7・0%増を下回るものの、一三年の0・2%減から上向くことになる。ただし外国人観光客数が当初見込みを下回る見通しとなっていることで、物品・サービス輸出数量の伸びは6・0%増と、前回予測の7・0%増を下回る見通し。米ドル建ての物品輸入額は5・7%増と予測され、一三年の0・4%減から上向くが、前回予測の6・8%増を下回る。投資と消費の成長率の下方修正にともない輸入需要も前回見積もりを下回る。物品輸入数量の伸び率の予測は6・2%増から5・2%増に修正した。サービス輸入の予測の修正と合わせて、物品・サービス輸入数量の伸び率は4・6%増と、前回予測の6・2%増を下回るが、一三年の2・3%増を上回ることになる。
一四年の経常収支は6億ドルの赤字で、一三年の28億ドルの赤字を下回るほか、前回予測の25億ドルの赤字を下回る。貿易収支の黒字は、輸入の伸び率の下方修正にともない前回予測の58億ドルを上回る96億ドルと予測した。一方で、サービス収支の赤字は拡大する見通しにある。
一四年のインフレ率は1・9~2・2%増となり、二〇一三年の2・2%増を下回るほか、前回予測の2・7%増を下回る。国内需要の成長率が前回予測よりも低い水準となることに加え、ドバイ原油価格の設定値を下方修正したことが大きい。
日付 : 2014年02月24日
By : 週刊タイ経済
NESDB事務局は今回の予測にあたって、一四年の世界経済の成長率が一三年の3・1%増を上回る3・6%増へと回復することを前提にしている。またドバイ原油価格の通年平均は1バレルあたり102・5~107・5ドルと、前回予測時の105~110ドルよりも低く見積もった。バーツの対ドル・レートは1ドル=32・0~33・0ドルとし、前回予測時の31・5~32・5ドルよりもバーツ安に修正した。
NESDB事務局が同日に発表したGDP統計によれば、一三年第4四半期(一〇~一二月期)にタイ経済の成長率は0・6%増となり、前の四半期の2・7%増から減速している。季節調整済みの前四半期比でも0・6%増。一三年通年のタイ経済は2・9%増となった。家計消費支出が0・2%増にとどまり、総固定資本形成(投資)と輸出額はそれぞれ1・9%、0・2%収縮した。一般インフレ率は2・2%増、経常収支はGDP比0・6%の赤字だった。
一四年の経済成長率が一三年の2・9%増を上回ると見ているのは、世界経済が上向くことで輸出が回復することが支援要因になるため。また観光業も成長が持続しそう。ただし国内政治情勢の悪化から外国人観光客数の伸び率は前年比3・0%増と、過去2年間の伸び率を大幅に下回ると見ている。政府支出は、消費、投資ともに前回予測を大幅に下回るものの、前年比でのプラス成長を維持する見通しで、経済成長を下支えする。政治空白から新規プロジェクトの実行は遅延を余儀なくされるが、すでに進行中のプロジェクトの投資予算は迅速に消化されるものと期待している。
一四年の経済成長の支援要因には、世界経済と世界貿易数量の伸び率が一三年のそれぞれ3・1%増と2・7%増から、一四年にはそれぞれ3・6%増と4・9%増に上向くことを挙げている。またバーツの対ドル・レートは前年平均の1ドル=30・7ドルから下落する見通し。これらが輸出の成長機会をもたらす。一三年に0・2%減、一二年に3・1%増の低い水準にとどまった輸出は一四年に7・0%増が期待される。このほか石油価格とインフレ圧力は低位横這いの見通しで、世界市場における石油価格と商品価格は依然として弱基調にある。一方、国内需要の回復もゆっくりとしたものにとどまっている。
一方でリスク材料と制約要因としては、観光業の成長が鈍化することを挙げている。多くの国・地域が自国民に対しタイへの渡航で注意勧告を出している。二月一四日時点で注意勧告を出している国は48か国・地域にのぼり、一二月時点の40か国・地域から増加した。また一月の外国人観光客数はわずか0・06%増の伸びにとどまっている。
政府部門の需要による推進力は低い水準にとどまっている。2兆バーツ運輸インフラ開発計画と3500億バーツ治水プロジェクトの双方が従来計画よりも遅れている。さらに新政府発足の遅れが二〇一五年度歳出予算の編成の遅れをもたらす。
民間需要も依然として成長に制約を抱えている。家計支出の成長は一三年上半期の比較ベースが正常なトレンドを上回る水準になっているというハイベース効果の影響を受ける。また農産物市況は依然として弱基調が続いており、とくに米価は低迷している。籾米担保貸付政策も不確実性が高まっている。政治情勢悪化で消費者の信頼感の回復は遅れている。消費者信頼感指数は二〇一三年三月以降、下落し続けている。さらに金融機関による融資審査が厳格化している。
家計消費支出は、前年の数値が異常に高かったハイベース効果の影響を受ける。一三年の第1四半期と第2四半期の乗用車の販売台数はそれぞれ21万214台、15万8563台の高水準にあった。これに対し、正常な状態での四半期の乗用車販売台数は約9万台に過ぎない。第1四半期と第2四半期の乗用車販売台数は、ハイベース効果のため、前年同期比でそれぞれ38~48%減、20~30%減になりそうで、一三年の第3四半期、第4四半期と同様に民間消費の成長を下押しすることになる。政治対立状況と新政府発足の遅れは、籾米担保貸付政策などの農産物価格介入措置の先行きを不透明なものにしており、家計消費支出の成長に対する主要なリスク要因になる。このほか政治対立の長期化を受け、消費者と企業の信頼感回復は遅れる見通しとなっている。
一四年に消費支出の伸びは全体で1・6%増となり、一三年の1・0%増から上向くが、前回予測の2・9%増を下回る見通し。民間消費の成長率は2・7%増から1・4%増に下方修正した。政府消費支出も前回予測の3・8%増を下回る2・0%増にとどまる見通し。
民間投資も、一三年一二月の設備稼働率は60・14%と依然として低い水準にとどまっていることで、生産増強のための投資が生まれにくい。政治問題により投資奨励認可が遅れていることや、日本円が下落していること、長期金利が上昇傾向にあることもマイナスになる。業況判断指数は中間値の50ポイントを6か月連続で下回っている。企業は政治情勢が落ち着き、投資奨励政策と政府の主要インフラ投資計画が明確化するのを待っている。このほか農産物の生産は第2、第3四半期に旱魃問題による影響を受けるリスクを抱えている。
投資支出の伸びは3・1%増と予測され、一三年の1・9%減から上向くが、前回予測の7・1%増を下回る。政府投資支出は前回予測の12・0%増から0・3%増へと大幅に下方修正された。民間投資の成長率も5・8%増から3・8%増に引き下げた。
一四年の米ドル建ての物品輸出額は5・0~7・0%増が見込まれている。前回予測の7・0%増を下回るものの、一三年の0・2%減から上向くことになる。ただし外国人観光客数が当初見込みを下回る見通しとなっていることで、物品・サービス輸出数量の伸びは6・0%増と、前回予測の7・0%増を下回る見通し。米ドル建ての物品輸入額は5・7%増と予測され、一三年の0・4%減から上向くが、前回予測の6・8%増を下回る。投資と消費の成長率の下方修正にともない輸入需要も前回見積もりを下回る。物品輸入数量の伸び率の予測は6・2%増から5・2%増に修正した。サービス輸入の予測の修正と合わせて、物品・サービス輸入数量の伸び率は4・6%増と、前回予測の6・2%増を下回るが、一三年の2・3%増を上回ることになる。
一四年の経常収支は6億ドルの赤字で、一三年の28億ドルの赤字を下回るほか、前回予測の25億ドルの赤字を下回る。貿易収支の黒字は、輸入の伸び率の下方修正にともない前回予測の58億ドルを上回る96億ドルと予測した。一方で、サービス収支の赤字は拡大する見通しにある。
一四年のインフレ率は1・9~2・2%増となり、二〇一三年の2・2%増を下回るほか、前回予測の2・7%増を下回る。国内需要の成長率が前回予測よりも低い水準となることに加え、ドバイ原油価格の設定値を下方修正したことが大きい。
日付 : 2014年02月24日
By : 週刊タイ経済