新興市場国で金利上昇トレンド タイ中銀は低金利の維持を明言
タイ中央銀行のルーン・マリカマート・スポークスマンは、景気回復が遅れる見通しにある中、短期的に政策金利が低い水準にとどまるとの見通しを示している。一部の新興市場国では、通貨安が物価高をもたらしていることで、金利が上昇局面にあるが、タイの経済情勢は異なることを強調している。ルーン女史は、現行の金利水準は金融の安定と、物価の安定を維持しつつ、経済成長を支援する適切なものだと述べている。ただし長期的には、金利は諸外国のトレンドに従うことになるとしている。
タイ中銀の金融政策委員会は昨年一一月二七日に開いた政策決定会合で、政策金利を0・25%幅で引き下げて、年2・50%から2・25%に改めることを決定している。第3四半期(七~九月)のタイの経済成長率が予想以上に低調なものになったことを考慮し、物価が安定し、インフレ期待も低位にとどまっているため、景気浮揚のための追加利下げの余地があると判断した。その後、今年一月二二日に開いた会合では金利を据え置いている。足元の景気はMPCの予想以上に失速し、政治的不確実性が高まっているものの、政治情勢は景気回復に影響を及ぼす短期的なリスクに過ぎないと判断。タイ経済のファンダメンタルズは健全で、こうしたリスクに十分に対応できるとした。MPCは、今後の期の景気の回復に対するしっかりとした基盤を構築する上で、国の金融の安定性を維持することが重要だとしている。MPCの次回政策決定会合は三月一二日に予定されている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は、FRBが量的緩和の規模縮小を継続する方針を示しており、これが新興市場国からのキャピタル・アウトフローと新興市場国通貨安をもたらしている。しかしルーン女史は、投資マネーはいずれ新興市場国の投資リターンの良さに目を向けると見ており、マネーは新興市場に戻ってくると見ている。
タイ中銀は家計債務問題について、政府による籾米担保代金支払いの遅延が家計債務の上昇をもたらす恐れがあることを指摘し、密接な追跡が必要だとしている。一方で、一四年の経済成長率に関しては、効率的な年度予算の執行がなされ、民間部門の信頼感が戻ってくれば、まだ4%成長の実現は不可能ではないとしている。世界経済の回復傾向にともない物品輸出は増加する見通しで、一四年の経済成長の主要な牽引役になると見ている。金融システムは健全で、国内の政局が安定すれば、民間企業は投資を再開し、商業銀行も設備資金を融通する用意があるとしている。政府情勢悪化の影響を受けている観光業に関しては、過去の例からも政局が正常に戻ればV字回復すると期待している。
プラサーン・トライラットウォラクン中銀総裁は二〇日、シドニーで開かれた国際会議で、米国の緩和縮小によるキャピタル・アウトフローについて懸念はしていないと発言している。タイ経済はバランスが取れているため、資本流出が景気の足枷になることはないとした。総裁はむしろ、国内政治不安による国内消費と投資の減速を懸念していることを示している。消費と投資の回復には時間がかかるものの、タイ経済は今年3%増以上が期待できるとしている。総裁はこのスピーチで、次回会合以降の追加利下げの可能性についても言及している。
一方、財務省高官は、中央政府による予算執行が、特に投資的経費で遅延する見通しにあるなかでも、国営企業の投資予算は大半が計画通りに執行することが可能で、経済成長を下支えするとの楽観的な見方を示している。二〇一四年度予算の投資的経費は4270億バーツあるが、このうちの15%に相当する660億バーツは、選挙管理内閣の下での入札実施が困難で、遅延を余儀なくされる。一般に1億バーツ以上の調達・任用は内閣の承認が必要だが、下院解散後の現政府は憲法第181条第3項の規定から、新たなプロジェクトについて決定することができない。こうした制約から、政府支出が一四年の経済を動かす主要なエンジンになるとした従来の期待は萎んでいる。
政府投資の遅延に加え、民間部門が政治デモの影響で投資に慎重になっていることで、一四年の投資支出は多くを期待できなくなっているが、下院解散前に内閣が承認した国営企業の投資予算は直ちに執行することが可能。財務省高官は、国営企業予算が短期的にタイの経済を支える唯一の希望だと述べている。
財務省国営企業政策事務局のプラソン・プーンタネート事務局長は、国営企業予算について、四半期に3000億バーツ前後の執行を目標としていることを明らかにしている。執行率の通年目標は70~80%。一三年一〇月から今年一月までの4か月間の国営企業の予算執行額は8210億バーツ、執行率は39%となっており、投資予算は1250億バーツが執行されている。
日付 : 2014年02月24日
By : 週刊タイ経済
タイ中銀の金融政策委員会は昨年一一月二七日に開いた政策決定会合で、政策金利を0・25%幅で引き下げて、年2・50%から2・25%に改めることを決定している。第3四半期(七~九月)のタイの経済成長率が予想以上に低調なものになったことを考慮し、物価が安定し、インフレ期待も低位にとどまっているため、景気浮揚のための追加利下げの余地があると判断した。その後、今年一月二二日に開いた会合では金利を据え置いている。足元の景気はMPCの予想以上に失速し、政治的不確実性が高まっているものの、政治情勢は景気回復に影響を及ぼす短期的なリスクに過ぎないと判断。タイ経済のファンダメンタルズは健全で、こうしたリスクに十分に対応できるとした。MPCは、今後の期の景気の回復に対するしっかりとした基盤を構築する上で、国の金融の安定性を維持することが重要だとしている。MPCの次回政策決定会合は三月一二日に予定されている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は、FRBが量的緩和の規模縮小を継続する方針を示しており、これが新興市場国からのキャピタル・アウトフローと新興市場国通貨安をもたらしている。しかしルーン女史は、投資マネーはいずれ新興市場国の投資リターンの良さに目を向けると見ており、マネーは新興市場に戻ってくると見ている。
タイ中銀は家計債務問題について、政府による籾米担保代金支払いの遅延が家計債務の上昇をもたらす恐れがあることを指摘し、密接な追跡が必要だとしている。一方で、一四年の経済成長率に関しては、効率的な年度予算の執行がなされ、民間部門の信頼感が戻ってくれば、まだ4%成長の実現は不可能ではないとしている。世界経済の回復傾向にともない物品輸出は増加する見通しで、一四年の経済成長の主要な牽引役になると見ている。金融システムは健全で、国内の政局が安定すれば、民間企業は投資を再開し、商業銀行も設備資金を融通する用意があるとしている。政府情勢悪化の影響を受けている観光業に関しては、過去の例からも政局が正常に戻ればV字回復すると期待している。
プラサーン・トライラットウォラクン中銀総裁は二〇日、シドニーで開かれた国際会議で、米国の緩和縮小によるキャピタル・アウトフローについて懸念はしていないと発言している。タイ経済はバランスが取れているため、資本流出が景気の足枷になることはないとした。総裁はむしろ、国内政治不安による国内消費と投資の減速を懸念していることを示している。消費と投資の回復には時間がかかるものの、タイ経済は今年3%増以上が期待できるとしている。総裁はこのスピーチで、次回会合以降の追加利下げの可能性についても言及している。
一方、財務省高官は、中央政府による予算執行が、特に投資的経費で遅延する見通しにあるなかでも、国営企業の投資予算は大半が計画通りに執行することが可能で、経済成長を下支えするとの楽観的な見方を示している。二〇一四年度予算の投資的経費は4270億バーツあるが、このうちの15%に相当する660億バーツは、選挙管理内閣の下での入札実施が困難で、遅延を余儀なくされる。一般に1億バーツ以上の調達・任用は内閣の承認が必要だが、下院解散後の現政府は憲法第181条第3項の規定から、新たなプロジェクトについて決定することができない。こうした制約から、政府支出が一四年の経済を動かす主要なエンジンになるとした従来の期待は萎んでいる。
政府投資の遅延に加え、民間部門が政治デモの影響で投資に慎重になっていることで、一四年の投資支出は多くを期待できなくなっているが、下院解散前に内閣が承認した国営企業の投資予算は直ちに執行することが可能。財務省高官は、国営企業予算が短期的にタイの経済を支える唯一の希望だと述べている。
財務省国営企業政策事務局のプラソン・プーンタネート事務局長は、国営企業予算について、四半期に3000億バーツ前後の執行を目標としていることを明らかにしている。執行率の通年目標は70~80%。一三年一〇月から今年一月までの4か月間の国営企業の予算執行額は8210億バーツ、執行率は39%となっており、投資予算は1250億バーツが執行されている。
日付 : 2014年02月24日
By : 週刊タイ経済