外国銀行支店の子会社銀行昇格 タイ中央銀行が2行を選出 三井住友銀行とANZが有力視
タイ中央銀行のルーン・マリカマート広報担当は四月二二日、外国銀行支店の子会社銀行への昇格プログラムで、2つの外国銀行のライセンス交付を財務省に要請したことを明らかにした。2行の名前は正式発表されていないが、財務省筋はオーストラリア・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)と三井住友銀行(SMBC)であることを伝えている。
タイ中銀は一三年六月に、第2次金融機関システム開発基本計画(金融マスタープラン)に基づく外国商業銀行の新規免許交付を開始すると発表していた。財務大臣が新規の外国商業銀行の子会社としての商業銀行設置許可における原則、方法、要件についての財務省布告を制定している。当局の定めるところに従った資格を有する外国商業銀行がタイに子会社銀行を設立するのを許可する内容で、昨年末まで中銀が申請を受け付けていた。
新規の外国商業銀行による子会社銀行開設の免許交付は、内閣が認可済みの第2次金融マスタープラン(二〇一〇~二〇一四年)に沿った取り組みで、競争促進、金融機関システムの効率向上、さらには金融サービスへのアクセス性向上を主な目的としている。またタイの国際貿易と投資の拡大、域内の貿易・投資の自由化方針とも一致したものとなっている。
新規に免許を交付する外国商業銀行の子会社銀行は、支店を最大20か所まで、本支店以外の場所でのATM端末の設置を最大20か所まで認められる。払込済み資本金は200億バーツ以上、免許を申請する外国商業銀行は名声があり、事業経営の経験が豊富で、財務が安定し、良好な業績を収め、経営管理とリスク管理の仕組みを有し、良好なコーポレート・ガバナンスを有していなければならない。また本国が金融、貿易、投資でタイとの深い関係を有しているかタイと自由貿易協定の交渉を行なっていることが条件。さらにタイの商業銀行が近似するレベルで進出できる機会を当該国が開いているかどうかも審査基準になる。
タイ中銀は申請者の審査を行ない、最大で5行までの免許交付で財務大臣の承認を求めるとしていたが、実際の免許交付は2行にとどまる見通し。ルーン広報担当は2行の名前を明らかにしていない。財務大臣による承認は3か月以内になされる予定。承認を得た銀行は、子会社銀行への昇格まで1年の猶予が与えられる。ITシステムの導入などに時間がかかる場合にはさらに6か月の猶予を認める。
タイ中銀の幹部は、申請受付を発表した段階で、中国、オーストラリア、韓国、日本の銀行が子会社銀行の設立に関心を示していることを明らかにしていた。ルーン広報担当によれば、申請行にはASEAN諸国の銀行は含まれていない。ASEANの銀行はタイに拠点を設けることに関心を寄せているものの、ASEAN銀行枠組の完了を待つ必要がある。ASEAN諸国の中央銀行は二〇一一年にASEANでの銀行業務の統合枠組で合意しており、資格を得るASEANの銀行は二〇二〇年までにASEAN諸国10か国で銀行業務を展開できることになっている。
タイに支店を構えるいくつかの外国銀行は、タイでの事業拡張のため、子会社銀行への昇格に興味を示していたが、最低払込済み資本金が200億バーツ必要なことで、多くが申請を見送った。財務省筋によれば、中銀が提出したリストは、オーストラリア・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)と三井住友銀行(SMBC)の2行。財務省は、2行への免許交付のための最終承認をキティラット・ナ・ラノーン副首相兼財務相に求めるとしており、近日中に承認される可能性もある。現在、タイには15の外国銀行が支店を開設しているほか、台湾の兆豊国際商業銀行(MICB)が子会社銀行を経営している。三井住友銀行はタイにバンコック支店とチョンブリ支店の2支店を開設している。
日本のメガバンクでは三菱東京UFJ銀行が昨年七月にタイの中堅地場商銀であるアユタヤ銀行の買収を発表。三菱東京UFJ銀はGEキャピタルが保有するアユタヤ銀株25・33%を取得することで合意し、昨年一一月には1株あたり39バーツで株式公開買付を開始、1706億バーツを投じてGEキャピタルが保有していた株式を含め発行株式の72・01%を取得して、アユタヤ銀行を子会社化している。現在は、バンコック支店を現物出資する形でのアユタヤ銀との統合作業を進めているところで、統合後の三菱東京UFJ銀の保有比率は76%超に高まる。統合後はアユタヤ銀行のタイにおけるリテール・中小企業の顧客基盤や、三菱東京UFJ銀行のグローバル・コーポレート・バンキング業務における金融商品・サービスのノウハウを融合し、幅広い顧客に対し、高付加価値の金融サービスをワンストップで提供できる体制を構築するとしている。
三井住友銀行バンコック支店は邦銀として最も歴史が長く、1952年の開設(当時は三井銀行)。現在、日系企業を中心に約2500社の顧客に対して商業銀行業務を営んでいる。ストラクチャード・ファイナンス、キャッシュ・マネージメント・サービス、トレード・ファイナンス業務も展開している。中国、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、アフリカ、中東、米州にまたがるグローバルネットワークを活用し、顧客ニーズに沿った金融サービスで定評がある。二〇一五年のASEAN経済共同体(AEC)の発足を見据え、輸出と内需でバランスのとれた事業展開が可能なタイに対する日本企業の評価は高く、日本企業のタイ進出が加速している。三井住友銀行は子会社銀への昇格で、支店網を拡充し、より充実した金融サービスを提供していく考え。日系企業では、タイをASEANまたは拡大メコン・サブリージョン(GMS)での域内市場展開の戦略拠点に位置づける動きもあるため、子会社銀行への昇格でこうした動きにも対応していく。
日付 : 2014年04月28日
By : 週刊タイ経済
タイ中銀は一三年六月に、第2次金融機関システム開発基本計画(金融マスタープラン)に基づく外国商業銀行の新規免許交付を開始すると発表していた。財務大臣が新規の外国商業銀行の子会社としての商業銀行設置許可における原則、方法、要件についての財務省布告を制定している。当局の定めるところに従った資格を有する外国商業銀行がタイに子会社銀行を設立するのを許可する内容で、昨年末まで中銀が申請を受け付けていた。
新規の外国商業銀行による子会社銀行開設の免許交付は、内閣が認可済みの第2次金融マスタープラン(二〇一〇~二〇一四年)に沿った取り組みで、競争促進、金融機関システムの効率向上、さらには金融サービスへのアクセス性向上を主な目的としている。またタイの国際貿易と投資の拡大、域内の貿易・投資の自由化方針とも一致したものとなっている。
新規に免許を交付する外国商業銀行の子会社銀行は、支店を最大20か所まで、本支店以外の場所でのATM端末の設置を最大20か所まで認められる。払込済み資本金は200億バーツ以上、免許を申請する外国商業銀行は名声があり、事業経営の経験が豊富で、財務が安定し、良好な業績を収め、経営管理とリスク管理の仕組みを有し、良好なコーポレート・ガバナンスを有していなければならない。また本国が金融、貿易、投資でタイとの深い関係を有しているかタイと自由貿易協定の交渉を行なっていることが条件。さらにタイの商業銀行が近似するレベルで進出できる機会を当該国が開いているかどうかも審査基準になる。
タイ中銀は申請者の審査を行ない、最大で5行までの免許交付で財務大臣の承認を求めるとしていたが、実際の免許交付は2行にとどまる見通し。ルーン広報担当は2行の名前を明らかにしていない。財務大臣による承認は3か月以内になされる予定。承認を得た銀行は、子会社銀行への昇格まで1年の猶予が与えられる。ITシステムの導入などに時間がかかる場合にはさらに6か月の猶予を認める。
タイ中銀の幹部は、申請受付を発表した段階で、中国、オーストラリア、韓国、日本の銀行が子会社銀行の設立に関心を示していることを明らかにしていた。ルーン広報担当によれば、申請行にはASEAN諸国の銀行は含まれていない。ASEANの銀行はタイに拠点を設けることに関心を寄せているものの、ASEAN銀行枠組の完了を待つ必要がある。ASEAN諸国の中央銀行は二〇一一年にASEANでの銀行業務の統合枠組で合意しており、資格を得るASEANの銀行は二〇二〇年までにASEAN諸国10か国で銀行業務を展開できることになっている。
タイに支店を構えるいくつかの外国銀行は、タイでの事業拡張のため、子会社銀行への昇格に興味を示していたが、最低払込済み資本金が200億バーツ必要なことで、多くが申請を見送った。財務省筋によれば、中銀が提出したリストは、オーストラリア・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)と三井住友銀行(SMBC)の2行。財務省は、2行への免許交付のための最終承認をキティラット・ナ・ラノーン副首相兼財務相に求めるとしており、近日中に承認される可能性もある。現在、タイには15の外国銀行が支店を開設しているほか、台湾の兆豊国際商業銀行(MICB)が子会社銀行を経営している。三井住友銀行はタイにバンコック支店とチョンブリ支店の2支店を開設している。
日本のメガバンクでは三菱東京UFJ銀行が昨年七月にタイの中堅地場商銀であるアユタヤ銀行の買収を発表。三菱東京UFJ銀はGEキャピタルが保有するアユタヤ銀株25・33%を取得することで合意し、昨年一一月には1株あたり39バーツで株式公開買付を開始、1706億バーツを投じてGEキャピタルが保有していた株式を含め発行株式の72・01%を取得して、アユタヤ銀行を子会社化している。現在は、バンコック支店を現物出資する形でのアユタヤ銀との統合作業を進めているところで、統合後の三菱東京UFJ銀の保有比率は76%超に高まる。統合後はアユタヤ銀行のタイにおけるリテール・中小企業の顧客基盤や、三菱東京UFJ銀行のグローバル・コーポレート・バンキング業務における金融商品・サービスのノウハウを融合し、幅広い顧客に対し、高付加価値の金融サービスをワンストップで提供できる体制を構築するとしている。
三井住友銀行バンコック支店は邦銀として最も歴史が長く、1952年の開設(当時は三井銀行)。現在、日系企業を中心に約2500社の顧客に対して商業銀行業務を営んでいる。ストラクチャード・ファイナンス、キャッシュ・マネージメント・サービス、トレード・ファイナンス業務も展開している。中国、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、アフリカ、中東、米州にまたがるグローバルネットワークを活用し、顧客ニーズに沿った金融サービスで定評がある。二〇一五年のASEAN経済共同体(AEC)の発足を見据え、輸出と内需でバランスのとれた事業展開が可能なタイに対する日本企業の評価は高く、日本企業のタイ進出が加速している。三井住友銀行は子会社銀への昇格で、支店網を拡充し、より充実した金融サービスを提供していく考え。日系企業では、タイをASEANまたは拡大メコン・サブリージョン(GMS)での域内市場展開の戦略拠点に位置づける動きもあるため、子会社銀行への昇格でこうした動きにも対応していく。
日付 : 2014年04月28日
By : 週刊タイ経済