国家平和秩序維持団（コーソーチョー）団長のプラユット・チャンオーチャー陸軍司令官は五月二六日の国王任命式後の演説で、当面の緊急の仕事として、籾米担保貸付政策での担保代金未払い問題の早期解決に取り組む考えを表明した。政府保管米の放出も公正に取り組んでいくとしたほか、農民に対する支援策も用意する考えを明らかにした。

　プラユット大将は二四日時点の談話では、２０日以内に担保代金支払いのための予算を割り当てると述べている。これを受け、財務省は籾米担保代金支払い原資を確保するため５００億バーツの借入を計画している。国が保証する農業・農協銀行（ＢＡＡＣ）の利付金融債の発行を予定しているが、つなぎ融資として国が金融機関から入札を通じて調達する。国家平和秩序維持団の報道官によれば、担保代金支払いには合計９２０億バーツの資金が必要。同報道官は代金支払いが透明に処理されることを強調している。報道官は１か月以内にすべての農家が担保代金を受け取ることになるとしている。

　ＢＡＡＣの幹部は、国家平和秩序維持団の副団長で、経済担当のプラチン・チャントーン空軍司令官と資金調達について議論した。消息筋によれば、国家平和秩序維持団は速やかに原資を確保するよう要請しており、そのための法的な障害はすべて取り除くことを約束した。

　籾米担保貸付政策は二〇一一年の総選挙で勝利したプアタイ党政権の大衆迎合政策の目玉の一つで、担保価格を市価の５０％高に設定して、国が農民から籾米を買い上げた。プアタイ党政府は、この政策の運転資金として５０００億バーツの予算を設定していたが、４期までに予算を使い果たした結果、昨年一〇月からの５期目では担保代金の支払い原資に欠き、担保代金の支払いが滞るといった事態になっていた。プアタイ党政府は、昨年一二月の下院解散によって借入により担保代金を捻出することもままならず、保管するコメ在庫の放出による換価作業を急いだため米価の急落を招いている。５期目のプログラムでは、１９２９億５０００万バーツの籾米が担保に差し出されている。担保プログラムに参加した農家は１６７万人。ＢＡＡＣはこれまでに８３万３１８２件、１０００億バーツ以上の担保代金の支払いを済ませている。

　なお前政府が実施した籾米担保貸付政策は、５期で５０００億バーツ前後の損失が発生したものと見積もられている。スパ・ピヤヂット財務省副次官に代わってクリット・ソムバットシリ財務省審議官が率いる同政策の会計検査小委員会は会計職評議会の会計基準をベースに会計検査を行なっている。スパ副次官が統括していた時期に同小委員会は最初の３期の損失額を３３２０億バーツと見積もっていた。一方、同政策を批判してきたプリディヤトーン・テワクン元中銀総裁（国家平和秩序維持団の副顧問団長）は損失額は４６６０億バーツと試算していた。

　タイ商業会議所のソムキアット・アヌラット副会頭は、迅速な担保代金の支払いは、景気の浮揚にもつながるとしている。国が農民に支払う資金は９２０億バーツだが、同副会頭は、乗数効果により、その経済的効果は４０００億バーツに達すると試算している。ＢＡＡＣは五月二六、二七日に３万９４８７人の稲作農家に４３億１０００万バーツの担保代金を支払ったことを報告している。

　ポンパヌ・サウェートアルン財務省副次官は、５００億バーツの借入について、最初の３００億バーツは六月六日に入札実施することを明らかにしている。政府系銀行や民間商業銀行など３２の金融機関を招いて実施する。最小オファー額は２０億バーツ。残り２００億バーツは六月一三日の入札実施を予定している。ＢＡＡＣのラック・ワチャナナワット総裁は、このほかに自行の手持ちで４００億バーツの資金が確保済みであることを明らかにしており、直ちに支払いを開始するとしている。この４００億バーツについては財務省が保証する。ポンパヌ副次官は、民間銀行が融資に協力的な姿勢を示していると述べている。同副次官は財務省によるつなぎ融資での借入と、ＢＡＡＣが発行予定の金融債への財務省保証を国家平和秩序維持団が承認したことを明らかにしている。カシコン銀行のワシン・ワニットウィラナン副頭取は、法的な問題が十分にクリアになっているため、以前とは状況が異なっていると指摘し、ブリッジ・ローンの入札参加には問題は全くないと述べている。ワシン副頭取も農家への資金支払いは、低迷する経済に燃料を供給する最善の方法だとしている。

　一方、シーラット・ラサタパナ商業省次官は、全国のコメ在庫とサイロの検査のため、国家平和秩序維持団の担当者が統括する特別タスク・フォースが設置されることを明らかにしている。財務省の監査委員会は約３００万トンのコメが在庫から消えていることを発見しており、不正・汚職について調査が進められることになる。国家汚職防止取締委員会（ＮＡＣＣ）は、５０００億バーツに達する損失と、３００万トンのコメが行方不明になっている問題で調査に入る。


日付 : 2014年06月02日

By : 週刊タイ経済