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バンコク日本人商工会議所 軍政の経済担当責任者プラチン空軍司令官と会合

 バンコク日本人商工会議所(JCC)は七月九日に古賀久三治会頭以下、JCC3役などが国家平和秩序維持団(NCPO)の経済担当責任者であるプラチン・チャントーン副団長(空軍司令官)と空軍本部で会合したことを発表した。五月末のプラユット・チャンオーチャー団長との会談に次ぐもの。五月の会合では当面の課題、タイが今後、経済的に発展していくにあたって取り組むべき中長期的な課題について言及していた。JCC側は五月の時点で伝えた課題について、夜間外出禁止令の解除、報道規制の緩和、BOIの大型投資案件の承認、外交・経済顧問の起用、NCPOによる英語版ウェブサイトの設置など、NCPOが取り組んできたいくつかの成果を評価していることをプラチン空軍大将に伝えた。

 JCCはNCPOの取り組みを評価しつつ、ビジネス界として、今後、タイ経済の健全な発展のために取り組むべき個別課題について要望を出している。選挙による民主主義に戻るための道筋やスケジュールに基づくロードマップの着実な実行、経済政策が経済やビジネスの専門家による運営や意思決定によって行なわれる政府を確立すること、経済やビジネスへの介入は経済や市民生活の安定に必要な措置に限定するよう要請した。汚職撲滅では、税関や各種プロジェクトを含む政府の手続きについて、透明性や効率性を向上させるため、しっかりとした制度を導入するよう要請。例えば、プロジェクトの承認や入札における客観的な基準を公開するほか、入札結果も公開するよう要望した。関税の分類や評価などの相違に対するペナルティについては、税関職員への報酬制度を廃止するよう求めている。

 ASEAN経済共同体(AEC)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、タイ・EU間FTAについては、タイがリーダーシップを取るため積極的な通商政策を促進するよう要望した。さらに近隣諸国との接続性を改善するため、計画や資金確保に関する必要な見直しを行なった上で、道路、鉄道、ミャンマーへの東西経済回廊や南部経済回廊などといったハードインフラだけでなく税関手続きや越境交通協定といったソフトインフラの整備を促進するよう要望した。治水プロジェクトについては、必要な見直しを行なった上で、洪水対策を着実に実施していくよう提案した。さらには教育やトレーニングを通じて人材育成に努めるとともに、イノベーションや研究開発(R&D)を促進すること、適正価格で安定的なエネルギー供給を確保すること、中小企業に対して資金調達や技術・情報へのアクセスで支援を行なうよう要望した。タイの国際競争力強化を図るため、サービス業の投資促進での障害の除去、サービス業の投資への段階的な自由化の推進、地域統括会社(ROH)をタイに設置する企業に対する一層のインセンティブの付与についても要望した。JCCの要望の多くはこれまでもタイ政府に求めてきたもの。

 古賀会頭は、こうした個別の課題に取り組んでいくためにも、また国際社会における信頼を回復するためにも、できる限り早期の民政移管、選挙による民主体制復帰が実現することが重要だと指摘。日系企業がタイとともに発展していく考えを改めて表明した。さらに日系企業の強い願いとして、①政府手続における透明性の確保、②市場経済の尊重、③経済開放による競争力強化の3点に留意して施策を検討して欲しいと述べている。

 プラチン空軍大将は、NCPOの民主化に向けたロードマップについて、現在は第1段階だが、順調に進んでいるとの認識を示し、今後、平和と秩序を維持しつつ、経済の発展に努めると述べている。海外における信頼回復と投資の誘致にも努めていくとした。古賀会頭が留意して欲しいとした3点についても、その重要性を強く認識しているとした。またJCCからの要望については、基本的に理解できると応じている。

 プラチン空軍司令官は、インフラ整備について、交通運輸とエネルギーの2つの作業部会を作って政策を推進するとした。治水対策に関しては、最重要視しているが、前政権の3500億バーツの治水マスタープランはタイ全域を対象としておらず、不十分なため、全国を対象としたプランを作り直した上で実行するとしている。税関職員の報奨制度については、円滑な行政手続きにおける支障となっていることを認識しており、改善していきたいとした。また必要以上の経済や市場への介入はするつもりはなく、市場経済を尊重すると述べている。経済の開放についても、AECやRCEPの重要性と、そこでの日本のプレゼンスを強く認識しているとし、強く推進するよう外務省と商業省に指示していることを明らかにしている。推進にあたって制約となる規制などがあれば緩和する用意があるとした。

 サービス業の段階的な自由化については、競争によってより高度化されるとの認識を示し、利用者にとっても利便性が高まることになると語っている。中小企業対策ではプラユット団長を委員長とする中小企業監督委員会を発足させたことを明らかにし、様々な改革をしていく旨を伝えている。技術力の向上に努め、タイのローカルブランドを育成し、資金調達や市場の拡大(国内販売、輸出)を支援していくとした。地域統括会社については、シンガポールに比べて、タイに強みと弱みがあることを理解しているが、一方でシンガポールにも強みと弱みがあると指摘。誘致できるよう、より良いビジネス環境整備のため、投資家の声を聞いていきたいとした。

 インフラ整備については、陸海空すべてのロジスティックについて整備していく方針を伝えている。陸路については、国道の充実と鉄道の複線化の推進、拡大メコンサブリージョン(GMS)の東西回廊の整備を進めることを表明した。海路はアンダマン海側の港湾設備の整備計画があることを示している。空路は主要空港の拡張計画があるとした。


日付 : 2014年07月21日

By : 週刊タイ経済

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