ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

バーツの対ドル・レート 1ドル=31バーツ台に上昇

 先週の外為市場ではバーツが一段高となり、バーツの対ドル・レートは1ドル=31バーツ台に入り、約7か月ぶりのバーツ高が進展した。海外投資マネーがタイの株式市場と債券市場に流入し続けていることが理由。ある外為トレーダーは、上値が切り上がるかどうかは1ドル=31・7バーツを超えるかどうかが試金石になるとしている。

 バーツ相場は先々週金曜の七月一八日時点で、1ドル=32・13/32・16バーツだったが、週明け二一日には32バーツを突破し、31・92/31・94バーツに上昇している。タイ中央銀行のルーン・マリカマート報道官は、タイの景気の先行きに対する投資家の見方が改善していることに加え、インドネシアの大統領選挙が終わり視界がクリアになったことが、アジア域内への投資マネーの流入を加速させていると説明している。バーツの動きは、マレーシア・リンギット、シンガポール・ドル、韓国ウォンなどの域内通貨のそれと一致したもので、新興市場の成長ポテンシャルを評価した投資マネーの域内の株式・債券市場への資金流入に起因しているとしている。

 プラユット・チャンオーチャー国家平和秩序維持団(NCPO)団長は、バーツ高が輸出に及ぼす影響を懸念し、通貨当局に対策を求めているが、プラサーン・トライラットウォラクン中銀総裁は、域内通貨全体の動きであり、バーツに限った突出したものではないと説明し、現状では不介入の姿勢を示している。バーツの対ドル・レートは年初から七月中旬までに2・75%上昇しているが、インドネシア・ルピアは5・93%、マレーシア・リンギットは3・6%、インド・ルピーは2・81%とバーツを上回る上昇率になっている。

 プラサーン総裁は、軍政トップのプラユット陸軍司令官が、今年通年の経済成長率を2・5%増まで高めたいとする意向を示していることについて、成長目標の達成のためには、投資に焦点を合わせた新たな経済刺激策が必要になるとの見解を示している。中銀の金融政策委員会(MPC)による最新の経済予測は、一四年の成長率を1・5%増としている。

 プラサーン総裁は、現状では一四年の成長率は1・5%増にとどまるものの、これは上半期のマイナス成長が足を引っ張ることによるもので、一五年には経済成長率は5・5%増まで回復するとしている。

 政治混乱の収束で、消費者の信頼感は顕著に改善しており、消費を押し上げそう。過去の例でも政治緊張が解けると、消費は相対的に速いテンポで回復している。ただし以前とは異なり、現在は家計債務増という問題を抱えているため、消費が過去のように素早く回復することは難しい。

 また観光業の回復は、ハイシーズンに入るまで、2、3か月はかかる可能性がある。さらに物品輸出は予測よりもゆっくりとしたペースでの成長にとどまっている。現在、世界経済ならびにタイの貿易相手国の経済状況は改善しているものの、輸出の成長は遅れており、タイの経済を鋭く押し上げるような力強さはなく、輸出に大きな期待をかけることも難しい。

 MPCは下半期のGDP成長率を3・4%増と予測している。家計債務は上昇のペースが落ちてきているものの、経済成長に対するリスクであり続けている。


日付 : 2014年07月28日

By : 週刊タイ経済

登録