ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

高速鉄道プロジェクト 軍政が2ルートの準備調査を承認

 ソイティップ・トライスット運輸省次官は七月二九日、軍政が高速鉄道で2路線の開発で準備調査の実施を承認したことを明らかにした。いずれもタイと中国南部を結ぶことを目的としたもので、総工費は7414億バーツ。アユタヤ県のバンパインとチェンライ県のチェンコンを結ぶ全長655㎞と、ラヨン県マプタプットとノンカイを結ぶ全長737㎞の路線で、鉄道の最高時速は200㎞から160㎞に減らす。

 ソイティップ次官は、列車の最高速度は引き下げになるが、将来の追加投資で運転速度を引き上げることが可能と説明している。総工費はバンパイン~チェンコン間が3488億バーツ、マプタプット~ノンカイ間が3925億バーツ。来年にも着工し、二〇二一年までの完成を目指す。この2つの高速鉄道ルートの建設は来年から始まる期間8年の運輸インフラ開発計画の一部となるもので、今後、予算局と運輸省で構成する作業部会がプロジェクトの予算計画を検討する。財源については1か月以内に結論を出すことにしている。

 2ルートは中国南部地域を東南アジアと接続したい中国の思惑とも一途するもので、中国がこの地域で経済的な影響力を確保するための戦略的なルートになる。プアタイ党政権時に、中国はタイの高速鉄道プロジェクトへの投資提案を行なっていたが、沿線の土地や不動産の管理権を要求したため、合意には至らなかった。

 国家平和秩序維持団(NCPO)が承認したのは、運輸交通政策企画事務局による準備調査の実施。軍政は当初、運輸インフラ開発プロジェクトから高速鉄道計画を除外していた。プアタイ党の前政権は、バンコク~ラヨン、バンコク~ノンカイ、バンコク~チェンマイ、バンコク~フアヒンの4つの高速鉄道の開発計画を打ち出していた。これら4路線の総工費は7800億バーツと見積もられていた。軍政が準備調査の実施を承認した2路線は前政権が計画していたルートとは異なるものになっている。

 ソイティップ次官は、この2つの高速鉄道プロジェクトとは別に、軍政は国鉄在来線の複線化プロジェクトも承認している。同次官によれば、運輸省が計画している国鉄複線化プロジェクトは全部で6事業で、すでに国家環境委員会による環境アセスメント(EIA)の承認を得ている。

 国鉄複線化の6事業は、ヂラ分岐駅(ナコンラチャシマ)~コンケン区間の185㎞、プラチュアップキリカン~チュムポン区間の167㎞、ナコンパトム~フアヒン区間の165㎞、マプカバオ(サラブリ)~ナコンラチャシマ区間の132㎞、ロッブリ~パクナムポ(ナコンサワン)区間の148㎞、フアヒン~プラチュアップキリカン区間の90㎞で、総工費は1174億バーツ。チャチュンサオ~ゲンコイ(サラブリ)区間は棚上げになっている。これら6区間は単線となっているため、下りと上りの通過待ちの時間調整が必要で、運行本数を増やすことができないほか、運行時間もかかっている。なお複線化のほか、インフラ開発計画には機関車106輌の調達も盛り込まれており、すでに20輌の機関車は購入契約がなされており、八月中にも引き渡される。

 ソイティップ次官は、この6件の複線化プロジェクトは、メートル軌を採用する最後のプロジェクトになるだろうと述べている。今後の鉄道建設は、1・435メートルの標準軌で行なう方針。同次官は標準軌が将来の鉄道ネットワークの標準になるとしている。2路線の高速鉄道が標準軌で開発される最初のプロジェクトになる。

 国道開発では、多くの国道の修繕プロジェクトが実施される。国道4号線のクラビー~フアイヨート区間、国道12号線のカラシン~ソムデット区間、国道304号線のカビンブリ~パクトンチャイ区間、国道314号線のバンパコン~チャチュンサオ区間、国道3138号線のバンブン~バンカイ区間などが予定されている。

 バンコク首都圏の電車プロジェクトは、パープルラインのバンヤイ~バンスー区間(23㎞)が来年までに完成予定。ブルーラインのバンスー~タープラ~バンケー区間(27㎞)、グリーンラインのベーリング~サムットプラカン区間(12・8㎞)、レッドラインのバンスー~ランシット区間(26㎞)は二〇一七年に完成予定。他の電車路線は環境アセスメントを含む調査段階にある。

 なおタイ国鉄(SRT)はレッドラインの電車システムと車両供給の入札を実施しているが、応札したのは三菱重工、日立、住友商事による共同事業体のMHSCコンソーシアムのみとなっている。パコーン・タンジェータサケーオ国鉄副総裁によれば、同コンソーシアムの提示額は490億バーツで、予定価格の288億バーツを大幅に上回っている。国鉄は提示額が妥当なものかどうかを1か月かけて審査し、妥当と判断すれば、国鉄理事会と円借款を供与する国際協力機構(JICA)に通知する。理事会とJICAが了承した場合も運輸省と軍政の承認が必要になる。

 JICAの担当者は七月三一日、ソイティップ運輸省次官との会合で、鉄道複線化や高速鉄道プロジェクトへの金融支援に関心があることを伝えている。同次官は、高速鉄道の総工費7414億バーツは運輸省の概算によるもので、確定したものではないと説明している。プロジェクト経費についてはより一層の調査研究が必要で、運輸交通政策企画事務局によれば、調査には1年かかる見通しになっている。


日付 : 2014年08月04日

By : 週刊タイ経済

登録