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財務省の経済財政報告と経済展望 14年の経済成長率予測は2%増

 財務省財政局は七月三〇日に発表した経済予測で、二〇一四年の経済成長率を2・0%増(予測範囲は1・5~2・5%増)と見積もった。三月時点の予測の2・6%増から下方修正となるもので、第1四半期のGDPが0・6%減と予想以上に収縮したことと、政治混乱の長期化が上半期に消費者と企業の信頼感を悪化させたことが理由。ただし下半期には、景気は目に見えて回復すると予測している。政治情勢が好転し、景気に対する信頼感を回復させる軍政の政策や家計への支援措置の実施を通じて消費者や企業の信頼感は改善に向かっているため。政府投資政策の明確化、さらには政府のインフラ投資計画の下での投資支出が加速することや、二〇一五年度予算の編成が期初の一〇月に間に合う見通しとなったことが国内需要の成長を牽引し、消費支出は1・0%増、投資支出は1・9%増になると予測した。(3面にタイ中央銀行の最新金融経済報告)

 ランサン・シーウォラサート財務省次官によれば、政治情勢の好転、消費者の信頼感改善、さらには非農業部門の家計所得、雇用が良好な水準にとどまる見通しから、家計消費支出は通年で0・3%増(予測範囲は0・2%減~0・8%増)が見込まれる。一方で民間投資は3・5%減(4・5%減~2・5%減)と予測している。上半期に民間企業部門の信頼感が大幅に悪化したことが響いている。ただし下半期には民間投資は改善に向かう見通し。第2四半期以降、政府部門の投資振興政策が明確化し、金融情勢も緩和的で、金利はこの先も低位にとどまるものと予想される。政府投資は、政変前には大幅に遅延する見通しとなっていたが、軍政は大規模投資プロジェクトの財源確保の方法などを見直し、速やかに実施する方針で、政府投資は加速すると期待されている。また二〇一五年度予算の編成作業も急ぎ、関連法案も九月までに成立する見通しとなっている。政府支出は従来の見積もりよりも拡大しそうで、国内需要の成長を牽引すると期待されている。財政局は、一四年通年の政府消費支出を4・6%増(4・1%増~5・1%増)、政府投資支出を4・0%増(3・0%増~5・0%増)と予測した。

 一方、外需に関しては、通年の物品輸出額は1・5%増(0・5%増~2・5%増)にとどまる見通し。上半期の物品輸出は予想を下回ったが、下半期には世界経済の回復にともない上向くものと期待されている。またサービス輸出は、観光業が上半期に政治混乱の影響を受けたが、下半期、とくに観光シーズンを迎える最終四半期には上向く。物品・サービス輸入数量の伸びは2・1%増(1・1%増~3・1%増)と予測した。一方、物品・サービス輸入額は2・4%減(3・4%減~1・4%減)が見込まれている。下半期に国内需要の加速、政府支出の拡大により改善するものの、上半期の収縮が足を引っ張る。

 経済安定性に関しては、しっかりした状態が持続する見通し。一般インフレ率は通年で2・4%増(1・9%増~2・9%増)と前年からやや上昇する。旱魃の影響で農産物価格が上昇しているほか、外食物価の上昇が響いている。また地下鉄運賃もこの七月より値上げになっている。ただし軍政は、家計向けの液化石油ガス(LPG)価格の値上げを凍結したほか、軽油の小売価格を引き下げている。また消費財メーカーや販売会社との間では、消費財の半年間の価格凍結で合意しており、物価の上昇は抑制される見通し。失業率は0・9%(0・8~1・0%)と低位にとどまる見通し。対外経済安定性に関しては、貿易収支は輸出増と輸入減から212億ドル(168~257億ドル)の黒字が見込まれ、前年を上回る。経常収支は134億ドルの黒字が見込まれ、GDP比で3・3%(3・1~3・5%)の黒字と予測される。

 足元の景気に関しては、財政局の六月と第2四半期(四~六月)の経済財政報告を見る限り、外国人観光客数や民間支出に減速傾向が残るものの、消費者や企業の信頼感は改善に向かっており、下半期には支出や生産が上向くものと期待される。加えて物品輸出と政府支出はプラス成長に転じている。このほかにも経済安定性も良好な水準を保っており、下半期の経済をサポートしそう。

 第2四半期の民間消費は第1四半期から横ばいとなっている。第2四半期の付加価値税収は実質(固定価格)で前年同期比0・3%増となり、前の四半期の0・1%減から改善した。第2四半期の二輪車販売台数は18・2%減と引き続き収縮しているものの、第1四半期の20・8%減に比べると収縮幅が縮小している。二輪車販売の収縮幅は地方とバンコクの双方で縮小している。このほかに第2四半期の乗用車販売台数も収縮幅が縮小している。第2四半期の販売台数は前年同期比37・7%減で、第1四半期の55・3%減から改善している。いずれにしても消費者の景気全般に対する信頼感指数は第2四半期平均で61・2ポイントとなり、前の四半期の59・9ポイントから上昇している

 民間投資は建設投資と設備投資の双方で引き続き収縮している。第2四半期の不動産取引税収は前年同期比7・6%減で、第1四半期の6・6%減から一段と収縮した。またセメント販売量も3・0%減となり、第1四半期の2・4%減を上回る収縮幅となっている。ただし季節要因を取り除いた前四半期比ではセメント販売は0・7%増。

 財政指標では、四~六月期の政府の予算執行額は5147億バーツで、前年同期を6・8%上回った。一三年一〇月からの9か月間の一四年度予算の執行額は1兆7200億バーツ、歳出総額(2兆5250億バーツ)の68・1%に達している。政府の正味収入(地方自治体配分後)は四~六月期に6115億バーツとなり、前年同期を4・7%下回った。減税の影響で所得ベースの税収が8・2%減となった一方、消費ベースの税収は2・5%増だった。9か月間の政府の正味収入は1兆5526億バーツで、前年同期比4・2%減、編成時目標を1102億バーツ、率にして6・6%下回っている。四~六月の予算収支は1093億バーツの黒字だが、期初からの9か月間では3408億バーツの赤字だった。

 外需に関しては、六月の物品輸出はプラス成長に転じている。ドル建て輸出額は198億ドルで、前年同月比3・9%増となった。季節調整済みの前月比では2・6%増となっている。第2四半期の物品輸出額は0・3%増となり、前の四半期の1・0%減から上向いた。また輸出が上向いた製品は電化製品、自動車、農産物、鉱物・燃料など。六月の物品輸入額は180億ドルで、前年同月比14・0%減。第2四半期の輸入額は12・6%減となった。六月の貿易収支は18億ドルの黒字となったが、第2四半期合計では5億ドルの赤字だった。

 サプライサイドの指標では、製造業とサービス業の双方で収縮が続いている。工業生産指数は第2四半期に5・0%減となったが、前の四半期に比べると収縮幅は縮小した。生産が引き続き収縮しているのは自動車、ジュエリー、エアコン、食品など。一方で、TV受像機、ゴム・プラスチック、皮革、エレクトロニクスなどは生産が上向いた。いずれにしても工業部門の信頼感指数は六月期に88・4ポイントとなり、2か月連続で前月比上昇している。サービス業の指標では、第2四半期の外国人観光客数は532万人で、前年同期比12・3%減となった。また第2四半期の農業生産指数は前年同期比4・3%増となった。

 経済安定性に関しては、インフレ圧力と失業率が幾分上昇を始めているものの、依然として良好な水準を保っている。対外安定性も堅固な状態を保っている。第2四半期のインフレ率は2・5%増で、前の四半期の2・0%増から上昇した。旱魃の影響で供給が細った野菜、畜産品の物価が上昇したことに加え、調理ガス価格の値上げによるコスト増の外食価格への転嫁が進んだ。一方、コアインフレ率は1・7%増となっている。第2四半期の失業率は1・0%で、前の四半期の0・9%から微増となった。公的債務残高の対GDP比は五月末時点で45・9%で、財政の持続性枠組で規定する60%を下回っている。外貨準備高は六月末時点で1682億ドルあり、対外短期債務残高の2・7倍ある。


日付 : 2014年08月04日

By : 週刊タイ経済

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