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今年のタイの自動車輸出 目標の120万台を下回る見通し

 タイの今年の自動車輸出は120万台の業界目標を下回る見通しとなっている。タイ工業連盟(FTI)自動車部会のスラポン・パイシットパタナポン・スポークスマンは、景気減速でアジア、オセアニア、中東向けの輸出がここに来て収縮していることを指摘。通年目標の達成は困難との見方を示している。FTI自動車部会の輸出目標は前年比6・4%増となる120万台。しかし今年一~九月の輸出台数は83万8952台にとどまり、前年同期の84万7340台を下回っている。

 スラポン氏によれば、自動車輸出はアジア、オセアニア、中東、南アフリカからの注文の減少のため八月より収縮を始めている。アジア、オセアニア向け輸出はそれぞれ12%、20%減少した。理由は経済の低迷で、自動車に対する需要は弱化している。オーストラリアでは多くの自動車メーカーが生産を減少させたか、工場を閉鎖しているものの、予期されたようなタイへの注文は入ってきていない。オーストラリアは、世界経済の減速などによる資源価格の低迷で景気が減速しており、自動車の需要が減退している。一方、アジア域内ではインドネシア向けが減少している。日系自動車メーカーを中心にインドネシアでの自動車生産能力を増強する動きがあり、タイからの輸入依存度は低下している。資源価格の低迷によるオーストラリアの需要減や、インドネシアにおけるタイ製自動車需要の減少は一時的な現象ではなく、中期的なものと考えられるため、タイの自動車輸出は当面の不振が予想されている。

 タイの自動車の主要な輸出先は、中東(28%)、アジア(24%)、オセアニア(20%)で、車種別では1トン・ピックアップトラックが全体の57%を占めている。スラポン氏は、これまでタイの自動車輸出は年間平均8%増で拡大してきたが、現在の輸出状況は大きな懸念になっていると述べている。タイ自動車の輸出市場では4%を占めるに過ぎない北米が新たな市場として期待されている。特にエコカーの輸出が伸びそう。また欧州への出荷も順調で、今年は9~10%増が期待されている。

 自動車部品の輸出の伸びは、商業省予測の10%増の半分の5%増程度が見込まれている。今年一月から9か月間の輸出額は1930億バーツで、前年同期比7・8%増となっている。昨年の自動車部品の輸出額は2420億バーツで、前年比10・2%増だった。

 タイ自動車部品工業会のアチャナー・リムパイトゥーン会長によれば自動車部品の主要な輸出市場は日本、インドネシア、マレーシア、インド、ブラジルなどだが、これらの国からの注文は減速し始めている。特にインドネシアは、同国内でのサプライチェーンの拡充が進んでいることもあって、タイからの部品輸出は20%減となっている。

 一方、タイ自動車工業会(TAIA)の新会長に就任したタナワット・クムシン氏は一一月五日、チャクラモン・パースックワニット工業大臣と会談し、東南アジア地域の自動車工業のハブとしてのタイのポジションを強化するためにも自動車のテストセンター開発の計画を進めるよう強く要望した。テストセンターは、タイをイノベーティブな自動車の生産ハブに押し上げる上で不可欠だと主張している。

 タイは自動車の生産台数で東南アジアで最大規模を誇る。タイ自動車インスティチュートがサムットプラカン県に持つ自動車のテストセンターは8つの試験カテゴリーのみがテスト可能。ASEAN経済共同体(AEC)では自動車分野で19のカテゴリーの標準強化を目指している。

 自動車業界は、プアタイ党の前政権が二〇一一年の大洪水後に設置した経済復興・未来建設戦略委員会にテストセンター開発での資金援助を求めてきたが、民間資金での開発を求める政府は、資金援助を確約しなかった。センターでテストされた車は、輸出する場合に他国でのテストが必要でなくなる。タイで生産される新モデルは現在、インド、台湾、スペインなどでテストされている。チャクラモン工業相は、テストセンター開発に国が予算をつけることは可能だが、80億バーツ規模の予算は無理だとしており、2段階に分けての開発、またはサムットプラカン県の既存センターの改良を求めている。


日付 : 2014年11月17日

By : 週刊タイ経済

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