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中銀月例経済金融報告 タイ中央銀行の一月三〇日の発表より

 一二月の景気は緩やかに回復している。主要な推進力は物品輸出と観光セクター、さらには政府支出で、一方で民間支出は幾分減速した。石油価格の低下は、生活費負担と生産コストの低減に役立っているものの、家計は依然として支出に慎重になっている。一方、企業部門は景気回復と政府部門のインフラ・プロジェクトが明確化するのを様子見している段階。経済安定性に関しては、石油価格の下落の結果、インフレ率は低下し、経常収支は3か月連続で黒字となった。

 一二月の経済情勢の詳細は次のとおり。

 物品輸出は緩やかに回復している。景気が順調に拡大している米国からの注文は持続しているが、中国の需要は減速している。また輸出価格は、石油、天然ゴム、化学薬品など多くの製品で、原油価格に沿って下落している。二〇一四年通年の輸出額は前年比で小幅収縮している。物品輸入に関しては、輸入額は前月に比べて減少した。原油輸入額の減少によるところが大きい。世界市場の石油価格の低下に加え、製油所が世界市場の原油価格の一段安を見越して原油の輸入量を削減したことが理由。また金地金の輸入も大幅に減少した。世界市場の金相場が下げ基調にあった時期にすでに大量に輸入されていたことが理由となっている。

 観光業は順調に拡大している。アジア市場、特に中国とマレーシアからの観光客のタイの政治情勢に対する信頼感が高まっていることに加え、新年を前にした観光客の増加によるもの。このグループの観光客の増加は、他の市場、特にロシアと日本からの観光客の減少を穴埋めしている。ロシア、日本からの観光客の減少は、景気の減速とロシア・ルーブル安と円安が主因となっている。

 政府部門による経済刺激力はこの月に増加した。投資的経費と物品・サービス調達経費の予算執行が大幅に加速した。なかでも灌漑、運輸・交通分野の投資が増加した。一方で政府収入も増加した。3G周波数使用許可代金の納付と軽油の物品税率の引き上げが寄与している。いずれにしても経済活動全体を反映して税収は、法人所得税や付加価値税で前年同月に比べて収縮している。

 民間消費は前月から減少した。石油価格の下落による民間支出への波及効果はまださほど大きくはない。というのも家計債務が高水準にあり、農産物価格が下落しているため、家計は依然として支出を減らしている。また金融機関も家計向けの与信基準を厳格なものにとどめている。このため耐久財支出、特に自動車の購入はまだ回復していない。また非耐久財の支出も小幅減速した。一方で、サービス支出は順調に拡大している。外国人観光客の支出によるところが大きい。

 民間投資に関しては、前月から横ばい。国内外の需要の回復がまだ鮮明になっていないことに加え、政府部門のインフラ投資も進捗状況は、まだ初期段階にある。このため金融情勢は投資に資するものになっているものの、生産能力拡張のための投資や建設投資はまだ多くはない。

 工業生産は全体として前月から横ばいで、工業部門の電力消費に一致したものとなっている。米国輸出向けの生産は拡大しており、特に集積回路と電化製品の生産が伸びている。一方で、国内販売向けの生産が減少した。ビールの生産が減少したことによるもので、生産者がこれより前に在庫投資を強化していたことが理由。また砂糖は、旱魃の影響で原料となるサトウキビが減少したことで、生産が減少した。

 農業所得は前年同月比で大幅に減少しており、これが特に農業に従事する地方の家計の消費を圧迫する要因となっている。農業所得の減少は、天然ゴムとコメの価格下落によるところが大きい。天然ゴムは、景気の減速から大口需要国である中国、マレーシアからの引き合いが細っていることに加え、原油安による下押し圧力を受けている。天然ゴムと合成ゴムは代用が可能だからである。米価は政府の籾米担保プログラム終了により下落している。一方で、パーム椰子、サトウキビ、キャッサバなどの各種代替燃料作物価格は石油価格の影響をまださほど受けていない。

 経済安定性は国内的にも対外的にも良好な水準を保っている。失業率は低位にとどまり続けており、世界市場の石油価格の急落はインフレ率を低下させ、経常収支も前月に引き続き3か月連続で黒字となっている。キャピタルフローは赤字となった。タイ人投資家の海外直接投資と外国人投資家のタイ証券売り越しが主因。国際収支がほぼ均衡する一方、短期対外債務に対する外貨準備高は健全な水準を保っている。

 二〇一四年第4四半期に、経済は緩やかな成長軌道にある。主な推進力は物品輸出と観光、さらには年度初めからの政府予算の執行加速で、この結果、工業部門の生産とサービス・セクターは回復している。一方で民間支出は前の四半期から減速した。企業は景気回復と政府部門のインフラ投資の明確化を様子見している段階で、加えて家計支出は、石油価格の下落が家計の負担をある程度軽減しているとはいえ、農業部門の所得の低下と家計債務が高水準にとどまっていることによる制約から低い伸びにとどまっている。経済安定性に関しては、失業率は低位にとどまり、世界市場の石油価格の大幅な低下によってインフレ率は低下し、経常収支は黒字となっている。キャピタルフローはタイ人投資家の海外直接投資と外国人投資家の証券売りから赤字になった。


日付 : 2015年02月02日

By : 週刊タイ経済

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