ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

財政局の経済成長率予測 2015年は3・9%増に

 財務省財政局は一月二九日に発表した二〇一四年と二〇一五年の経済予測で、二〇一四年の経済成長率が0・7%増にとどまったと見積もるとともに、二〇一五年の経済成長率を3・9%増と予測した。政府支出の増加が経済成長を牽引すると見ている。外需も世界経済の回復で物品輸出が上向くほか、外国人観光客増で観光収入が増加する見通し。また原油相場の下落から二〇一五年のインフレ率は前年からさらに低下して0・9%増にとどまると予測した。(3面にタイ中銀の金融経済報告)

 クリサダー・ヂナウィチャーラナ財政局長によれば、二〇一四年のタイ経済の成長率は0・7%増にとどまったもよう。二〇一三年の2・9%増を下回るとともに、3か月前の財務省の予測の1・4%増も下回った。物品・サービスの輸出が0・6%減となったことが主因。物品輸出は貿易相手国の景気の回復が遅れていることによる制約を受けているほか、サービス輸出は上半期の政治デモの影響を受けた。昨年タイを訪れた外国人の数は前年比で減少した。このほか政府支出は政治混乱の影響から低水準にとどまった。政府消費支出は前年比3・7%増となった一方、政府投資支出は4・7%減になったもよう。

 タイ経済は二〇一四年に減速したものの、年の終わりには回復の兆しを見せ始めている。民間消費は通年で0・5%増となった。政治情勢が落ち着いてからは消費者の信頼感が改善していることや、非農林水産業の雇用と所得が良好な水準にあること、籾米担保代金の支払い、低所得者に対する所得増措置や天然ゴムの問題解決措置などの政策も消費支出増に貢献している。ただし民間消費の伸びは依然として緩やかなものにとどまっている。コメや天然ゴムなどの農産物の価格下落で農業所得が低迷していることに加え、初めての新車購入奨励政策などによる家計の債務増が理由となっている。

 民間投資は二〇一四年に前年比で2・1%収縮したものと見積もられている。民間部門は景気回復がより確実になるのを様子見しているほか、政府部門の投資政策、特に運輸インフラ整備の大規模プロジェクトが明確になるのを待っている。ただし政策金利が低水準にとどまっていることやエネルギー価格の下落によるコスト減は民間投資に寄与しそう。

 二〇一四年の経済安定性に関しては、一般インフレ率は1・9%増となり、前年から低下した。世界市場の石油・商品市況の下落によるもので、世界の原油需要が減速する一方で、供給が拡大していることが理由となっている。失業率は0・8%。対外経済安定性では、貿易収支は黒字幅が前年比で増加し、251億ドルの黒字となった。物品輸出額は前年比0・2%減となったものの、物品輸入額が8・6%減と輸出を上回る収縮となったことが大きい。その結果、経常収支は134億ドル、GDP比3・3%の黒字となった。

 財務省は二〇一五年のタイ経済の成長率を3・9%増(予測範囲は3・4~4・4%増)と予測している。主な推進力は政府支出の拡大で、特に大規模な運輸インフラ整備プロジェクトの実施で投資支出が上向くものと予測されている。また外需も上向く見通し。外国人観光客数は増加が見込まれている。このほか民間需要も消費と投資の双方で上向くと期待されている。民間消費は前年比3・1%増(予測範囲は2・6~3・6%増)と予測した。非農林水産業の雇用と所得は景気全般の回復にともない上向く見通しにあり、消費者の信頼感の改善も民間消費に寄与しそう。ただし農業所得の不振は続きそうで、民間消費の回復の足枷になる。このため民間消費の伸びは緩やかなものにとどまる見通し。一方、民間投資は7・2%増(6・2~8・2%増)と高い伸びになると予測した。景気全体の回復傾向、政府政策の明瞭化が投資家と消費者の信頼感にプラスとなることが支援材料。このほかに石油価格の下落と金利が低位にとどまることも民間部門の投資活動に寄与しそう。

 二〇一五年の政府支出は、経済成長を刺激し続けるものと見られ、政府消費支出は前年比4・4%増(3・9~4・9%増)が見込まれる。また政府投資支出は15・3%増(13・3~17・3%増)を見込んでいる。海外需要に関しては、物品・サービス輸出の伸びは5・4%増(4・4~6・4%増)を見込んでいる。サービス輸出は観光業の回復にともない観光収入増が期待できる。一方、物品・サービス輸入は前年比7・9%増(6・9~8・9%増)を見込んでいる。民間支出の拡大や輸出回復、さらには政府投資が動き出すことにともない輸入も増加する。

 二〇一五年の経済安定性については、一般インフレ率は0・9%増(0・4~1・4%増)が見込まれている。石油価格の下落により、前年からさらに低下する。失業率は0・8%(0・7~0・9%)、対外安定性では、経常収支は78億ドル、GDP比2・0%(1・8~2・2%)の黒字を見込んでいる。貿易収支は203億ドル(118~228億ドル)の黒字で、前年から黒字幅が縮小すると見ている。

 一方、タイ中央銀行のドン・ナコンタップ・マクロ経済政策担当ダイレクターは一月三〇日の月例経済・金融報告の会見で、二〇一五年の輸出額は石油関連製品や石油価格に連動する製品の輸出価格の低下のため、前年比1%増とした予測から下振れする可能性があると述べている。石油製品、石油化学、化学薬品のほか、合成ゴム価格に連動する天然ゴムや、燃料作物のタピオカ(キャッサバ)など、石油安の影響を受ける物品はタイの物品輸出全体の約5分の1を占めている。ドン氏は、多くの機関が今年のタイの物品輸出について4%増前後を予測しているが、石油価格の急落を考慮した上での予測ではないと説明している。

 ドン氏は、ギリシャの債務協議の行方、ドイツ経済の減速やロシア経済の冷え込みなどから、今年のタイの欧州向け物品輸出は下振れするリスクが大きいと述べている。輸出業者は、欧州の特恵関税(GSP)の廃止、農産物市況の悪化、外為相場の動揺などのマイナス要因を前に、今年の物品輸出に悲観的な見方を強めている。内需や観光業の回復は、輸出の伸び悩みを補うものの、中銀は通年の外国人観光客数について、業界予測の2800万人を大幅に下回る2650万人とする控え目な予測を出している。


日付 : 2015年02月02日

By : 週刊タイ経済

登録