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タイ国日系企業景気動向調査 業況感は一五年上半期に改善見通し

 バンコク日本人商工会議所(JCC)経済調査会が発表した二〇一四年下半期のタイ国日系企業景気動向調査によれば、日系企業の業況感は、二〇一四年上半期に消費の減速などを背景として二〇一三年下半期に比べて悪化した。業況感は二〇一四年下半期には悪化幅が縮小に転じ、二〇一五年上半期には改善する見通しとなっている。

 二〇一四年上半期(一~六月)に業況が上向いたとの回答は30%と、前期(35%)に比べ5ポイント低下した。一方、悪化したとの回答は50%で、前期(37%)に比べ13ポイント上昇した。この結果、上向いたから悪化したを差し引いたDI(景気動向指数)は、マイナス20となり、前期(マイナス2)に比べ18ポイント低下した。業種別の動きを見ると、製造業は、食料品、鉄鋼・非鉄などでDIが上昇した一方、一般機械をはじめとする多くの業種で低下しており、DIはマイナス17と、前期(マイナス14)に比べ3ポイント低下した。非製造業は、小売をはじめとして全ての業種が低下し、マイナス26と前期(プラス7)に比べ33ポイント減となった。

 二〇一四年下半期(七~一二月)の見通しに関しては、業況が上向いているとの回答は33%と前期(30%)から3ポイント増加した。また、悪化しているとの回答は39%と前期(50%)に比べ11ポイント減少した。この結果、DIはマイナス6と前期(マイナス20)に比べ14ポイント上昇する見通しとなった。業種別DIの動きをみると、製造業は繊維、一般機械などが減少した一方、輸送用機械などで増加したことから、マイナス6と前期(マイナス17)に比べ11ポイント上昇した。非製造業は小売をはじめとする全ての業種が上昇し、マイナス7と前期(マイナス26)に比べ19ポイント上昇する見通しとなった。

 二〇一五年上半期(1~6月)の見通しに関しては、業況が上向くとの回答は44%と、前期(33%)から11ポイント上昇した。一方、悪化するとの回答は15%と前期(39%)から24ポイント低下した。この結果、DIはプラス29と前期(マイナス6)に比べ35ポイント上昇する見通しとなった。業種別DIの動きを見ると、製造業は食料品を除く全ての業種で増加し、プラス23と前期(マイナス6)から29ポイント上昇する見通しとなった。非製造業も、金融・保険・証券をはじめとする全ての業種で増加し、プラス36と前期(マイナス7)から43ポイント上昇する見通しとなった。なお業況が上向いた、悪化したは前期との比較で、両者を差し引いたDIがプラスの場合は、前期に比べ業況が改善している企業が多いことを示している。一方、DIがマイナスの場合は、前期に比べ業況が悪化している企業が多いことを示している。

 二〇一四年度の総売上見込み額は、増加する企業が43%と、前年度(52%)に比べ9ポイント低下した。また、20%超増加する企業は12%と前年度(17%)に比べ5ポイント低下した。二〇一四年度の税前損益見込みで黒字を見込む企業は全体の78%となった。また税前利益の拡大(赤字縮小、赤字から収支均衡を含む)を見込む企業は28%、利益縮小を見込む企業は51%となった。二〇一五年度の税前損益見込みで黒字を見込む企業は83%となった。また、税前利益の拡大を見込む企業は43%、利益縮小を見込む企業は23%となった。

 二〇一五年度の設備投資予定額(製造業)は、二〇一四年度に比べ2・6%増加する見込み。投資増と回答した企業は35%、投資減と回答した企業が29%となった。設備投資の内容は、二〇一四年度、二〇一五年度ともに更新投資が多かった。

 輸出動向は、前年(同期)比で増加するとの回答が二〇一四年下半期で35%、二〇一四年通期で37%となり、共に減少するを上回った。また、二〇一五年上半期では増加するが37%となり、減少する(11%)を26ポイント上回った。今後の有望輸出市場(複数回答)は、インドネシアが51%と1位になった。次いでベトナム(36%)、インド(31%)、ミャンマー(30%)、カンボジア(19%)の順。

 業務計画における設定為替レート(バーツ/ドル)は、32・0~32・5バーツとする回答が全体の33・2%と最も多かった。次いで32・5~33・0バーツとする回答が23・9%となった。また中央値は32・3バーツとなった。業務計画における設定為替レート(円/バーツ)は3・2~3・3円とする回答が全体の21・6%と最も多かった。次いで3・3~3・4円の回答が16・4%となった。また中央値は3・3円となった。

 二〇一四年度の部品・原材料調達先比率(回答企業単純平均)は、ASEAN域内が56・5%となり、うちタイ国内が48・6%となった。二〇一五年度は二〇一四年度と比べ、タイ国内、ASEAN域内(タイ除く)からの調達割合がわずかに増加し、日本、中国からの調達割合がわずかに減少する見込み。経営上の問題点(複数回答)は、他社との競争激化が74%と最も多かった。次いでマネージャー人材不足(53%)、総人件費の上昇(47%)となった。製造業では品質管理(31%)、非製造業では従業員のジョブホッピング(34%)なども多かった。タイ政府への要望事項(複数回答)は、政情の安定・安全の確保が76%と最も多かった。次いで関税や通関制度、運用の改善(48%)、バンコク首都圏の交通インフラ整備(43%)。製造業では、法人税など税制運用の改善(28%)、非製造業では、外国人事業法の緩和(45%)、ワークパーミット、ビザ発給に関する問題の改善(35%)なども多かった。

 政治情勢の投資への影響については、既存の投資計画(二〇一三年一一月の政治混乱前に決定されていたもの)への影響(複数回答可)は、影響なしが68%と最も多かった。次いで延期した(8%)、縮小した(5%)となった。新規の投資計画(二〇一三年一一月の政治混乱以降に決定されたもの)への影響(複数回答可)は、影響なしが66%と最も多かった。次いで延期した(6%)、縮小した(4%)となった。政治情勢を受け、今後の日本の対タイ投資全体がどうなるかについては、変わらないが54%と最も多かった。また増大する28%、減少する18%となった。

 タイを中心とした周辺国への進出については、すでに進出しているが17%、予定ありが12%となった。未定との回答も25%に及んだ。周辺国への進出形態ついて(複数回答)は、サプライチェーンの拡大を図ると周辺国マーケットを狙うがともに39%と最も多かった。投資リスクの回避・分散は3%となった。進出済み、または進出を予定している周辺国について(複数回答)は、インドネシアが51%と最も多かった。次いでミャンマー(43%)、ベトナム(39%)、カンボジア(27%)。周辺国への進出理由について(複数回答)は、タイ側の理由では人件費の上昇(22%)が最も多かった。次いでリスクの分散(政情)(20%)、リスクの分散(洪水)(11%)。周辺国側の理由では国内マーケットの魅力(31%)が最も多かった。次いで取引先の存在(18%)、安価な人件費(16%)。

 タイ法人が有するアジア太平洋などの特定地域にあるグループ企業に対する地域統括機能の状況については、すでに有していると将来的に検討しているがともに13%となった。また今後も設置の予定がないは74%となった。タイ法人が有する地域統括機能の内容について(複数回答)は、販売・マーケティングが56%と最も多かった。次いで技術支援(38%)、金融・財務・為替(29%)、人事・労務管理・人材育成(29%)。製造業では研究開発(35%)、新規事業・再編、投資の立案(27%)、非製造業で情報システム(27%)なども多かった。地域統括機能をタイに置こうと検討している理由について(複数回答)は、周辺地域へのアクセスが容易が85%と最も多かった。次いで物流・通信インフラが整備されている(48%)、生活環境が整備されている(38%)、地域統括拠点に対する優遇税制(17%)などとなった。

 地域統括本部(ROH)制度について、どの障害が解決されれば地域統括拠点を設置するかについて(複数回答)は、ROH制度自体がわかりにくい点が53%と最も多かった。次いでROHの50%ルール(海外からの適格収入が総収入の5割以上)の基準をクリアできない点(29%)、ROHは支援業務が主であり、直接商流に絡めない点(27%)などとなった。
 ASEAN経済共同体(AEC)で期待する点について(複数回答)は、通関手続きの簡素化(通関申告書の統一、輸出入のシングルウインドウ化)が59%と最も多かった。次いでCLMVでの輸入関税撤廃(51%)、原産地規則などに関する解釈・運用の統一化(33%)、熟練労働者の移動自由化(30%)などとなった。


日付 : 2015年02月09日

By : 週刊タイ経済

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