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1月のインフレ率は0.41%減に 石油安からマイナスに転じる

 商業省が二月二日に発表した二〇一五年一月の消費者物価指数は前月比で0・59%減、前年同月比で0・41%減となった。昨年一二月に0・60%増だったインフレ率はマイナスに転じている。燃油の国内小売価格が下落したことと、電力料金の低下、さらには鶏卵、豚肉、鶏肉、果物、一部の野菜などの生鮮食品の物価が下落したことが理由。石油安は物流費の低減などを通じて生産コスト減につながるため、物価は今後も数か月は低下し続ける見通しになっている。(16面のデータ参照)

 ソムキアット・トライラットパン商業省審議官によれば、一月の一般消費者物価指数は106・02ポイントで、前年同月比0・41%減、前月比では0・59%減となっている。食品・飲料物価は前月比で0・14%減。野菜・果物、豚肉、鶏肉、鶏卵などは、天候に恵まれたことで市場出荷量が増加し、需給が緩んだ。コメ、淡水魚、イカ、植物油、醤油、炭酸水、牛乳、ヨーグルト、補助食品などの価格は上昇した。食肉は0・85%減、卵は2・23%減、野菜は1・08%減、その他食品・加工品は3・37%減、果物は0・77%減となった。穀物・同製品は0・03%増、魚介類は0・29%増、既製食品は0・10%増、惣菜は0・08%増、外食は0・13%増、調味料は0・16%増だった。

 非食品・飲料物価は前月比で0・83%減となった。ガソホール91、同95、E20、E85、軽油、オクタン価95ガソリン、潤滑油、電力料金が値下がりした。一方で、自動車燃料用圧縮天然ガス、民間クリニックの診察料、タクシー運賃、洗濯洗剤、柔軟剤、シャンプー、トイレットペーパーなどの物価は上昇した。建材は0・17%減、電力料金は2・43%減、公共運賃は0・84%減、燃油は8・04%減、仏具は0・13%減だった。一方で、家賃は0・52%増、労賃は0・39%増、診察料は0・26%増、個人ケアは0・07%増となった。

 消費者物価指数は前年同月比では0・41%下落した。非食品物価が1・86%下落したことによるもので、特に自動車・運輸通信の物価が6・91%下落した。一方で、衣料・靴は0・79%増、住居は1・33%増、医療・個人サービスは1・34%増、書籍・教育・宗教は0・69%増、タバコ・アルコール飲料は2・67%増だった。食品・飲料物価は2・34%上昇した。コメ・小麦粉・同製品が0・86%増、食肉・アヒル・鶏・魚介類が2・64%増、調味料が3・03%増、非アルコール飲料が1・33%増、既製食品が3・97%増となった一方、卵・乳製品は2・10%減、野菜・果物は0・78%減だった。

 一月の生産者物価指数は前月比で1・4%減、前年同月比では5・4%減だった。農業製品の生産者物価は前月比で1・2%増、鉱業製品は5・9%減、工業製品は1・6%減となった。前年同月比では農業製品が1・7%減となったほか、鉱業製品は17・3%減、工業製品は5・5%減だった。

 インフレ率は直近の5年間で最も低い水準まで低下し、マイナスになったものの、商業省はデフレの入り口に差し掛かっているわけではないとしている。エコノミストの多くも、インフレ率は今年上半期に低水準になることは認めているが、デフレのリスクはないと見ている。ソムキアット審議官は、インフレ率低下は、原油安が全てであり、需要不足によるものではないと説明している。同審議官はまた、消費財価格の下落は、国民の生活費負担軽減に努める政府の政策努力による部分もあるとしている。

 タイ中央銀行と財務省は二〇一五年の金融政策目標について、ターゲットとする物価上昇率を基本消費者物価指数上昇率(コア・インフレ率)から一般消費者物価指数上昇率(一般インフレ率)に変更している。一般インフレ率の誘導目標範囲は2・5%上下1・5%幅(1・0~4・0%)と定めており、現在のインフレ率は誘導目標範囲を下回っていることになる。ただし一般インフレに一時的に影響を及ぼす要因をある程度除去し、より長期的な将来見通しを反映させるため、目標期間は四半期ベースでの平均から通年ベースでの平均に変更されている。

 タイ中央銀行のスポークスマンは最新のインフレ率について、想定内の数値にあるとしている。中銀の金融政策委員会(MPC)は、一月二八日に開いた今年最初の金融政策決定会合で、政策金利の年2・00%での据え置きを決定したばかりだが、7人の委員のうち5人が据え置きを支持し、2人の委員は0・25%幅での利下げを主張していた。MPCの書記を務めるマティ・スパーポン中銀総裁補は三日、マイナスのインフレ率は第2四半期まで続く可能性が高いとしたものの、原油相場は年後半には反騰すると予測している。マイナスのインフレ率は一時的に過ぎないとの見方を示している。マティ総裁補は、マイナスのインフレ率が長続きせず、原油安を主因とするのであれば、内需の継続的な収縮を意味するデフレのリスクにはならないとしている。同総裁補は、消費者物価を仔細に見れば、指数の下落は原油安に引きずられたものであることが明白で、幅広い商品やサービスの価格が下落しているわけではないと述べている。

 プラサーン・トライラットウォラクン中銀総裁は、インフレ率を目標範囲に誘導するための手段について説明する文書をソムマイ・パーシー財務大臣に送っている。その中でやはりマイナス・インフレはデフレのシグナルではなく、金融の安定にも影響を及ぼさないとしている。またコア・インフレ率は引き続きプラス値になっているため、現在のマイナス・インフレはむしろ経済にプラスの側面があると説明している。


日付 : 2015年02月09日

By : 週刊タイ経済

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