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石油・ガス探査の第21次入札 法改正優先で首相が延期を決断

 プラユット首相は二月二四日、第21次の石油・ガス資源探査入札を3か月間先送りしたと発表した。同入札は当初、二月一八日にプロポーザルを締め切ることになっていたが、締め切りが三月一六日に延期になっていた。首相は石油法の改正を優先するとし、再度の延期を決断した。

 入札をめぐっては、市民グループが事業権料方式ではなく生産物分配方式を採用するよう要求している。第21次入札は、開発を急がないと国内の石油・ガス資源が近く枯渇するとして、エネルギー当局が実施を急ぎ、プロポーザルの受付が昨年一〇月二一日から開始されている。今回入札で対象となるのは内陸6、オフショア23の合計29鉱区。しかし事業権料方式では国が得る利益が少ないとして、エネルギー関連、消費者保護関連のNGOが反対を表明、さらに国家改革会議(NRC)のエネルギー部会が生産物分配方式の採用が望ましいとする提言を行なっていた。

 生産物分配方式の採用を含めたエネルギー改革を主張しているのは、反タクシン派のPDRC系団体、元上院議員グループなど。民主党も政府に入札見直しの要望書を提出していた。これに対し、プラユット首相はこれまで、入札の必要性に触れ、強行する姿勢を見せていた。ロサナー・トーシトラクン国家改革会議議員など改革派は、入札の取消と生産物分配方式の採用による国益最大化を主張している。改革派は石油法が改正されるまでは入札を中止するよう要求しており、最終的に政府が折れた格好となった。

 首相は石油法改正について、国家立法議会(NLA)に提出する前に、内閣と国家平和秩序維持団(NCPO)による詳細の検討が必要で、それには3か月かかると述べている。法改正作業のため、資源入札がさらなる延期を余儀なくされる可能性があることについては、記者団の質問に、その責任は政府にはないなどと応じている。改革派の強硬な姿勢に対し、解決策をみつけるため、時間を浪費することを承知の上で政府が折れたことを強調。もし結果として誤りが生じれば、責任を負うべきは改革派のほうだと述べている。

 エネルギー改革のための民衆ネットワークは二四日、プラユット首相の英断を歓迎するとした声明を出している。同ネットワークのパーンテープ・プアポンパン氏は、政府が改革派との対話を尊重して入札延期を決定したことに満足しているとコメントしている。別の改革派メンバーは、法改正が最善の方法だと指摘、ロサナー女史は民衆の声を聞く耳を持った首相の決定を歓迎すると述べている。

 ナロンチャイ・アカラセラニー・エネルギー相は二五日、資源探査事業入札の延期がエネルギー安全保障に重大な脅威をもたらすわけではないとコメントしている。また政府が石油法を改正して生産物分配方式を導入する用意ができていると述べている。ナロンチャイ大臣は、すでにプロポーサルを提出済みの投資家には文書を返還するとし、国に補償を求めないよう訴えた。ナロンチャイ大臣は翌日の談話で、入札の棄却を発表するとともに、プロポーザルを提出済みの応札者が1社だけだったことを明らかにしている。

 国営PTT社のスロン・ブラクン最高執行責任者(COO)は、資源開発の手法は、タイが40年以上にわたって採用してきた事業権方式のほか、生産物分配方式、探査契約方式の3通りしか世界に存在しないと指摘している。生産物分配方式の採用は悪いことではないが、多くの問題があることも事実だとし、原油相場が激しく変わる中、タイミングが重要になってくると述べている。また生産物分配に先がけて、費用の控除が許されるため、高い経営効率と透明性が要求され、タイに向いているかどうかは検証を要すると主張している。

 アピシット・ウェーチャチーワ元首相(民主党党首)は、国益を最大化するべく現行システムの弱点を取り除くべきだと主張。同時に法律が資源開発によりマイナスの影響を受ける人々の権利も保護すべきであることを付け加えている。また政府が事業権方式だけでなく、他のシステムも採用することができるよう、選択肢を増やすべきだとしている。同元首相は、第21次入札の対象となる鉱区からは、莫大な石油の埋蔵が確認される可能性は小さい事実を明らかにしている。第19次の入札で確認された可採埋蔵量はごくわずかで、第20次入札の探査でも多くの鉱区の埋蔵量は投資に値するものではなく、事業者が鉱区を返還している。

 ナロンチャイ・エネルギー大臣は、第21次入札は石油法の改正後にやり直しになるとしており、プロポーザルの提出期間は120日間になると述べている。鉱区の権益を取得した事業者による掘削のためのプラットフォームの建設には3~5年がかかる。

 エネルギー需要の増加に対し、国内での生産が先細ることについて、ナロンチャイ大臣はPTT社による液化天然ガス(LNG)輸入で対応すると説明している。PTT社の既存のLNGターミナルは500万トンの能力を持つが、新たに同規模の第2ターミナルも建設される。電力に関しては、計画している新たな石炭火力発電所を建設できない場合には、近隣国からの電力購入で対応する方針だが、その場合も輸入は電力需要の20%以下に抑制する。


日付 : 2015年03月02日

By : 週刊タイ経済

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