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中銀月例経済金融報告 タイ中央銀行の2月27日の発表より

 一月の景気は緩やかに回復している。観光セクターがタイ経済の主要な牽引力になる一方、民間支出は前月から横ばいとなっている。家計が支出に依然として慎重で、企業は景気回復と政府部門のインフラ・プロジェクト投資が明瞭化するのを見守っている。政府支出による刺激力は、これより前の期の予算執行の加速の反動から低下した。また物品輸出は中国とASEANの需要の鈍化にともない減少した。石油価格の下落の結果、インフレ率はマイナスとなった一方で、経常収支は4か月連続で黒字となった。

 一月の経済情勢の詳細は次のとおり。

 観光セクターは引き続き経済の重要な牽引力になっている。中国とマレーシアからの観光客増が支援要因である。タイがこれらの国の観光客の人気の観光地であることに加え、中国当局は海外旅行規制を徐々に緩和しつつあり、中国経済の減速は中国人観光客の旅行に大きな影響を及ぼしていない。

 民間支出は回復が遅れている。

 民間消費は前月から横ばい。家計は支出に慎重な姿勢を続けている。農業セクターの家計の購買力が、農産物、特に天然ゴム価格の下落から低下していることが理由である。また非農業セクターの家計の所得は横ばい。加えて債務負担が高水準にある。全体として石油価格の下落は消費に対して顕著な効果を及ぼしていない。

 企業は石油価格の下落により生産コストが減少し、低利の金融情勢にある。しかし景気の回復が遅れているほか、政府部門のインフラ・プロジェクトへの投資もまだ端緒に就いたばかり、さらには工業生産が依然として低いレベルにとどまっていることもあって、企業部門の生産能力も十分な水準を保っている。このため民間投資は設備投資と建設投資の双方で横ばいが続いている。

 政府支出は経済刺激の役割を果たしているが、前月に予算執行が物品・サービス調達費と投資の双方で加速していた反動から、刺激力は低下している。政府収入は前月から増加した。軽油の物品税率の引き上げによるところが大きい。一方で、経済活動全般を反映する法人所得税と付加価値税の税収は前年同期比で小幅減少した。

 物品輸出は前月から収縮した。石油、天然ゴム、化学品などの多くの製品の輸出価格が原油相場に連動して下げ続けていることが理由。また貿易相手国の経済も特に中国とASEAN諸国で減速している。さらに欧州向け輸出ですべてのタイ製品の特恵関税(GSP)が撤廃されたことも響いている。一方で、米国とCLMV諸国向け輸出は順調に拡大している。

 物品輸入に関しては、原油安にともなう原油輸入額の減少にともない輸入額は減少した。加えて製油所は原油相場の先安観から原油の輸入量を抑制している。原油以外の物品輸入に関しては、たとえば消費財、資本財、原材料は景気の回復が依然として緩やかなペースにとどまっていることに沿って横ばいとなっている。

 経済安定性は国内的にも対外的にも良好な水準を保っている。失業率は、やや上昇したものの、なお低位にとどまり続けている。世界市場の石油価格の急落でインフレ率はマイナスに転じたものの、デフレのシグナルではない。また原油安で経常収支も4か月連続で黒字となっている。これはバーツ相場を上昇させる一因となっている。キャピタルフローは、預金引き受け金融機関の外為ポジション調整のための海外での預金増とタイ人投資家の海外証券投資、さらには外国人投資家の証券売りにより赤字となった。国際収支は入超。一方、短期対外債務に対する外貨準備高は健全な水準を保っている。


日付 : 2015年03月02日

By : 週刊タイ経済

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