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3月11日の金融政策決定会合 市場は金利据え置きを観測

 タイ中央銀行のチラテープ・セーニーウォン・ナ・アユタヤ報道官は最近の会見で、金融政策委員会(MPC)が年2・00%の現行の政策金利を据え置くとの観測を示している。二〇一四年のタイの経済成長率は見込みを下回る0・7%増にとどまっており、原油安からインフレ率もマイナスに転じていることから、景気浮揚のための利下げへの期待が増していることに反応した発言。同報道官は、現在の政策金利は景気回復をサポートするのに十分に緩和的であり、景気の刺激は財政政策のほうに期待したいと述べている。同報道官は、MPCは現行の政策金利が経済の回復に貢献し続けると信じているとした。

 チラテープ報道官は、農業所得の低迷は気がかりだが、金融政策は経済を下支えする上で適正な水準にあり、経済は回復し、個人消費が改善することを期待しているとしている。政策金利をめぐっては、バーツ高の防止を理由に利下げを求める声が強まっている。欧州中央銀行が量的緩和措置に踏み切ったことで、緩和マネーの一部がタイにも流入し、バーツは上昇基調に向かうと観測されている。バーツの上昇は輸出にマイナスとなり、GDP成長率にも影響を及ぼすことになる。一部のエコノミストはタイ中銀が三月一一日に開く政策決定会合で金利を引き下げると予測している。

 しかしチラテープ報道官は、経済の刺激という観点では、財政政策のほうが効果が金融政策に優ると指摘。たとえ金融政策を緩和しても、銀行が貸出を増やすかどうかは別問題だとしている。また昨年の民間消費の減速は、農産物価格の急落による農業所得の減少に起因するもので、人口の35%を占める農家は今年も低収入に直面する可能性があるとしている。ただし農業所得の減少のため民間消費が鈍化しても経済成長は低下しないと述べている。一月に記録したマイナス・インフレについては、すべてのセグメントの物価の下落の結果ではあらず、原油安によるものであり、従って金融政策に影響が及ぶことはないとした。マイナス・インフレは昨年との比較によるベース効果も関係しており、中銀は通年でインフレ率のプラス成長を予測していることを示している。

 中銀は今年通年の物品輸出について、原油安による輸出価格の低下を考慮して、輸出成長率を前年比1%増と用心深く予測している。またギリシャ債務問題については、ユーロ諸国と合意に達したが、短期的なリスクは投資家の心理を圧迫すると認めている。ただしバーツ相場が大きな影響を受けることは想定していないとした。

 エコノミストの多くは、中銀が政策金利を引き下げるべきだとしているが、一一日の政策決定会合での利下げ決定は大方が予想しておらず、据え置くものと見ている。バーツは貿易相手国や競合国通貨との比較では上昇基調にあり、物品輸出の回復を遅らせることになる。昨年のタイの経済成長率が0・7%増にとどまっていることもあり、利下げによるもう一段の経済刺激を求める声は高まっている。しかしプラサーン・トライラットウォラクン中銀総裁は二月初めの談話で、現在の金利水準は十分に緩和的で、景気の回復を妨げるものにはなっていないと指摘、追加利下げには否定的な見解を示していた。

 中銀が金融政策のターゲットとする一般インフレ率は一月に0・41%減となり、二月も0・52%減と、2か月連続でマイナスになっている。原油安によるもので、原油相場が1バレルあたり70ドルを超える水準まで戻さない限り、マイナス・インフレは年央まで続くとの予測もあり、中銀には追加利下げを行なう余地がある。ただし中銀の公式見解はデフレではないというもの。需要不足または購買力の低下が引き起こしたものではないため、利下げによる効果は見込めないとしている。いずれにしてもインフレ率の低下を受け、名目の金利から物価上昇率を差し引いた実質金利は上昇傾向が続いており、国家経済社会開発委員会(NESDB)のアーコム・トゥームピタヤーパイシット事務局長は、実質金利の上昇を経済成長に対するリスク要因の一つと指摘。バーツ高の抑制と合わせて、追加利下げが望ましいとの見方を示唆している。

 パトラ証券調査部長のスパウット・サイチュア氏は、ユーロ圏、日本、スイスなどが金融緩和により自国通貨安を誘導することで、景気の回復につなげようとする中、他の諸国も通貨の切り下げ競争を行なっていることを指摘。シンガポールや中国、インドなどが相次ぎ金融緩和を行ない、金融政策を積極的に活用しているのに対し、消極的な態度を貫いているのはタイ金融当局くらいだと批判している。


日付 : 2015年03月09日

By : 週刊タイ経済

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