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2月の物品輸出は6・14%減 収縮幅も前月から拡大

 商業省が三月二六日に発表した二月のタイの物品輸出額は172億3000万ドルで、前年同月比6・14%減のマイナス成長となった。マイナス成長は前月に続くもので、収縮幅も一月の3・46%減から拡大した。この結果、一~二月の物品輸出は344億7800万ドルにとどまり、前年同期を4・82%下回った。二月の輸入額は168億4000万ドルで、前年同月比1・47%増へと上向いた。二月の貿易収支は3億9000万ドルの黒字。

 チャッチャイ・サーリガンヤ商業相は、これより前、二月の物品輸出額は前月並みで、前年比マイナスが続いているとコメントしていた。商業相は輸出額の収縮の原因として、貿易相手国や競合国通貨に対するバーツ高による価格競争力の低下、中国、日本、EU経済の減速などの貿易相手国の経済情勢、原油安に連動した輸出価格の下落を挙げている。

 バーツ建てで見ても二月の物品輸出額は5582億9200万バーツで、前年同月比6・78%減となった。一~二月では1兆1215億1000万バーツとなり、前年同期を4・60%下回った。二月の輸入額は5520億7500万バーツで、前年同月比0・81%増、貿易収支は62億1700万バーツの黒字だった。

 二月は特に農産物・アグロインダストリー製品の輸出が収縮した。中でも天然ゴムの輸出減が続いている。農産物・アグロインダストリー製品の輸出額は前年同月比12・5%減。タイの農産物輸出で最大の天然ゴムは38・8%減だった。供給過剰と原油安で価格が下落し続けていることや、世界市場の需要の回復が遅れていることが響いている。ゴムのほかにもコメ、砂糖、冷凍水産品・同缶詰、生鮮・冷凍青果・同加工品の輸出額も減少した。冷凍鶏肉・同調製品の輸出は7・2%増。日本のタイ産冷凍鶏肉の禁輸措置解除で日本向け輸出が伸びている。飲料の輸出は10・3%増、タピオカ製品の輸出は0・9%増だった。

 二月の工業製品の輸出額は3・7%減。原油安で精製油などの関連商品や合成樹脂などの輸出価格が下落したことが響いている。精製油、化学薬品、合成樹脂の輸出はそれぞれ順に26・8%減、20・3%減、12・3%減となった。また金地金の輸出は66・0%減だった。原油関連商品や金地金を除いたタイの二月の物品輸出は2・4%減。うち工業製品に限れば1・9%増となっている。輸出が引き続き伸びているのは宝石・ジュエリー(金地金を除く)、鉄鋼・同製品、集積回路、TV受像機・同部品などで、それぞれ順に47・9%増、17・1%増、8・2%増、12・8%増となった。

 二月の輸出を仕向け地別に見ると、米国向けは5・1%増となった。米国向け輸出のプラス成長は6か月連続。米国の景気回復を受け、コンピュータ・同部品の輸出が17・2%増となったほか、TV受像機は39・2%増、宝石・ジュエリーは13・6%増となった。CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)向け輸出は7・0%増。特にカンボジア、ミャンマー向けの輸出が主に国境貿易を通じて拡大している。これに対し、景気が低迷している日本向けの輸出は11・7%減、EU(15か国)向けは4・7%減となった。景気低迷のほか、量的緩和の金融政策の導入による円安とユーロ安が続いていることもマイナス材料となっている。経済が減速している中国向けの輸出は15・1%減。天然ゴム輸出の不振が続いているほか、精製油の輸出も価格の下落が輸出額を減少させている。

 一方、二月の輸入は資本財、原材料/中間財、消費財、輸送機械の輸入額がそれぞれ順に3・9%増、12・7%増、31・6%増、8・4%増となった。特に自動車部品の輸入は20か月ぶりにプラスに転じており、自動車工業は回復の兆しを見せている。一方で、燃料の輸入は36・3%減となった。原油安により原油の輸入額が45・0%減少したことによるもので、原油の輸入数量は15・3%増加している。

 国境貿易と国境横断貿易での物品輸出は引き続き拡大している。輸出額は全体の7・9%を占めている。国境貿易(マレーシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア)は二月の貿易額が780億8270万バーツとなり、前年同月を4・7%上回った。マレーシアとの貿易が全体の46・6%を占めているが、前年同月比では13・4%減となった。ミャンマー、ラオス、カンボジアとの国境貿易はそれぞれ順に59・4%増、0・9%増、24・2%増となった。タイは国境を接する4か国との国境貿易で115億8520万バーツの黒字となっている。また国境横断貿易(シンガポール、中国南部、ベトナム)の貿易額は93億9840万バーツで、前年同月比12・6%減だった。

 カシコン・リサーチ・センター社(KRC)は、輸出の不振が今後も数か月は続き、回復に向かうのは第2四半期(四~六月)の終わり頃になると予測している。第1四半期(一~三月)の輸出額は3・9%減と予測し、第2四半期の初めもマイナス成長が続く可能性があるとしている。KRCは上半期のタイの物品輸出が2・0%減になると予測しているが、さらに下振れする可能性が出てきている。ただし下半期には貿易相手国の景気回復にともない物品輸出は上向くと予測している。また原油相場の安定感が増せば精製油、化学薬品、合成樹脂、天然ゴム、ゴム製品、タピオカ製品などの価格の下押し圧力も緩和されると期待している。

 タイ荷主評議会(TNSC)のワロップ・ウィタンコーン副会長は、三月もマイナス成長が続くとの見方を示し、輸出予測の下方修正に言及している。またチュティマー・ブンヤプラパサラ商業省次官も、今年の輸出には数多くの試練があるとし、第1四半期のデータが明らかになった時点で通年見通しを再考することになると述べている。商業省の通年目標は前年比4%増。

 タイ商業会議所(TCC)のポーンシン・パチャリンタナクン顧問は、原油安による輸出価格の下落が輸出額に響いているだけだとし、輸出の収縮を過度に悲観する必要はないとの見方を示している。世界経済の回復とともに下半期の輸出は上向くと見ている。商業省によれば二月の原油相場は平均で1バレルあたり54・9ドルで、前年同月に比べて47%下落している。またバーツ相場も1ドル=32・22バーツと、前年同月に比べてわずかに上昇している。


日付 : 2015年03月30日

By : 週刊タイ経済

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