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タイ中銀月例経済金融報告 2月の景気は足踏み 工業生産は前年比プラス成長に回帰

 タイ中央銀行が三月三一日に発表した月例経済金融報告によれば、二月の景気は前月から横ばいとなっている。民間支出、政府支出とも前月からほぼ変わらず。物品輸出は中国とASEAN経済の減速の影響から収縮している。観光業は成長が持続し、景気の牽引車になっているものの、観光収入の伸びは観光客数の伸びを下回っているもよう。一方、二〇一三年初めから収縮を続けていた工業生産は二月に22か月ぶりにプラス成長に転じている。(3面に月例金融報告の内容、18~19面に中銀データ)

 中銀報告は景気が緩やかに回復していると表現したものの、財務省は三月三〇日に発表した月例経済財政報告で、二月の景気は引き続き減速しているとの見方を示している。景気は目先、緩やかな回復が期待されてはいるものの、民間支出の足取りは重く、物品輸出も収縮幅が拡大しており、消費者の信頼感は悪化している。三月の消費者信頼感指数は3か月連続で前月比マイナスとなっており、消費者の景気回復に対する期待感は萎みつつある。

 中銀報告によると、二月の農業所得は前年同月比で6・2%収縮した。生産が減少したほか価格も下落したためだが、季節調整済みの前月比では農業所得は1・8%増となった。農業生産は前年同月比3・8%減。旱魃により乾季米、パーム椰子、サトウキビの生産が落ち込んだ。農産物価格は、籾米の平均価格が1トンあたり7873バーツとなり、前月から小幅下落した。乾季米の市場出荷量が増えたため。しかし前年同月比では2年ぶりに上昇している。籾米担保政策の人為的な米価上昇の影響が剥がれ落ちたことによる。天然ゴムは3級シートゴムの平均価格が1㎏あたり46・90バーツとなり、前月の45・30バーツから上昇した。ただし前年同月比では21・3%下落している。キャッサバは1㎏あたり2・15バーツで、前月から下落した。市場出荷量の増加と最大の需要国である中国がカンボジアやベトナムなどからの輸入に目を向けたことが理由。前年同月比では4・9%下落している。パーム椰子は1㎏あたり5・76バーツで、前月比で5か月連続して上昇している。前年同月比では4・3%増。パーム油の在庫が低水準にとどまっていることが理由。また旱魃により収穫時期もずれ込んでおり、政府は軽油へのパーム油の配合比率を7%から3・5%に引き下げたものの、需給は引き締まっている。畜産品の価格は前月比で下落し、前年同月比では8・2%減となった。豚の供給が増えたほか、肉鶏、鶏卵は依然として供給過剰となっている。養殖エビの価格は前月比で上昇したものの、前年同月比では22・6%減だった。

 二月の工業生産は前月から拡大した。企業部門の電力消費量、燃料・化学薬品を除く原料輸入が前月から上向いた。事業者はこれより前の期に放出した在庫の強化のため生産レベルを引き上げ始めている。またハード・ディスク・ドライブ(HDD)の生産は、三月の機械メンテナンスのための工場休止を前に生産を加速させるという一時的な要因もあった。

 前年同月比で見ると、工業生産指数(MPI)は22か月ぶりにプラス成長に転じた。一部の工業の輸出が緩やかに上向いた。前年同月比で、自動車生産は乗用車の輸出、特にエコカーの欧州市場での需要増にともない拡大した。集積回路・同部品の生産は、世界市場のエレクトロニクス製品のサイクルが上向いたことによる後押しを得た。一方、食品・飲料と石油の生産は一時的な要因から伸びた。ビールと非アルコール飲料、特にソーダの生産は、個別物品税率引き上げの噂を受け、販売代理店からの引き合い増にともない拡大した。砂糖の生産はサトウキビの収量増から増加した。石油生産に関しては、比較ベースとなる前年同月の生産が製油所のメンテナンスと政治デモによる道路封鎖の影響で低水準にとどまっていたことが理由。一方、前年同月比で生産が減少したのはHDD。市場の人気がソリッド・ステート・ドライブ(SSD)などのハイテク・代替品にシフトしていることで世界市場の需要が低下している。また電化製品の生産は海外需要、特にEU、日本の需要の鈍化と国内需要の回復の遅れから生産が減少した。二月の設備稼働率は季節調整済み前月比でわずかに低下した。

 観光セクターは回復が続いている。二月の外国人観光客数は270万人で、前年同月比プラス成長となった。前年は一月だった中国正月が今年は二月だったことが一因だが、今年最初の2か月平均の観光客数は前年同期比で22・6%増加している。中国とマレーシアからの観光客が増えている。また前年同期は政治デモの影響で観光客数が落ち込んでいたため、ローベース効果も働いている。外国人観光客数は高い伸びを示しているものの、事業者への聞き取りからは欧州や中国などの景気減速に直面している国の観光客は支出に慎重になり始めている。このため観光収入の伸びは観光客数の伸びに比べて回復が遅れている。

 不動産セクターはバンコク首都圏で、需要と供給の双方で減速している。景気回復の遅れが主因。新規の住宅分譲の件数は前月比減が続いている。特にコンドミニアムで顕著で、消費者が支出に慎重になっていることに一致したものとなっている。消費者は不動産購入の決断を先延ばししている。新規分譲を開始したプロジェクトの購入予約率(3か月移動平均)は前月の27・9%から24・7%に落ち込んだ。また金融機関は住宅ローンの実行に慎重になっている。このため新規住宅ローン認可件数(季節調整・3か月移動平均)は前月並みの4989件で、二〇一三~二〇一四年平均の5739件を下回っている。


日付 : 2015年04月06日

By : 週刊タイ経済

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