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第1四半期の輸出は4・69%減 3月は前年同月比4・45%減

 商業省が四月二八日に発表した三月のタイの物品輸出額は188億8600万ドルで、前年同月比4・45%減のマイナス成長となった。マイナス成長は3か月連続。この結果、第1四半期(一~三月)の物品輸出は533億6500万ドルにとどまり、前年同期を4・69%下回った。三月の輸入額は173億9100万ドルで、前年同月比5・89%減。三月の貿易収支は14億9500万ドルの黒字だった。一~三月では14億2900万ドルの黒字。

 タイの物品輸出は昨年最終四半期(一四年一〇~一二月)に前年同期比1・6%増と上向いていたが、今年第1四半期は一転してマイナス成長となり、収縮幅も直近の5年半で最も大きなものになった。中国、EU、日本、ASEAN原加盟5か国向けの輸出が収縮していることが理由で、貿易相手国/競合国通貨との比較でのバーツ高、原油安による輸出価格の下落が響いている。

 チャッチャイ・サーリガンヤ商業相はこれより前、三月の物品輸出額は前年比マイナスが続いているとコメントしていた。商業相は輸出額の収縮の原因として、貿易相手国や競合国通貨に対するバーツ高による価格競争力の低下、中国、日本、EU経済の減速などの貿易相手国の経済情勢、原油安に連動した輸出価格の下落を挙げている。ただし三月の収縮幅は前月に比べると改善しており、主要市場におけるシェアも維持していることを強調。問題を抱えている農産物/アグロインダストリー製品の輸出数量は上向く兆しにあり、工業製品は引き続き収縮しているものの減少幅は縮小してきているとした。商業省は今年通年の物品輸出の目標を前年比4・0%増から1・2%増へと下方修正している。ナンタワン・サクンタナカ国際貿易振興局長によれば商業省の通年の輸出目標は2300億ドル。

 チュティマー・ブンヤプラパサラ商業省次官によれば、バーツ建てで見た三月の物品輸出額は6109億8400万バーツで、前年同月比4・15%減となった。一~三月では1兆7324億9300万バーツとなり、前年同期を4・44%下回った。三月の輸入額は5693億バーツで、前年同月比5・57%減、貿易収支は416億8300万バーツの黒字だった。一~三月では262億8900万バーツの黒字。

 農産物・アグロインダストリー製品の輸出は収縮しているが、減少率は縮小した。輸出の減少は世界市場の農産物価格の低迷が続いていることが響いている。中でも天然ゴムの輸出減が続いている。農産物・アグロインダストリー製品の輸出額は前年同月比2・6%減。タイの農産物輸出で最大の天然ゴムは27・9%減だった。価格が下落し続けているためで、輸出数量は前年同月比1・2%増と上向いた。ツナ缶詰、コメの輸出額は減少率が縮小した。一方、生鮮野菜果物・同缶詰、砂糖、飲料、冷凍鶏肉・同調製品、タピオカ製品の輸出額はそれぞれ順に11・1%増、21・0%増、34・9%増、10・3%増、7・5%増となった。

 三月の工業製品の輸出額は3・2%減。原油安で精製油などの関連商品や合成樹脂などの輸出価格が下落したことが響いている。また金地金の輸出は40・5%減だった。原油関連商品や金地金を除いた輸出は1・3%減。うち工業製品に限れば0・5%減となっている。輸出が引き続き伸びているのは鉄鋼・同製品、自動二輪車・同部品、TV受像機・同部品などで、それぞれ順に24・2%増、20・2%増、9・0%増となった。また自動車・同部品の輸出額は単月で過去最高を更新する24億4600万ドルを記録し、前年同月比5・0%増となった。

 商業省は輸出不振の理由として、①世界経済の減速、②バーツの貿易相手国/競合国通貨との比較での上昇、③農産物市況の低迷、④原油安、⑤インドネシアやベトナムのタイ産野菜果物に対する非関税障壁、欧米の検疫などの非関税貿易措置、⑥中東・北アフリカの政情不安、⑦貿易相手国の輸入代替政策、⑧EUの特恵関税の打ち切りを挙げている。このほか国内要因では①水産品の原料不足、②労働力不足と生産性の問題、③人件費が安く特恵関税を享受できる近隣国への生産拠点の移転も輸出に影響を及ぼしている。

 三月の輸出を仕向け地別に見ると、米国向けは5・6%増となった。米国向け輸出のプラス成長は7か月連続。米国の景気回復を受け、コンピュータ・同部品の輸出が29・9%増となったほか、TV受像機・同部品は11・3%増、ゴム製品は12・4%増となった。CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)向け輸出は17・4%増。特にカンボジア、ベトナム向けの輸出が伸びている。これに対し、景気が低迷している日本向けの輸出は8・4%減、EU(15か国)向けは2・1%減となった。景気低迷のほか、量的緩和の金融政策の導入による円安とユーロ安が続いていることもマイナス材料となっている。経済が減速している中国向けの輸出は8・3%減。天然ゴム輸出の不振が続いているほか、精製油の輸出も価格の下落が輸出額を減少させている。

 国境貿易と国境横断貿易での物品輸出は引き続き拡大している。輸出額は全体の7・9%を占めている。国境貿易(マレーシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア)は三月の貿易額が860億5280万バーツとなり、前年同月を2・8%上回った。マレーシアとの貿易が全体の46・6%を占めている。前年同月比では8・78%減となった。ミャンマー、ラオス、カンボジアとの国境貿易はそれぞれ順に15・4%増、10・2%増、23・3%増となった。タイは国境を接する4か国との国境貿易で211億4840万バーツの黒字となっている。また国境横断貿易(シンガポール、中国南部、ベトナム)の貿易額は118億550万バーツで、前年同月比5・4%増だった。中国南部との貿易が前年同月比で46・8%増となった。ベトナムとの国境横断貿易は60・1%増、シンガポールとのそれは50・8%減だった。タイは3か国との国境横断貿易で1億6730万バーツの黒字となっている。

 カシコン・リサーチ・センター社(KRC)は、輸出の不振が今後も数か月は続き、第2四半期(四~六月)もマイナス成長が続くと見ている。ただし原油相場が年初に比べて回復していること、CLMV諸国や米国向け輸出が引き続き拡大することなどから収縮幅は1・0%減となり、第1四半期から改善すると見ている。


日付 : 2015年05月11日

By : 週刊タイ経済

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