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NESDBのGDP統計 前四半期比でもプラス成長 第1四半期の成長率は3・0%増

 国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局が五月一八日に発表した二〇一五年第1四半期(一~三月期)のタイの経済成長率は3・0%増となり、二〇一四年第4四半期の2・1%増から上向いた。季節調整済みの前四半期比では多くの研究機関がマイナス成長を予測していたが、実際の数値は0・3%増のプラスとなった。支出面では、民間消費と政府投資、サービス輸出が支援要因となった一方で、生産面では、ほぼすべての生産セクターが上向いた。特に建設業、ホテル/レストラン業、運輸業、製造業の成長が続いている。

 NESDBのアーコム・トゥームピタヤーパイシット事務局長は、タイ経済が昨年第1四半期に収縮した後、着実に成長率が上向き、改善する方向にあることを強調している。なお今年第1四半期のGDPは、現在価値をより反映させるため基準年を一九八八年から二〇一二年に改定している。ある民間シンクタンクは、GDP統計の基準年変更で、昨年最終四半期のGDPも遡及して改められ、比較ベース値が下がったことが、前四半期比でのマイナス成長を回避できた理由かも知れないと指摘している。

 支出面では、家計消費支出は2・4%増で、二〇一四年第4四半期の2・1%増から緩やかに上向いた。付加価値税収(固定価格)、ビール販売数量、消費財輸入はそれぞれ1・0%増、15・3%増、7・2%増となり、前の四半期の0・9%減、1・5%増、4・2%増から上向いた。一方、乗用車の販売台数は3・5%減で、前の四半期の16・3%減から改善した。

 民間投資支出は、建設投資と設備投資の双方で成長を続けたが、伸び率は前の四半期をやや下回った。民間投資は3・6%増となり、前の四半期の4・1%増から減速した。建設投資の伸びは1・8%増(前の四半期は2・2%増)、設備投資は4・1%増(同4・7%増)だった。

 一~三月の物品輸出額は、主要貿易相手国経済の減速、バーツ相場の上昇、輸出商品価格の下落、欧州の特恵関税打ち切りの影響から減少した。輸出額は529億9700万ドルで、前年同期比4・3%減となり、前の四半期の1・5%増から収縮に転じた。輸出数量が2・6%減少し、輸出価格は1・8%下落した。主要貿易相手国、特に日本と中国の経済が減速していることや、ユーロと円に対しバーツが17・8%、13・7%上昇したこと、石油製品と石化品、農産物価格の下落が響いている。特に輸出全体の3・5%を占める精製油の輸出価格は12・9%下落した。輸出全体の3・1%を占める化学品の価格は7・6%、2・4%を占める天然ゴムの価格は32・8%、2・1%を占めるコメの価格は1・6%、1・0%を占める砂糖の価格は7・8%下落した。このほかタイの欧州向け輸出品の特恵関税(GSP)が一月から打ち切られたこともマイナス材料となった。バーツ建てで見た合計輸出額は1兆7300億バーツで4・3%減となり、前の四半期の4・7%増から収縮に転じた。

 農産物の輸出は15・2%減で、前の四半期の8・5%減から収縮幅が拡大した。農産物の輸出価格が6・8%下落したためで、特に天然ゴムの価格が値下がりした。農産物の輸出数量は9・0%減少した。工業製品の輸出は2・5%減で、前の四半期の3・1%増から収縮に転じた。世界市場の需要の回復が遅れていることに加え、輸出価格が原油価格に沿って下落した。輸出数量は前の四半期の3・4%増に対し1・1%減となった一方、輸出価格は1・4%減と前の四半期の0・3%減に引き続き下落した。

 米国、オーストラリア向けの輸出はそれぞれ5・6%増、9・5%増で、前の四半期のそれぞれ7・2%増、14・6%増から減速した。一方、EU(15)、日本、中国向けはそれぞれ3・9%減、9・2%減、14・4%減となった。ASEAN(9)向け輸出は2・4%減で、前の四半期の5・2%増から収縮した。特にマレーシア、インドネシア向けが減少した。これに対しCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)は10・6%増となり、前の四半期の6・8%増から伸びが加速した。

 輸入額は、輸入価格の下落、特に原油安にともない減少したが、輸入数量はすべてのカテゴリーで増加した。第1四半期の輸入額は合計で455億7200万ドル、前年同期比7・2%減となった。前の四半期は5・7%減だった。輸入価格は10・9%下落したが、輸入数量は4・1%増加した。

 製品カテゴリー別に見ると、原材料・中間財、資本財の輸入額は減少したが、消費財とその他製品の輸入額は増えている。特に消費財の輸入は3・四半期連続で増加した。原材料・中間財の輸入額は13・9%減。輸入価格が16・6%下落したが輸入数量は3・2%増加した。

 生産面では、農林水産業の生産は2・四半期連続で収縮した。主要農産物の収量の減少によるもので、価格の下落と天候不順の影響を受けた。農林水産業の成長率は4・8%減、前の四半期の3・2%減に引き続き収縮した。農産物価格は7・2%減で、5・四半期連続で下落した。籾米、サトウキビ、シート状ゴム、パーム椰子、バナメイ・エビ、畜産品の価格がそれぞれ4・4%、2・1%、26・4%、1・4%、24・2%、7・5%下落した。

 これに対し製造業は成長が加速した。国内消費向け工業の生産増によるもので、輸出向け生産は輸出数量の減少にともない減少した。製造業の生産は2・3%増で、前の四半期の1・4%増から加速した。工業生産指数は8・四半期ぶりにプラス成長に戻し、0・1%増と前の四半期の2・3%減から上向いた。輸出比率が30%以下の工業の生産指数と同30~60%の工業の生産指数はそれぞれ5・0%増、0・9%増となった。とりわけ石油、モルト、食品・飲料、装身具の生産が上向き、自動車の生産は7・四半期ぶりに増加に転じた。国内の新車販売は収縮しているものの改善に向かっており、この四半期の輸出台数は過去最高を更新した。輸出比率が60%超の工業は収縮を続けており、生産の減少は2・四半期連続となった。宝石・ジュエリー、TV受像機、事務機器の生産が減少している。設備稼働率は平均して62・1%で、前の四半期の60・1%と二〇一四年第1四半期の61・8%を上回った。

 建設業は第1四半期に高い伸びとなった。政府部門の建設投資の加速によるもので、民間建設投資も2・四半期連続で増加した。第1四半期に建設分野の生産は25・4%増となり、前の四半期の1・3%増から加速した。政府部門の建設が44・2%増と前の四半期の6・5%増から加速したことが支援要因となった。政府と国営企業の投資予算の執行がそれぞれ123・2%増、43・1%増となった。一方、民間部門の建設は1・8%増で、前の四半期の2・2%増に引き続き増加した。建材価格指数は3・7%下落した。

 不動産業は成長が持続した。不動産業の生産は2・8%増となり、前の四半期の2・6%増に引き続き成長した。需要サイドでは、首都圏の住宅所有権譲渡件数と商業銀行の不動産向け個人貸付残高が、それぞれ5・9%、11・8%増加した。供給サイドでは、首都圏の新築住宅登記と商業銀行の不動産事業者ローン残高はそれぞれ39・1%、3・7%増加した。価格面では、土地と住宅価格の双方が上昇した。コンドミニアムと土地の価格はそれぞれ16・0%、11・7%上昇した。

 ホテル/レストラン業は成長が加速した。観光セクターが上向いたことに沿ったもので、外国人観光客数、観光収入、ホテル客室稼働率が上昇した。第1四半期にホテル/レストラン業の成長率は13・5%増だった。2・四半期連続でのプラス成長で、前の四半期の3・3%増から上向いた。外国人観光客数は790万人で、前年同期を23・5%上回り、前の四半期の7・0%増から加速した。全体の62・8%を占める東アジアからの観光客は55・6%増、特に香港、中国、マレーシアからの観光客数はそれぞれ144・8%、96・1%、4・3%増加した。観光収入は4035億バーツで、前年同期を22・3%上回った。ホテル客室稼働率は68・5%で、前年同期の60・3%を上回り、直近の8・四半期で最高となった。


日付 : 2015年05月25日

By : 週刊タイ経済

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