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バーツ安基調の為替相場 タイ中銀は動揺が続くと警告

 タイ中央銀行のチャンタワーン・スチャリッタクン金融市場オペ担当総裁補は五月二一日、バーツの対ドル・レートについて、当分の間は不安定な状態が続くとの見方を示している。タイ経済の状況や中国の経済情勢、米連邦準備制度理事会の利上げ時期、ギリシャ債務問題など、内外の不安定要因が多いことが理由。

 バーツの対ドル・レートは先週、1ドル33・40~33・50バーツ前後で比較的安定的に推移している。五月に入ってからのバーツ相場は33・18~38・88バーツの変動範囲となっている。年初時点に比べて約2%のバーツ安となるもので、輸出業者を手助けしている。中銀はバーツの変動率が3~4%から6~7%に上昇していることを明らかにしているが、それでも他の域内通貨に比べて変動率は低く、相対的に安定していることを強調している。

 バーツ相場は四月末の金融・通貨当局による利下げと資本移動規制の緩和を受け、バーツ安基調が続いている。五月一九日のバーツ相場は直近の6年で最も低い水準まで下落した。中銀のワチラ・アーロムディ・シニアダイレクターは世界経済がなお弱々しく、多くの不確定要素があることを指摘、企業経営者は外為リスクのヘッジを怠るべきではないと述べている。

 チャンタワーン中銀総裁補は、バーツ安が輸出業者のバーツ建て収入を増やしていることを指摘している。一方で、現在のバーツ相場が、タイ経済のファンダメンタルと先行き予測を反映したもので、中銀は市場メカニズムが適切な為替レートを導くと信じていると述べている。

 中銀の金融政策委員会(MPC)が四月二九日の政策決定会合で、三月一一日に引き続き2会合連続で政策金利を引き下げたのは、今年一月以降、4か月連続で収縮を続けている物品輸出を浮揚させるためのバーツ安誘導が目的の一つと見られている。民間シンクタンクの多くは、中銀がこれ以上の追加金融緩和に動くことはないと見ている。年の残り期間に経済成長を加速させるためには、財政支出が少なくとも現状のペースを維持するか、加速させる必要があると見ている。

 一方、プラユット首相は二一日、国家立法議会での二〇一六年度予算法案の審議で、2兆7200億バーツの一六年度予算が施行になる二〇一六年には、タイ経済の成長率は3・7~4・7%増になると述べている。首相は今年のタイの経済成長率についても3・5~4・5%成長を信じているとした。首相は一六年の経済成長率が今年に比べて加速すると考える根拠として、世界経済が上向くことがタイの輸出を手助けし、また農産物価格も底入れして上昇に転じる可能性があることを挙げている。外需の増加に加え、インフラ投資による政府支出の拡大や特別経済区の創設が民間部門の信頼感を押し上げることも、成長を加速させる要因になるとした。

 二〇一六年度予算の投資的経費は5436億3500万バーツで、一五年度比で941億6000万バーツ、率にして20・9%増となっている。二一日の立法議会の本会議では、予算法案の第1読会が行なわれ、賛成多数で可決された。今後、特別委員会による審議に入り、八月下旬には第2、第3読会を通過することになる。


日付 : 2015年05月25日

By : 週刊タイ経済

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