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5月のインフレ率は1・27%減 5か月連続でマイナスを記録

 商業省が六月二日に発表した五月のインフレ率は前月に引き続きマイナスとなった。五月の消費者物価指数は106・53ポイントで、前月比で0・17%上昇したが、前年同月比では1・27%低下した。インフレ率は5か月連続でマイナスとなり、五月は前月の1・04%減を上回る収縮幅となった。(16面のデータ参照)

 ソムキアット・トライラットパン商業省審議官によれば、五月の消費者物価の前月比での上昇は、ドリアン、ミカン、マンゴスチン、わけぎ、ササゲ、生トウガラシなどの生鮮果物・野菜、鶏卵、鶏肉、非アルコール飲料、学習費、家賃などの上昇によるもの。しかし前年同月比ではマイナスとなった。ガソホール91・同95、軽油、オクタン価95ガソリンなどの燃油、電力料金、豚肉、宅配食品、ランブータンやライムなどの一部の生鮮果物・野菜の価格が下落した。一~五月平均の消費者物価は前年同期比0・77%下落した。

 食品・飲料物価は前月比で0・16%上昇した。鶏肉が0・28%、鶏卵が3・86%、白菜が5・78%、ササゲが7・96%、ワケギが9・05%、ベビーコーンが3・85%、ミカンが1・52%、ランブータンが13・54%、ドリアンが13・50%、マンゴスチンが20・08%上昇した。食肉は0・34%増、アヒル・鶏は0・21%増、卵は3・36%増、生鮮野菜は0・37%増、生鮮果物は1・20%増、非アルコール飲料は0・08%増となった。一方で、キャベツは3・99%減、カイラン菜は8・73%減、空芯菜は5・43%減、パクチーは6・59%減、ライムは3・66%減、ニラは9・35%減、葉レタスは6・48%減、コメは0・04%減、魚介類は0・22%減、調味料は0・33%減。

 非食品・飲料物価は前月比で0・18%上昇している。家賃が0・05%増となったほか、個人ケアが0・18%増、燃油が3・09%増、学習費が1・09%増、アルコール飲料が0・02%増となった。一方で、電力料金は2・49%減、寝具は0・06%減、清掃関連は0・06%減、通信機器は0・68%減、娯楽機器は0・10%減、旅行費は0・09%減だった。

 消費者物価指数は前年同月比では1・27%下落した。非食品物価が2・00%下落したことによるもので、特に自動車・運輸・通信の物価が6・36%下落した。一方で衣料・靴は0・49%増、住居は0・50%増、医療・個人サービスは1・04%増、書籍・教育・宗教は0・75%増、タバコ・アルコール飲料は2・03%増だった。食品・飲料物価は0・11%上昇した。コメ・小麦粉・同製品が0・06%増、調味料は0・66%増、非アルコール飲料は0・82%増、調理済み食品が1・00%増となった一方、食肉・アヒル・鶏・魚介類は1・18%減、卵・乳製品は2・98%減、野菜・果物は0・23%減だった。

 一~五月の消費者物価は前年同期比0・77%減。非食品・飲料物価が1・80%下落したことによるもので、自動車・運輸・通信の物価が6・54%下落した。一方で衣料・靴は0・75%増、住居は1・18%増、医療・個人サービスは1・13%増、書籍・教育・宗教は0・66%増、タバコ・アルコール飲料は2・19%増。食品・飲料物価は1・19%増だった。コメ・小麦粉・同製品が0・47%増、食肉・アヒル・鶏・魚介類は0・43%増、非アルコール飲料は0・97%増、調味料は2・13%増、調理済み食品が2・43%増となった一方、卵・乳製品は2・58%減、野菜・果物は0・14%減だった。

 五月の生産者物価指数は前月比で1・2%増、前年同月比では4・8%減だった。一~五月の同指数は5・1%減。農業製品は前月比で0・3%増、鉱業製品は3・5%増、工業製品は1・2%増となった。前年同月比では農業製品が5・7%減となったほか、鉱業製品は5・9%増、工業製品は4・8%減。一~五月の生産者物価は農業製品が2・8%減、鉱業製品が3・7%減、工業製品が5・4%減だった。

 タイ商業会議所大学(UTCC)のタナワット・ポンウィチャイ副学長は、六月もインフレ率はマイナスになる公算が大で、マイナス・インフレは6か月連続になると予測。原則に従えば、テクニカルなデフレと言うことになるとしている。カシコン・リサーチ・センター社(KRC)は、世界市場の石油価格は今後も2、3か月は低迷すると予測しており、マイナス・インフレは第3四半期(七~九月)まで続く可能性があるとしている。

 エネルギーと生鮮食品を除いた基本消費者物価上昇率(コアインフレ率)はプラス値を保っているが、タナワット副学長は、前月に比べて低下していることは、景気の低迷と購買力の弱化を受け、消費者が支出に一段と慎重になっていることを反映していると述べている。一般インフレ率のマイナスは、原油安や商品市況の低迷によるところが大きく、タイ経済がデフレに直面しているとは言い切れないものの、コアインフレ率の低下は需要不足を如実に示している。農業と非農業の双方の家計の所得が回復していない以上、需要不足は続く可能性が高い。

 五月の基本消費者物価指数は前年同月比0・94%増で、前月比でも0・05%増にとどまっている。
 タナワット氏はこうした最新のデータに基づき、政府は至急、経済刺激策を導入すべきだと主張している。また購買力を刺激して景気を浮揚させるため、タイ中央銀行がもう一段の追加利下げに出る必要があると述べている。

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は六月一〇日に政策決定会合を開く。MPCはこれに先立つ三月と四月の2会合連続で、政策金利を0・25%幅で引き下げており、一〇日の会合では、その効果を見極めるためにも金利は据え置くというのがマネーマーケットの予測となっている。現在の政策金利は年1・50%。MPCは一〇日の政策決定会合を経て一九日には『金融政策リポート』最新号を公表し、今年の経済成長率予測を見直す。成長率の下方修正が確実視されているものの、四月の追加利下げは、これを織り込んだもので、3会合連続での利下げの材料にはならないとの見方が多い。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの時期も流動的で、MPCとしては動きにくい状況にある。さらにここに来て、財政支出も特に投資支出で加速する兆しが見えてきており、財政政策による景気下支えの期待も高まっている。ソムマイ・パーシー財務相は最近の談話で、中銀によるさらなる追加利下げは不要と発言している。

 いずれにしても過去2回の利下げで、民間部門の金融コストは低下している。商業銀行大手4行平均の最優遇貸出金利(MLR)と最優遇小口顧客貸出金利(MRR)は過去2回の政策金利の引き下げに連動してそれぞれ0・24%、0・18%幅で下落している。また民間部門の債券の利回りも0・2~0・5%幅で低下しており、金融コストの低減につながっている。

 またバーツ相場も下落して域内の貿易相手国通貨と同じ基調で推移している。先週のバーツ相場は上値が1ドル=33・70バーツへと切り下がった。バーツは週の初め、米国の経済指標が予想以上に良かったことで米ドルが強くなったことの裏返しで1ドル=33・80バーツ台まで下落した。金融政策委員会(MPC)が、金融政策を通じた為替レートの管理について言及し始めていることもバーツ安要因となった。週の半ばに一時的に33・65バーツまで反発したものの、週の終わりには外国人投資家によるタイ株とタイ国債の売り越しから反落した。プリディヤトーン・テワクン副首相は、バーツの対ドル・レートが今後、さらに下落し、輸出に対する顕著な効果が第3四半期にも現れるとの見方を示している。輸出業者は一般に、事前に注文を受けているため、最近のバーツ安の効果が現れるのには最長で4か月はかかるとしている。同副首相は、バーツ相場が現在の水準にまで下がるのに数週間を要したことを理由に、バーツが急落しているわけではないと主張している。

 バーツの下落が始まったのは四月終わりで、きっかけはタイ中銀による不意の追加利下げと資本移動規制の緩和。これにタイ経済の先行き不安による外国人投資家のバーツ資産を敬遠する動きが加わり、バーツ相場はこの6年で最安となっている。

 タイ中央銀行のプラサーン・トライラットウォラクン総裁は、バーツ安トレンドが輸出にプラスになることを認めている。中銀はこれまで、利下げがバーツ安誘導を目的としたものではないことを強調してきたが、ここに来て金融政策を語る際の中銀首脳の発言には変化も見られる。ただしプラサーン総裁は、輸出の先行きに関しては需要動向が鍵を握るとしている。総裁は農産物価格が下落しているのは世界市場の需要の低下が主因だと指摘。バーツ安で輸出業者はバーツ建てで見た収入が増えるものの、例えば天然ゴムの輸出は改善しないかも知れないと述べている。


日付 : 2015年06月08日

By : 週刊タイ経済

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