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物品輸出は5か月連続収縮 5%減に収縮幅も拡大

 商業省が六月二六日に発表した五月のタイの物品輸出額は184億2900万ドルで、前年同月比5・01%減のマイナス成長となった。マイナス成長は5か月連続となるもので、収縮幅は前月に比べて拡大した。一~五月の物品輸出は886億9400万ドルにとどまり、前年同期を4・20%下回っている。五月の輸入額は160億1200万ドルで、前年同月比19・97%減。一~五月では853億7100万ドルで、前年同期比9・39%減となった。五月の貿易収支は24億1700万ドルの黒字、一~五月では33億2300万ドルの黒字となった。

 バーツ建てで見た五月の輸出額は5925億2400万バーツで、前年同月比4・61%減。一~五月は2兆8734億7800万バーツで、前年同期比3・75%減となった。一方、五月の輸入額は5209億5700万バーツで、前年同月比19・62%減。一~五月の輸入額は2兆7994億4600万バーツで、前年同期比8・88%減だった。この結果、五月の貿易収支は715億6700万バーツの黒字、一~五月では740億3300万バーツの黒字となった。

 農産物・アグロインダストリー製品の輸出は収縮を続けているが、減少率は縮小した。五月の輸出額は前年同月比2・8%減。輸出の減少は世界市場の農産物価格の低迷が続いていることが響いている。タイの農産物輸出額で最大の天然ゴムは14・4%減だった。価格が下落し続けているため。同様に砂糖、冷凍エビ・同加工品、ツナ缶詰の輸出額も減少を続けている。一方、タピオカ製品、果物缶詰・同加工品、コメ、冷凍鶏肉・同調製品の輸出額はそれぞれ順に72・5%増、5・1%増、1・9%増、1・6%増となった。

 五月の工業製品の輸出額は4・5%減。タイの工業製品輸出で最大の自動車・同部品は0・6%増で、伸び率は低下した。工業製品輸出の減少は、原油安で精製油などの関連商品や合成樹脂などの輸出価格が下落したことが響いている。原油相場は反発しているものの、前年同期に比べるとなお低い水準にとどまっている。金地金の輸出は17・3%増となった。金相場が反騰を始めたため、これより前に投機目的で輸入されていた金の輸出が増加した。原油関連商品や金地金を除いた輸出は3・1%減。うち工業製品に限れば3・5%減となっている。

 五月の輸出を仕向け地別に見ると、米国、中国、CLMV向けは好調に推移している。米国向け輸出は0・4%増となり、プラス成長は9か月連続となった。米国の景気回復を受け、コンピュータ・同部品、ゴム製品、宝石・ジュエリー、TV受像機・同部品の輸出がそれぞれ順に0・9%、10・6%、16・4%、25・5%増加した。またCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)向け輸出は2・5%増となった。特にベトナム向けの輸出が伸びている。これに対し、日本とEU(15)向けの輸出はそれぞれ4・1%減、13・7%減となった。中国向けの輸出は3・3%増へと上向いた。特にタピオカ製品、ゴム製品の輸出が111・6%増、23・6%増へと上向いた。

 商業省は世界経済全体と主要貿易相手国市場の減速が物品輸出収縮の主因と分析している。特に欧州、日本、ASEAN諸国向け輸出の不振が響いている。米国経済は上向いてきているものの、世界経済全体は回復がゆっくりとしたテンポにとどまっており、多くの国で物品輸入は収縮を続けている。

 このほかに世界市場の原油価格は反発しているものの、五月の平均価格は前年同月比で39・7%減となっている。このため精製油、化学薬品、合成樹脂などの輸出に影響が及んでいる。また農産物価格も低迷しているため、特に天然ゴムや砂糖といった農産物の輸出額が減少する結果となっている。さらに多くの国が自国通貨安に誘導する為替政策を採用しており、その結果、タイの輸出商品の価格は相対的に上昇している。タイ中央銀行による政策金利の引き下げと資本移動規制の緩和措置を受け、バーツ相場は下落しているが、その効果はまだ物品輸出には現われていない。

 商業省は物品輸出の収縮幅が拡大していることについて、各国も似たような状況にあることを示し、世界的に見れば、まだましであることを強調している。タイ以上に輸出が収縮している国にはオーストラリア(21・9%減)、フランス(16・1%減)、シンガポール(12・6%減)、日本(6・4%減)、米国(4・7%減)、韓国(4・3%減)などがある。さらに商業省は、米国、中国、日本、インド、シンガポール、フィリピン、マレーシア、韓国、オーストラリア、台湾などの国・地域の輸入に占めるタイからの輸入の比率の推移を示し、多くの国・地域でタイがシェアを維持し、むしろシェアが前年までとの比較で上昇していることを強調している。

 国境貿易と国境横断貿易の輸出額は全体の7・9%を占めている。国境貿易は五月の貿易額が790億6400万バーツとなり、前年同月を7・0%下回った。マレーシアとの貿易が全体の47・9%を占めている。前年同月比では8・1%減となった。ミャンマーとの国境貿易は16・3%減、ラオス、カンボジアとの国境貿易はそれぞれ2・6%増、2・9%増となった。タイは国境貿易で224億8180万バーツの黒字となっている。また国境横断貿易の貿易額は114億7690万バーツで、前年同月比18・5%減だった。中国南部との貿易が最大で、全体の41・4%を占めた。前年同期比では47・7%増。ベトナム、シンガポールとの国境横断貿易はそれぞれ28・0%減、49・4%減だった。タイは3か国との国境横断貿易で18億9060万バーツの黒字を計上している。


日付 : 2015年06月29日

By : 週刊タイ経済

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