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外為市場が動揺 アジア通貨安でバーツも下落

 アジア域内の外為市場と株式市場の動揺が続いている。24日の外為市場は、域内通貨が軒並み下落した。中国経済減速のリスク、原油相場急落に加え、アジアの一部の国の対外経済安定性の低下、新興国での通貨切り下げ競争の激化などの悪材料が続出した結果で、バーツもその影響を受けている。ASEAN諸国で特に懸念が大きいのはインドネシア・ルピアで、24日に17年ぶりの最安値へと下落した。ベトナム・ドンも史上最安値を更新、バーツも6年ぶりのバーツ安水準となっている。

 ASEAN諸国で対外安定性が最も脆弱なのは、マレーシア。上半期の物品輸出は前年同期比13・1%減と、タイの4・8%減を上回る収縮幅となった。カシコン・リサーチ・センター(KRC)が24日付けで発表したレポートによれば、マレーシアの外貨準備高は945億㌦、短期対外債務と3か月分の物品輸入額を差し引いた正味の外貨準備高は501億㌦のマイナスで、97年の経済危機当時のタイに似た状況になっている。ベトナムも正味の外貨準備高がマイナスになっている。

 マレーシア・リンキッドは年初時点に比べて17・4%減価し、インドネシア・ルピアは同11・8%減価している。一方、タイの外貨準備高は1726億㌦と両国を大幅に上回る。外貨準備は、短期対外債務の3・1倍の水準で、正味の外貨準備高は628億㌦のプラスとなっている。タイの通貨・金融当局は、キャピタル・フローの動向を密接に監視しつつも、域内国経済の動揺や米国による利上げで投資マネーが流出しても国内市場の大混乱は回避できると見ている。

 通貨ディーラーはバーツ相場が1ドル=36バーツ台まで下がることを想定。中には、通貨安競争が激化すれば1ドル=40バーツ台もあり得るとする向きもある。バーツ相場の先行きを左右するのは、国内経済情勢よりも域内通貨の動向にあるというのが通貨ディーラーの総意で、バーツは弱基調が続くと見ている。

 タイ中央銀行は今年3、4月に政策金利を引き下げて、バーツ安誘導を進め、資本移動の規制緩和措置も打ち出すことで通貨安競争に加わっているが、政策金利はその後の会合で据置きを続けている。足元の景気が減速し、物価は依然として下落しているため、追加の金融緩和を求める声も出ているが、中銀の金融政策委員会(MPC)が9月16日に開く政策決定会合では金利を据え置くものと予測されている。

 なおタイとマレーシアの通貨当局は8月27日、バーツとリンギットの両国通貨による決済の促進で覚書を取り交わした。両国の外為取扱金融機関がバーツとリンギットの為替相場を決定することが可能になる。


日付 : 2015年08月31日

By : 週刊タイ経済

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