ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

景気対策を閣議決定 第2、第3の刺激策も 総額1360億バーツ

 プラユット政府は9月1日に開いた閣議で総額1360億バーツ規模の景気対策を決定した。村落基金を通じた無利子貸付、タムボン(行政区)レベルでの予算配分、小規模公共事業による雇用創出の3本柱で、注入する資金はそれぞれ順に600億バーツ、362億7500万バーツ、400億バーツ。内閣改造で新たに経済閣僚チームを率いることになったソムキット・チャトゥシーピタック副首相は、景気浮揚のために3本の矢を考えていることを明らかにし、さらに第2、第3の刺激策を用意すると述べている。

 この日の閣議で決定された景気対策は、①村落レベルでの暮らし振興措置、②タムボン・レベルでの暮らし振興措置、③全国の小規模投資振興措置の3件。村落レベルでの暮らし振興措置は、全国に設置された村落・都市コミュニティ基金のうち、当局がグレードA、Bに分類した基金に対し、100万バーツの原資を追加で融通する。資金は政府貯蓄銀行と農業・農協銀行が300億バーツずつを提供し、国は年度予算から両行に金融費用を補填する。両行による基金への資金融通の期間は7年。各村落基金は加入者である村民に資金を貸し付ける。初年度と2年目については無利子、3年目から7年目までは金融コスト+1・0%の金利とする。この日の閣議では、17年度と翌年度以降の年度予算から拠出する24億7800万バーツを限度とする利子補填を認可した。

 タムボン・レベルでの暮らし振興措置は、景気減速と農産物価格下落による影響を受けている地方の低所得層の援助を目的としたもので、タムボンに予算を配分することでタムボン・レベルでの雇用の創出と消費、投資の拡大を狙う。具体的には全国に7255か所あるタムボンに一律で500万バーツの予算を配分する。362億7500万バーツの経費は15年度と16年度の中央予算の緊急予備費から拠出する。水源や給水網の補修、病院・学校・中央市場の修繕やゴミ処理場の改良などの公共事業のほか、需要のある新たな作物栽培、堰の建設、植林などの充足経済思想に即した地域社会開発振興プロジェクトなどに資金を投じる。

 全国の小規模投資振興措置は、雇用創出と投資刺激を目的としたもので、実施予算は400億バーツ。15年度の緊急予備費と16年度予算から拠出する。政府機関、国営企業などに1件あたり100万バーツ以下の調達・任用案件の提出を求め、年内に予算消化を義務付ける。

 ソムキット副首相は閣議後の談話で、中小企業対策の第2弾の刺激策を1~2週間以内に閣議提出し、3か月以内に海外からの投資誘致を目的とした第3の刺激策を打ち出すと述べている。輸出に過度に依存するタイ経済の不安定な構造を改革する必要があるというのが同副首相の持論で、第1弾の景気対策はこれが出発点になっていると説明している。最初の対策で、経済システムを循環するマネーを増やし、地方農村の疲弊を緩和する必要があるが、中小企業支援の2番目の対策が投資活動を促進することになるため、極めて重要になってくるとしている。

 村落基金を通じた無利子貸付は、家計債務のさらなる膨張を助長するとした批判も出ているが、ソムキット副首相は、経済が低迷する中で低所得層を援助するのに必要な措置だとしている。アピサック・タンティウォラウォン財務相は、既存借金の返済目的での村落基金からの借入は禁止する条件をつけていることを明らかにしている。

 タイ工業連盟(FTI)のスパン・モンコンスティ会長は、今回の景気対策が低所得層の購買力を押し上げるとしているが、現金を経済システムに直接注入するという意味では明らかに大衆迎合政策だと指摘。乱発しないよう求めている。


日付 : 2015年09月07日

By : 週刊タイ経済

登録