ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

中銀月例金融報告 景気、依然として脆弱 輸出は低迷 消費は収縮

 タイ中央銀行が8月31日に発表した最新の月例経済金融報告によると、7月の景気はなお脆弱な状態が続いている。経済の牽引力となっているのは観光セクターと政府支出のみで、物品輸出は貿易相手国の需要の鈍化にともない低迷している。民間消費は所得の低下や消費者の信頼感の悪化から減少した。国内外の需要が脆弱で、企業の信頼感も影響を受けているため、工業生産と民間投資は引き続き低調にとどまっている。

 経済安定性の面では、一般インフレ率は、世界市場の原油価格が低位にあることから引き続きマイナスとなっている。失業率は前月から横ばい。農業部門の労働力の非農業セクターへのシフトが続いている。経常収支は輸入の収縮から黒字となった。

 7月の経済情勢は次のとおり。

 物品輸出は依然として低迷している。中国とASEAN経済の減速により、多くの品目で輸出は収縮した。また石油製品、化学品と石油化学品の輸出価格が世界市場の原油相場に沿って下落したこと、貿易相手国の需要鈍化で輸出数量の伸びが鈍化したことも理由の一つとなっている。これとは別にハード・ディスク・ドライブ(HDD)の輸出はほぼ全ての輸出市場で減少した。消費者がHDDを搭載しないハイテク商品を志向していることが理由。一方、水産品と水産加工品の輸出は原料不足問題に直面した。この月の物品輸出額は前年同月比で3・1%減少した。前月比での下落は7か月連続。ただし一部の商品の輸出は上向いている。例えば自動車の輸出は特に欧州、中東、オーストラリア向けが伸びた。また電化製品は中東向け輸出が伸びている。この地域の不動産業が上向いたことに沿ったもの。

 民間消費の指標は、前月に加速していた反動から減少した。耐久財、半耐久財、運輸分野のサービス支出が減少した、また非耐久財の消費も前月から伸びが鈍化した。家計が支出に慎重になっていることを反映したもので、収量の減少と価格の下落から農業所得が大幅に減少したことが響いている。他方、非農業分野の家計の所得は横ばいを続けている。加えて消費者は経済の回復状況と旱魃状況に対し懸念を抱いている。

 国内外の需要が脆弱なため、企業の信頼感は低下した。また工業生産は全体として低調にとどまっている。前月比ではやや改善したものの、自動車の新モデル生産への切り替えの完了、ビールの新商品投入を前にした既存商品の増産、在庫投資のための化学品とエレクトロニクス部品の生産増という一時的な要因によるものとなっている。

 民間投資は底ばいしている。建設投資は不動産市況の減速にともない低下したが、設備投資が商用車の新モデルの生産ライン導入にともない拡大した。いずれにしても他の業種の設備投資はまださほど多くはない。特に生産能力増強のための投資は乏しいままとなっている。物品輸入に関しては、経済活動の脆弱化を反映して、輸入額が前年同月比10・6%減となり、すべての商品カテゴリーで収縮した。

 観光と政府部門の支出は景気の回復を支援する役割を果たし続けている。外国人観光客数は260万人を数えており、前月から増加した。欧州、中国を除くアジアからの観光客が増加した。またロシア人観光客数も回復傾向が続いている。一方、中国人観光客数は微減となった。

 政府部門の支出は前月に引き続き順調に推移している。物品・サービスの調達費が特に教育分野の機関で増加した。一方、予算内外の投資支出は依然として持続している。ただし、これより前に予算執行が大幅に加速していたため勢いは低下している。この月の投資の大半は運輸、灌漑分野となっている。政府収入は前年同月比で4・2%増加した。主に軽油の物品税率の引き上げによるところが大きい。いずれにしても経済活動全般を反映する付加価値税収と国際貿易ベースの税収は前年同期比で収縮している。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は前月に近似したマイナス1・05%で、世界市場の石油価格の低迷が理由となっている。生鮮食品、中でも野菜・果物の価格は旱魃の影響を受けたことで、やや上昇した。失業率は季節調整済みで0・9%と低位にとどまっている。農産物価格の下落と旱魃状況の影響を受けた農業セクターの労働力は非農業、特にサービス業にシフトしているが、その報酬はさほど高くはない。経常収支は21億㌦の黒字。輸入の減少による。他方、資本収支は28億㌦の赤字。預金引受金融機関の短期借入金の返済と、外国人投資家によるタイ証券の売り越しが理由となっている。この結果、国際収支尻は出超となった。


日付 : 2015年09月07日

By : 週刊タイ経済

登録