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政策金利据置きを決定 中銀の金融政策委員会 現状維持で影響注視 3会合連続

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は16日に開いた政策決定会合で、政策金利を年1・50%に据え置くことを全会一致で決定した。金利据置きは3会合連続となった。足元の景気は浮揚の兆しが見えず、インフレ率もマイナスを続けているものの、米国連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)が16、17日に開く政策決定会合で利上げを決定するかどうかが定かでない中、金融政策は現状維持が望ましいと判断した。

 MPCは、政策金利を引き下げる追加金融緩和を今、ここで決断した場合、バーツ相場に及ぼす影響が大きくなると見ている。外為市場を含めたマネーマーケット全般の動揺が激しくなる可能性があるため。グローバル・マネーマーケットは米利上げ観測と中国当局の人民元切り下げを受け、今年下半期に入ってからは動揺が一層激しくなっている。アジアの新興市場国では特にマレーシア・リンギッドとインドネシア・ルピアが急落しており、8月には両国通貨は前月比でそれぞれ8%、5%下げている。両国の中央銀行は自国通貨安の勢いを弱めるため、為替市場介入を続けており、その結果、両国の外貨準備高は8月にそれぞれ8・7%、2・1%減少した。外貨準備高の減少はキャピタル・アウトフローを誘発しかねず、不安定な情勢が続いている。タイはこれら2国に比べて影響が小さいものの、過去1か月間にバーツは2・4%減価し、外貨準備高も1・9%減少している。MPCが利下げに動けば、バーツ安が加速する可能性がある。中銀は、主要貿易相手でもあり、競合国でもある域内通貨の下落に連動したバーツ安を肯定的に捉えているものの、急落は避けたいところ。FOMCが今会合で利上げに踏み切るかどうかが不透明な中、金融政策は現状を維持するのが最も危険が少ない。

 今回、米国が利上げを見送ったとしても年内に10月末、12月の2会合を残しており、年内に利上げを決める可能性が高い。その場合、米国債利回りは上昇し、これに連動してタイの長期金利(国債利回り)も上昇することになり、政府や企業の金融コストは上昇することになる。また投資マネーが米国に流れることで、タイ国内マーケットの流動性も低下し、株式市場からの海外投資マネーの流出は株価の下押し圧力にもなる。バーツ相場も動揺が大きくなることは避けられそうにない。

 足元の景気は、浮揚のきっかけを掴めないでいるが、ここに来て財政政策の役割が増してきている。政府の財政出動による景気対策で今年残り期間の経済は下支えできそう。政策金利はすでに年1・50%まで下げており、利下げの余地はせいぜい0・25~0・50%とされるだけに、足元の景気下支え役を財政政策に委ねることで、MPCは景気が一段と冷え込むリスクに対処するための金融政策措置を温存することが可能になる。

 物品輸出は1~7月に前年同期比で4・7%収縮し、輸出依存度の高いタイ経済全体の下押し圧力になっているが、年の残り期間には、最近のバーツ安の効果が現れると期待されている。現在のバーツ相場は、昨年末時点に比べておよそ9%減価している。タイの物品輸出は、年の終わりにかけての時期が最も海外からの引き合いが増えるという季節性を有しているため、バーツ安が受注増につながるとの期待は大きい。またサービス輸出も、観光業が年末にかけハイシーズンを迎える。観光セクターもバーツ安の恩恵を受ける。


日付 : 2015年09月21日

By : 週刊タイ経済

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