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製糖業の自由化進展へ 砂糖工場新設解禁 新設30か所、増設16か所申請済み

 製糖業界の自由化により、タイの粗糖生産は近い将来急増する見通しになっている。タイのサトウキビ生産量は年間1億㌧を超え、粗糖生産量は約1000万㌧で、ブラジル、インド、中国に次ぐ規模となっている。工業省サトウキビ・砂糖委員会は、砂糖工場の新増設の規制を大幅に緩和する措置を8月に打ち出しており、同委事務局によれば8月17日以降の工場新増設の申請は新設が30件、増設が16件を数えている。

 政府はサトウキビ生産を奨励しており、原料サトウキビの供給増に合わせて砂糖工場も増える見通し。ただし砂糖の市況は悪化している。砂糖の国際市況は、11年に一時、1ポンドあたり30㌣近くまで高騰していたが、今年8月には同10㌣台まで下落している。このため、すべての新増設を許可するかどうかは不明で、サトウキビ・砂糖委員会事務局のソムサック・チャントラウォントーン事務局長は11月18日のサトウキビ・砂糖委員会の会議で結果が分かるだろうと語っている。

 砂糖工場の新設または増設許可についての工業省布告は8月17日付けで施行になっている。全国での砂糖工場の新設・移設を許可する内容で、既存の砂糖工場から直線距離で50㌔㍍以上離れていれば、新設することができると規定している。ただしサトウキビの調達では、少なくとも当該年度の圧搾量の50%を確保する計画を設けることとされ、工場周辺のサトウキビ農家との契約、農家に対する営農技術・金融支援が要求される。

 砂糖業界は規制緩和を歓迎する一方、一部の大手製糖グループは50㌔規制の緩和を求めていた。このため10月6日に開いた閣議では、新たに「サトウキビを原料とする工場の新増設についての工業省布告案」を原則認可し、既存の砂糖工場からの直線距離が50㌔㍍未満でも工場の新設を認めることにした。ただし新設される工場の圧搾能力は日量300㌧までに制限する。

 圧搾されたサトウキビは粗糖原料となるほか、結晶しない糖蜜(モラセス)はバイオガソリンや焼酎原料のエタノールに加工される。搾汁後の残渣のバガスは紙の原料やバイオマス発電の燃料、建築資材、家畜飼料などに用いられる。粗糖生産工程で生じる廃液もバイオガス発電の燃料に利用できる。製糖大手はエタノール工場やバイオマス発電所も併設することで収益性を高めており、設備増強の意欲は高い。

 ソムサック事務局長によれば、標準的な砂糖工場1か所の開発に必要な資金は約70億バーツ、設備増強に必要な資金は35億バーツ。新設申請が30か所、増設が16か所あることを考えると、合計投資予定額は2660億バーツに達する見通し。

 一方、15/16年度のサトウキビの暫定価格については、タイ・ケーン&シュガー・コーポレーション(TCSC)による粗糖輸出のクオータが決定されるのを待っているところ。ただしソムサック事務局長は、砂糖の市況が悪化しているため良い水準にはならないとしている。


日付 : 2015年10月12日

By : 週刊タイ経済

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