ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

12月初めにも態度表明へ タイ政府 TPP、RCEPへの方針

 タイ政府は12月初めにも開く首相を議長とする国際貿易開発委員会の会合で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に対するタイの態度を決定する。タイはこの10月に12の参加国が大筋合意に達したTPPに参加していないが、産業界は参加を望んでいる。これまで政府は、参加の是非についてメリットとデメリットを慎重に見極めてから判断するとしてきた。タイはASEAN加盟国としてRCEPの交渉に参加しているが、2国間自由貿易協定を貿易戦略の柱としてきたため受身の態度に終始してきた。しかしここへ来て世界の貿易構造の変化やタイの輸出商品の競争力の低下を受け、物品輸出は3年連続で収縮する見通しで、危機感を募らせている。
 スウィット・メーシンシー商業副大臣は1日、12月9日に予定されている会議で、TPPとRCEPに対するタイの公式なスタンスを決定すると語った。同副大臣によれば、プラユット首相は「首相・CEO対話」と題したプログラムで、企業のトップとの意見交換の場を設けており、情報収集と産業界からの提案をとりまとめているところ。国際貿易開発委員会の会合では、民間部門から上がってきた情報を整理し、向こう5年間の貿易戦略の策定の判断材料にする。首相は近く、宝石・ジュエリー、食品、ウェルネス&メディカル分野の事業者を呼んで首相・CEO対話を開催予定。また商業省は、TPPに参加する場合のメリットとデメリットの研究も進めており、12月の会合で報告することにしている。
 タイ経済は物品輸出への依存度が極めて高く、世界経済の変調が景気を左右する経済構造になっている。物品輸出額はGDPの7割に相当している。輸出は今後も引き続きタイ経済の牽引役としての役割を維持するものの、新たな貿易戦略では物品輸出のほかにサービス輸出の強化を目指す考え。サービス輸出は現在GDPの30%程度となっているが、これを今後の5年間で50%まで引き上げることを目標に据える。スウィット副大臣は、タイはサービス輸出で高いポテンシャルを有していると述べ、物品輸出が過去のような大幅増を期待できなくなった今、サービス輸出の強化が望まれるとしている。
 商業省発表による9月のドル建て物品輸出額は前年同月比5・51%減。1~9月では前年同期比4・98%減となっている。物品輸出の不振は、世界経済の低成長、中でも中国経済の減速によるところが大きいが、同副大臣はタイの輸出商品の競争力の低下という構造的問題も潜んでいると指摘している。
 産業界はベトナムやマレーシアが参加しているTPPにタイも参加しないと競争で遅れをとるとして、参加を求めている。また、タイがTPPに参加しないのであれば、影響を軽減するためにもRCEPの早期実現に向けてイニシアチブを発揮すべきだと進言している。RCEPはASEAN10か国+6か国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)の枠組による広域経済連携で、12年の交渉立ち上げの宣言以来、交渉会合が10回、閣僚会合が3回開催されている。



日付 : 2015年11月09日

By : 週刊タイ経済

登録