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経済統合へ新段階 AECが年末発足 アセアン首脳が宣言

 クアラルンプールで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は最終日の22日、「クアラルンプール宣言」に署名して閉幕した。年末の12月31日に域内関税の撤廃や人、物、サービスなどの移動の自由化を目指すアセアン経済共同体(AEC)を発足させるとともに、新しい次の10年間に加盟各国が目指す共通の目標をうたったアセアン共同体ビジョン2025などの文書を採択した。

 AECにより、アセアンは域内総人口約6億人の大きな市場として、国境による障壁を極力取り払う自由化で持続的な経済成長を目指す。しかし域内各国間の経済格差も大きく、特にサービス、人の移動の自由化交渉は遅れているのが実態で、各国間で今後、意思統一を図らなけらばならない課題は多い。

10か国首脳はまず、アセアン共同体(AC)の創設を宣言。ACは①政治・安保共同体(APSC)②経済共同体(AEC)③社会文化共同体(ASCC)の3つの柱で構成され、2025年までの10年間にさらなる統合に向けてそれぞれの分野で努力を続ける、としている。

 この中でACの中心軸とされるAECについても、これまでの交渉で、域内関税の撤廃については概ね完了したが、通関手続きの簡素化、サービス業、金融機関の進出に対する規制緩和については各国の立場が異なり、一致の見通しはまだない。専門職の移動自由化についても、医師や建築士など8つの分野だけで、自由化対象の拡大はこれから。そして見落とせないのが、各国が自国産業保護のために設けている非関税障壁の存在だ。

 一方、中国が3年前に提唱し、アセアンとの協議が進められてきた東アジア地域包括経済連携(RCEP)については、会議で宣言をまとめることは見送った。

 アセアンを構成する10か国は発展段階、言語、政治体制などの面で多様性に富み、これまでも意見調整で苦慮する面が多かった。そして、各国が抱えるそれぞれの内政問題も複雑で、共同体の連携の足かせとなる要素がますます多くなっている。それに加えて、この地域で存在感を増す中国の圧力も共同体としてのアセアンの前途を左右しかねないほどの影響力を持つ、

 開催国マレーシアのナジブ・ラザク首相は「アセアンは発足から48年を迎えて、歴史的に重要な瞬間を迎えた」と閉会式で述べた。その言葉とは裏腹に、今後のアセアンはかつて1980年代から90年代にかけての「世界の成長センター」「発展途上地域の優等生」と称賛を集めていた時期とは対照的に「共同体としての一体化」に苦慮する厳しい時代に入ると予測する専門家も多い。


日付 : 2015年11月30日

By : 週刊タイ経済

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