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回復のテンポ上がらず 民間消費上向くも力強さ欠く 10月の景気 タイ中銀発表の経済金融報告

 タイ中央銀行が11月30日に発表した経済金融報告によれば、10月の景気は引き続き緩やかに回復している。政府支出が拡大し、民間消費は生活必需品やサービスの支出が牽引する形で伸びている。外国人観光客数も上向いた。ただし物品輸出は中国とASEAN経済の減速から引き続き収縮しており、その結果、工業生産と民間投資は低位にとどまっている。製造業の設備稼働率も大半が底ばいしている。中銀は景気の緩やかな回復基調が持続していることを強調しているが、回復のテンポは上がっていない。

 10月に民間消費は前月から上向いた。非農業部門の購買力が幾分上向いたことと、景気の先行きに対する消費者の信頼感の改善が寄与している。ただし10月の民間消費指数は前年同月比2・2%増にとどまり、9月の3・0%増を下回った。

 サプライサイドでは、10月に農業所得は季節調整済みの前月比で上向いた。雨季の遅れでコメの収穫がこの月までずれ込んだことが理由だが、前年同月比では農業生産は4・8%収縮している。旱魃がコメの栽培に影響を及ぼしている。また天然ゴムの価格も低位にとどまり、農家の生産意欲を削いでいる。農産物価格は前年同月比で6・1%下落した。この結果、農業所得は前年同月比では10・5%収縮した。

 10月の工業生産は前月から僅かに減少し、前年同月比で収縮した。燃料・化学品を除く原材料の輸入額が収縮し、季節調整済みの設備稼働率は前月の61・4%から60・4%に低下した。電子部品は受注が減少し、在庫が高水準にあることで生産が減少した。ゴム/プラスチックは前月にプラスチック袋の生産が加速していた反動から減少した。コンクリート製品の生産は国内景気の回復の遅れ、特に地方での建材の購買力の低下から減少した。

 ただし一部の工業の生産は前月から拡大している。自動車は、16年1月からの物品税の改定を前にした国内市場の駆け込み需要から生産が上向いた。またエコカー、新型ピックアップ車の輸出向け生産も増えた。電化製品ではエアコンの生産が輸出増で増加した。食品・飲料分野では日本向け輸出が好調な鶏肉の生産が増えている。

 サービス業は前月比横ばい。ビジネス・サービスは引き続き拡大し、運輸業は格安航空の成長からわずかに上向いた。一方で、通信業は成長が鈍化した。不動産サービスは顧客の購入需要の鈍化の影響を受けている。政府が不動産市場活性化策の導入をアナウンスしたため、買い控えも生じた。流通業は横ばいだった。

 不動産業はバンコク首都圏の市場が引き続き減速している。消費者が政府の刺激策の発表を待ったためで、バンコク首都圏の商業銀行による新規住宅ローンの実行額は前月比で5%減少した。主にコンドミニアムの市場が鈍化している。ただし供給サイドは、前月比で増加している。新規の分譲戸数が23%増を記録している。


日付 : 2015年12月07日

By : 週刊タイ経済

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