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金利据え置きへ 米国動向を注視 あす政策決定会合 タイ中銀の金融政策委

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は、16日に開く政策決定会合で政策金利の据置きを決定するとの見方が支配的だ。米国連邦準備制度理事会(FRB)も時を同じくして連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定会合を開く。ただしMPCの会合は、FOMCの決定よりもおよそ12時間前に開かれるため、米国が利上げに踏み切るかどうかは分からない。こうした事情から、タイのマネーマーケットはMPCが金融政策の現状維持を決めると見ている。
 多くのエコノミストは、MPCが景気浮揚のため、年内にもう一段の利下げを決定するのではないかと予測していたが、ここに来て事業者や消費者の信頼感に改善の傾向が出てきており、追加利下げの必要性は低下している。8月の改造内閣の発足後、ソムキット副首相率いる経済チームが、矢継ぎ早に景気対策を打ち出したことが背景にある。家計債務が高止まりしているため、金融の安定を維持したい中銀としては、できることなら追加利下げは回避したいというのが本音だ。
 15年第3四半期(7~9月)のGDPは前年同期比で2・9%増となり、4~6月期の2・8%増を上回ったほか、季節調整済みの前四半期比でも1・0%増を記録しており、景気は緩やかながらも着実に上向いている。観光業と政府支出が景気を牽引している一方、民間消費と民間投資はなお脆弱で、物品輸出も収縮を続けており、これが景気回復のペースが上がってこない理由になっている。
 政策金利は最も低い水準で年1・25%。タイの金融市場には、これ以上の利下げは余程の事がない限り想定できないという共通認識がある。現在の政策金利が年1・50%であることから、下げ余地はせいぜい0・25%幅に過ぎないと見られている。したがって中銀は、この下げ余地を国内政治不安などの事態のため温存したいと考えているとされる。中銀幹部の最近の談話も、一層の金融緩和がタイ経済の回復に寄与する効果はさほど大きくなく、むしろ金融の安定に及ぼすリスクが懸念されるとして、現状での追加利下げには否定的な見解を示していた。
 政府の大規模運輸インフラ・プロジェクトは、いくつかが16年中に建設着工になる見通しで、16年には内需の回復が期待できる。15年の経済成長率は3%増に届かない可能性があるものの、16年の成長率は15年に比べて加速する見通しとなっている。
 民間消費は、個人向け貸付の成長率の鈍化や家計債務問題から、回復のペースは緩やかなものにとどまりそうだが、原油安や低インフレ率が消費を下支えする。民間投資は、政府投資支出の拡大や、投資刺激策の効果により、16年は成長率が加速すると期待されている。
 16年の景気は15年に比べると良くなる見通しだが、引き続き潜在成長率を下回りそう。金融政策のスタンスは緩和を維持する必要があり、少なくとも来年上半期中は、MPCが政策金利を1・50%の水準で据え置くとの見方が多い。



日付 : 2015年12月21日

By : 週刊タイ経済

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