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AEC あす発足 自由化 なお不完全 サービス・貿易・投資…

 アセアン加盟10か国の経済を統合するアセアン経済共同体(AEC)が31日に発足する。人口6億人を超える経済圏が新たに誕生することになるが、単一市場形成の試みはまだ始まったばかり。ヒト・モノ・カネの動きの完全な自由化が実現するのかどうか。「一つのビジョン、一つのアイデンティティ、一つの共同体」というアセアンの標語の実現に向けた加盟国の取り組みが注目される。

 アセアンの総人口は6億人を超え、GDPは2兆ドルを上回る。域内総貿易額は2・1兆ドルとGDPの合計を上回っている。AECは、03年に創設を目指すことで合意したアセアン共同体の一つで、07年のアセアン首脳会議で、15年までに共同体を発足させるとした「セブ宣言」を出している。この実現のため「アセアン共同体ロードマップ」が設けられた。

 AECの目指すところは、①単一市場と生産基地②競争力のある経済地域③公平な経済発展④グローバル経済への統合で、AECの実現に向け、物品、サービス、投資分野の自由化を進めている。このうち物品貿易に関しては、92年にアセアン自由貿易地域(AFTA)が創設され、関税の引き下げが実現している。原加盟国はすでにほとんどの物品の域内関税を撤廃済みで、後発加盟国のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)も15年末までに撤廃する。

 AECでは、AFTAには盛り込まれていなかった貿易の円滑化、サービス貿易の自由化、投資の自由化・円滑化、インフラの整備、標準規格、相互認証、格差是正のための域内協力も進める。サービス分野については「サービスに関する枠組み協定」に沿って、段階的な自由化が進められている。投資についても「投資に関する枠組み協定」に沿って自由化や投資分野の協力を進めてきた。

 アセアンはAECの17の中核要素と176の優先事業をリストアップするとともに、加盟国にその実行を義務付けたものの、経済格差や政治体制の違い、合意形成プロセスの持つ制約など障害も多い。

 11月のアセアン首脳会議でAECの発足を宣言するとともに、サービス・投資分野や非関税障壁など、積み残した課題を今後10年間で解決していくとした「アセアン2025宣言」を採択した。外資規制などの非関税障壁については、撤廃に向けた取り組みはまだ道半ば。AECによる経済統合はなお不完全ではあるものの、「アセアン2025宣言」は、単一市場に向けて着実な行動継続をアピールしている。

 アセアンへの海外からの投資の流入額は、13年に中国を抜いて世界最高を記録したことに反映されるように、域内経済協力が目に見えた成果を上げていることも事実で、AEC発足後「ポスト2015」の今後10年の取り組みが注目される。

◇AECの4つの柱と17の中核要素
単一市場と生産基地
 ①物品の自由な移動②サービスの自由な移動③投資の自由な移動④資本の自由な移動⑤熟練労働者の自由な移動⑥経済統合における重要分野⑦食品・農業・林業
競争力のある経済地域
 ①競争政策②消費者保護③知的所有権④インフラ開発⑤税制⑥電子商取引
公平な経済発展
 ①中小企業開発②アセアン統合イニシアチブ
グローバル経済への統合
 ①対外経済関係への一貫したアプローチ②グローバル・サプライチェーンへの参加促進


日付 : 2016年01月04日

By : 週刊タイ経済

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