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11月の月例経済金融報告 タイ中央銀行の12月30日の発表より

 15年11月に景気は引き続き緩やかに回復している。国内支出が支援材料で、政府部門の支出が続いていることに加え、民間支出も上向いた。16年初めからの物品税率改定を前にした自動車の駆け込み需要という一時的なプラス材料が寄与している。また観光業は順調に回復している。

 しかしながら、景気の回復は、物品輸出の収縮という下押し材料の影響を受けている。中国経済とアセアン経済の減速が理由で、また世界市場の石油価格が底ばいしていることが、一部の輸出商品の価格の下げ圧力になっている。このため工業生産と民間投資は依然として低位にとどまっている。

 経済安定性については、一般インフレ率は引き続きマイナスとなっている。エネルギー価格の下落による。失業率は前月に近似した水準で横ばい。一方、経常収支は黒字幅が拡大した。輸入の減少が続いていることが理由となっている。工業部門の生産が不振を極めていることに一致したものとなっている。

 11月の景気動向の詳細は次のとおり。

 政府支出は引き続き経済の重要な推進力となっている。この月の政府支出は前年同月比で17・0%増加した。経常的経費と投資的経費の双方で予算が順調に執行されている。投資予算の執行の多くは、運輸、灌漑分野のプロジェクトとなっている。このほかに国営企業の投資も上向いた。特にエネルギー部門の投資が伸びている。一方、税収は前年同月比24・0%増となった。国内支出が回復に向かい始めていることを反映したものだが、大幅増は、自動車の物品税収の増加という一時的な要因によるところも大きい。

 民間消費の指標に関しては、4か月連続で上向いている。農業セクターの家計の所得は依然として低落しているが、非農業部門の家計の所得は増加している。また石油価格が下落し続けていることも家計の購買力の底上げに寄与している。消費者の信頼感が上向いていることも合わせて、非耐久財の消費とサービス・カテゴリーの支出は伸び続けている。サービス・セクター、特に運輸業と卸・小売業の成長とも一致したものとなっている。耐久財の消費は前月比で2・4%増となった。ただし、その一部は物品税の改定を前にした自動車の駆け込み需要という一時的な要因によるものとなっている。全体として耐久財の消費は依然として低迷しており、16年初めの自動車の販売台数は物品税率改定の影響から低迷するものと予測される。

 物品輸出額は前年同月比で6・6%減となった。また前月比でも収縮している。数量と価格の双方が収縮している。中国やアセアンといった主要貿易相手国の経済の減速が響いており、先進諸国(G3)経済は上向く傾向にあるものの、これを穴埋めするには至っていない。また石油関連製品の輸出価格は、世界市場の石油価格下落の影響を受けている。ただし、一部の物品の輸出は上向いている。例えば、自動車の輸出は新モデルの導入と欧州向けエコカー輸出の好調から伸びている。電子部品、特に新型のスマートフォン向けの部品の輸出も伸びている。

 輸出が低迷しているため工業生産は引き続き低位にとどまっている。ただし自動車は、物品税率の改定前に納車を急ぐ目的から生産が加速している。一方、民間投資の指標は一部で上向いているが、自動車の駆け込み需要という一時的な要因を取り除けば、投資は、4Gネットワーク拡張投資を急いでいる通信などのサービス・セクター、代替エネルギーなど一部の分野に限られている。設備能力が十分な水準にある製造業の投資はなお低位にとどまっている。

 物品輸入額は前年同月比で8・5%収縮した。世界市場の石油価格の下落が主因で、燃料の輸入が大幅に収縮した。一方、燃料を除く原材料・中間材の輸入は、輸出の不振にともない収縮した。しかしながら資本財の輸入は上向いている。一部の業界で投資が上向いたことによる。また消費財の輸入は主に外国人観光客の回復にともないプラス成長に転じた。

 観光セクターは順調に回復している。これを反映して外国人観光客数は2か月連続で前月比増加した。これより前は、バンコクでの爆弾事件を受け、2か月連続で前月比収縮していた。この月の外国人観光客数は前月比で2・5%増となった。特に中国を初めとする東アジアからの観光客が増えている。ただしオーストラリア、ロシア、インドネシア、マレーシアなど多くの国からの観光客はまだ回復していない。商品市況の軟化で、これらの国の経済が低迷しているからである。

 経済安定性に関しては、コア・インフレ率は低位にとどまっている。国内需要の回復が緩やかなペースにとどまっていることが理由。一方、一般インフレ率は0・97%減となり、マイナス・インフレが続いている。エネルギー価格の下落が主因。失業率は前月に近似した水準で横ばい。一方、経常収支は30億㌦の黒字となり、黒字幅が拡大した。輸入の減少が続いていることが理由となっている。ネット・キャピタルフローはこの月に純流出となった。タイ人投資家による海外証券投資と直接投資による流出に加え、近い将来の米国の政策金利の引き上げに関する市場の観測を理由とした外国人投資家による債券市場と株式市場での売り越しが理由。


日付 : 2016年01月04日

By : 週刊タイ経済

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