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最新の月例経済金融報告 タイ中銀の3月31日の発表より

 16年2月のタイ経済は前月から横ばい。観光業は成長が続き、政府支出も投資支出は執行が加速していたこれより前の時期に比べると幾分勢いが衰えているとはいえ、引き続き順調に拡大している。一方で民間消費は全体として横ばい。耐久財の消費は、自動車の物品税改定前の駆け込み需要の反動もあって低迷した。しかしその他の商品とサービスの支出は、非農業部門の家計の所得がやや伸びていることに一致して引き続き拡大している。輸出額は金地金を除けば収縮している。主要貿易相手国である中国とアセアンの景気の減速が続いていることに加え、輸出価格も石油価格に連動して依然として下落している。このため生産と民間投資は低い水準にとどまっている。

 経済安定性については、一般インフレ率は引き続きマイナスとなっている。石油価格の下落による。しかしコア・インフレ率はわずかに上昇した。タバコの物品税の増税の影響があった。失業率は引き続き低位にとどまっている。工業部門の雇用がやや減少したが、労働力は雇用が順調に拡大しているサービス業にシフトすることができている。この四半期に経常収支は大幅黒字となった。金地金の輸出額が高水準となった一方で、輸入の収縮が続いていることが理由。

 2月の景気動向の詳細は次のとおり。

 観光業は高い伸びを示し、回復の兆候は広範囲に及んでいる。この月の外国人観光客数は前年同月比で16・0%増加した。中国人観光客が成長を続けている。またその他の国からの観光客も成長傾向が鮮明になっている。

 政府支出は引き続き経済の下支えに寄与している。特に物品・サービスの調達のための支出と公務員給与の改定が寄与している。さらには国営企業の投資も順調に進んでいる。しかしながら中央政府の投資支出はやや鈍化した。これより前の期に執行が加速していたことによる。政府収入は国営企業の国庫納付金と物品税収増にともない増加した。

 民間消費の指標に関しては、前月から横ばいとなった。非農業部門の家計の所得がやや拡大していることにより、サービス支出と非耐久財の消費は勢いを保っている。しかしながら耐久財の消費は収縮に転じた。物品税率の引き上げ前の自動車の購入加速という一時的な要因が尽きたことによる。加えて農業所得の収縮、特に旱魃の影響と農産物価格の底ばいにより消費者の購買力が削がれている。また家計債務も依然として高水準にとどまっており、金融機関は個人向けの与信に慎重になっている。

 物品輸出額は前年同月比で6・2%増となった。輸出がプラス成長となるのは14年12月以来。金相場の急騰により利益確定のための金地金の輸出が急増したことが寄与したもので、金地金を除けば輸出額は前年同月比で4・0%減少している。主要貿易相手国景気の減速、タイの競争力が一部の商品でなお制約を抱えていることや、世界市場の原油価格に連動して多くの商品の輸出価格が前年よりも低い水準にとどまっていることを理由に、ほぼすべての商品分野で収縮している。このほかに製油所のメンテナンスによる停止で石油製品の輸出が減少した。しかしながら一部の商品の輸出は伸びている。例えば砂糖の輸出は、市場が旱魃問題により世界の砂糖供給が細ると観測したことにともない拡大した。宝石・ジュエリーは香港での大規模フェアの準備のため、輸出が伸びた。

 物品輸入額は前年同月比で16・3%収縮した。全てのカテゴリーで収縮している。燃料を除く原材料・中間財の輸入は物品輸出の低迷にともない収縮を続けている。燃料の輸入は石油価格の下落にともない引き続き収縮している。輸入の収縮は民間投資の低迷に一致したもの。工業部門の設備稼働率は平均で64・7%で、大半の企業が生産能力拡張のための投資の必要を感じていない。例外は通信事業で、4Gに対応するための投資が伸びている。また代替エネルギー事業も投資が続いている。企業部門の資金調達は、企業向け融資と社債発行を通じた調達の双方で鈍化している。

 工業生産は前月からわずかに改善したが、全体としては需要回復の遅れ、特に外需の不振から低い水準にとどまっている。ただし一部の商品の生産は特殊要因から上向いている。例えば天然ゴム加工品の生産はタイ、マレーシア、インドネシア間の天然ゴム協力での供給削減の決議を前に加速した。パイナップル缶詰の生産は原料の増加が寄与した。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率はマイナス0・50%となった。主にエネルギー関連商品の価格下落による。一方で、コア・インフレ率は幾分上昇した。デマンド・プルの圧力はなお小さいものの、タバコの物品税が2月初めより引き上げになったことが寄与している。失業率は前月から小幅上昇した。工業部門の雇用が減少したことによる。ただし建設業やサービス業の雇用は順調に拡大しており、労働力の一部はこうした部門にシフトしているため、非農業部門の家計の所得に対する影響はさほど大きくはない。

 対外セクターでは、経常収支は74億㌦の黒字となった。金地金の輸出増で輸出額が増加したことに加え、観光収入が好調に推移した。一方で物品輸入額は引き続き低い水準にとどまっている。キャピタルフローは4億㌦のネット・アウトフローに転じた。タイの企業部門の海外直接投資とタイの輸出業者による貿易信用が主な理由となっている。


日付 : 2016年04月04日

By : 週刊タイ経済

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