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最新の月例経済金融報告 タイ中銀 5月31日の発表より

 16年4月のタイ経済は緩やかに拡大した。推進力はサービス業で、製造業はなお低い伸びにとどまっている。物品輸出が主要貿易相手国経済に沿って低迷している。加えて国内の購買力も旱魃の影響を受けている。そしてこれが民間投資にも影響を及ぼし、回復の兆しが見られない状態が続いている。政府支出は前月に大幅に加速していた反動から勢いが低下した。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は生鮮食品と石油価格の上昇から僅かながらもプラス値に転じた。失業率は前月から横ばいだった。一方、経常収支は輸入額が低位にとどまっていることと観光収入の順調な増加から黒字となっている。

 4月の景気動向の詳細は次のとおり。

 観光業は経済の重要な推進力であり続けている。この月の外国人観光客数は前年同月比で9・8%増加した。格安航空会社の国際線の拡張による恩恵を受けたことが一因。観光業が成長している結果、関連するサービス業も小売業や運輸業などで順調に拡大している。

 工業生産は前年同月からわずかに上向いた。主要工業では自動車の生産が上向いた。ピックアップトラック派生SUVの新モデルが人気になったことに加え、前年同期が大手自動車メーカーの生産ラインの変更期にあったことで生産台数が少なくなっていたローベース効果が理由。このほかに電化製品の生産も拡大した。特に猛暑によりエアコンの生産が伸びた。また石油生産は、前月のメンテナンスによる製油所の運転休止明けで増加に転じた。石油価格がなお低位にとどまっていることで、特に国内での石油消費需要が伸びている。しかしながら輸出向け工業は全体としてなお芳しくない。中国や域内諸国などの主要貿易相手国の景気に一致したもので、加えて一部の工業は、国内要因と世界貿易構造の変化による構造的な制約に直面し続けている。

 物品輸出額はこの月に前年同月比で7・6%減と大幅な収縮に転じた。貿易相手国、特に中国とアセアン経済の回復の遅れから多くの商品群で収縮した。加えて金地金輸出やブラジル向けの石油採掘のための機械輸出と言ったこれまでの時期の一時的な要素も尽きた。このほかに自動車部品の日本向け輸出が収縮した。日本国内のいくつかの自動車工場が熊本地震で生産を中断したことが理由である。いずれにしても電化製品のアセアン諸国向け輸出は順調に伸びている。特に猛暑のためエアコンの輸出が増えた。またベトナムでの不動産部門の順調な拡大から同国市場での需要も伸びた。

 国内需要面では、民間消費の指標は前月からほぼ横ばい。非耐久財の支出は拡大する方向にあるが、家計は支出に慎重になっている。消費者の購買力と信頼感が脆弱なことが一因である。加えて農業所得は、天然ゴム価格の反発により前月からやや上向いたとは言え、全体としては旱魃状況の影響から低位にとどまっている。このため耐久財の支出は依然として前月から収縮し、前年の同期を下回る水準となっている。

 政府支出による推進力はやや弱化しているものの引き続き景気を下支えしている。予算内外の投資支出は、これより前の時期に運輸・灌漑分野などで大幅に執行が加速していた反動から減速した。しかしながら移転金を除く形状的経費は公務員給与の引き上げにともない伸びている。

 物品輸入額は前年同月比で13・4%収縮した。すべての商品群で収縮した。中間財と原材料の輸入は、輸出の低迷と国内需要の回復の遅れによって収縮した。一方、資本財の輸入も民間投資に反映されるように収縮した。特に設備投資はまだ明確には回復していない。というのも製造業の設備能力がなお十分な水準にあるからである。これに一致して企業部門の資金調達はこの月にやや改善したものの、依然として低位にとどまっている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は0・07%増となり、僅かにプラスとなった。生鮮食品と石油価格の上昇による。失業率は前月から横ばい。不完全雇用が特に農業部門においてわずかに増加する傾向にある。経常収支は32億㌦の黒字。観光収入が順調に伸びている。また輸入額はなお低位にとどまっている。一方、資本収支は5億㌦の純流出となった。外国人投資家の証券売り、預金引き受け機関の満期を迎えた短期借入金の返済とタイ企業の海外直接投資が理由。


日付 : 2016年06月06日

By : 週刊タイ経済

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