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タイ中銀の月例経済金融報告 7月29日の発表より

 16年6月のタイ経済は前月からやや減速した。政府支出は引き続き順調に拡大し、観光業も成長が続いているが、この月には季節調整済みの外国人観光客数がやや減少した。ただし一時的な要因によるものとなっている。民間消費は小幅減少した。特に自動車の販売台数は、前月に販促活動や新モデルの発表で加速していた反動から減少した。農業部門と非農業部門の双方の家計の購買力はまだ回復していない。他方、金地金を除いた物品輸出は引き続き低迷している。貿易相手国の景気回復の遅れと構造的な問題が依然として残っていることが理由。その結果、民間部門の生産と投資は低位で横ばいとなっている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は伸びがやや鈍化した。旱魃問題の収束で生鮮食品の物価が下落したことによる。失業率は前月から横ばい。一方、経常収支は輸入が低迷していることから黒字基調が続いている。

 6月の景気動向の詳細は次のとおり。

 観光業は引き続き拡大した。6月の外国人観光客数は前年同月比で7・2%増加した。ただし季節調整済みの前月比では一時的な要因から減少した。特にマレーシア、インドネシア、中東からの観光客数が細った。ラマダン(断食月)が理由。いずれにしても中国からの観光客は2か月連続での収縮から上向きに転じた。観光業の順調な拡大は関連するサービス業の成長にも寄与している。

 民間消費は前月から小幅低下した。自動車などの耐久財の消費が収縮した。前月に販促活動や新モデルの投入で販売が加速していた反動によるもの。一方、消費財の支出は横ばいだった。農業部門と非農業部門の家計の購買力がまだ回復していないことに一致したもので、農業所得は総じて上向きつつあるものの、一部作物の生産は旱魃による影響を引きずっている。非農業部門の所得は緩やかに拡大しており、消費支出に一定程度寄与している。

 物品輸出額は6月に前年同月比で1・9%増となった。金地金の輸出額が増加した結果であり、英国のEU離脱の国民投票結果を受けた世界市場の価格動向に沿ったものとなっている。いずれにしても金地金を除けば、輸出額は1・6%収縮した。ただし収縮幅は前月を下回っている。昨年の自動車、ゴム製品の輸出の水準が低かったローベース効果が一因。多くの製品の輸出額は引き続き収縮している。貿易相手国経済の回復が遅れていることやタイの物品輸出の構造的問題が理由。また石油関連製品の輸出価格も引き続き下落している。いずれにしてもエアコン、電化製品部品などの輸出は引き続き拡大している。また集積回路・同部品の輸出はプラスに転じた。貿易相手国が9月発売のスマートフォンの新機種の製造準備のために輸入を急いだことが背景にある。金地金を除いた物品輸出の低迷と民間消費の減速の結果、この月の工業生産もまた伸びが減速した。

 物品輸入額は前年同月比で9・3%収縮した。ただし金地金を除いた輸入額は9・7%収縮しており、減少幅が拡大している。ほぼすべての製品群で輸入が収縮した。特に中間財・原材料の輸入が依然として収縮している。世界市場の石油価格が前年同月を下回っていることが主な理由。また前月に引き続き製油所のメンテナンスによる運転休止の影響で燃料輸入も減少した。一方、機械の輸入も引き続き収縮した。民間投資が低位横ばいしていることに一致したもの。

 政府支出は順調で、タイ経済の主要な推進力になっている。経常支出は高い伸びを記録した。プラチャーラット指針に基づく草の根経済推進のための村落の潜在能力底上げ事業の支出はこの月より引き出しが始まった。また公務員給与の引き上げも寄与している。他方、これより前にやや減退していた投資支出は2か月連続で拡大基調となった。特に運輸・灌漑分野の投資が伸びている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は干ばつ問題の収束による生鮮食品物価の下落から小幅減速した。失業率は前月から横ばい。経常収支は30億㌦の黒字。輸入が低位にとどまっている。一方、資本収支は純流出となった。タイ企業の海外直接投資増が主因となっている。ただし域内の投資動向に連動して海外投資マネーの株式市場と債券市場への流入は続いている。

 第2四半期(4~6月)に、景気は緩やかに拡大している。政府支出の増加と観光業の成長が牽引している。民間消費は上向いた。干ばつ問題の収束から農業部門の家計の購買力が増加に転じたことと信頼感の改善が寄与している。いずれにしても金地金を除いた物品輸出額は依然として収縮している。貿易相手国経済の回復が遅れていることと、構造的問題、さらには世界市場の原油価格に沿って輸出価格がなお下落していることが理由。その結果、工業生産や民間投資は低迷を続けている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は干ばつの影響による生鮮食品物価の上昇からプラス値に戻している。失業率は農業部門における雇用の減少からやや上昇した。経常収支は観光収入増と輸入が低位にとどまっていることを背景に黒字が続いている。


日付 : 2016年08月01日

By : 週刊タイ経済

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