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タイ中銀の月例経済金融報告 10月31日の発表より

 16年9月のタイ経済は前月に比べて上向いた。政府支出が引き続き順調に拡大し、経済の主要な牽引車になっている。加えて輸出額も多くの商品で上向いており、ゼロダラー・ツアー取締の影響を受け始めている観光業を穴埋めする役割を担っている。民間投資は一部の業種で幾分上向いた。これを反映して輸出向け製造業で資本財輸入が増えている。一方、民間消費も拡大しているが、伸びはこれまでに比べて鈍化した。非耐久財の支出が鈍っている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は国内燃油価格に沿って上昇した。失業率は低水準にとどまり続けている。他方、経常収支は輸出額が増加する一方で輸入額が依然として低水準にとどまっていることにともなう貿易収支の黒字を受け、黒字基調が続いている。貿易黒字はこの月のサービス・所得・移転収支の赤字を穴埋めした。

 9月の景気動向の詳細は次のとおり。

 政府支出は、経常的経費と投資的経費の双方で引き続き順調に増えている。特に人件費と運輸交通・治水分野のプロジェクトの支出が伸びている。政府の収入は前年同期比で増加した。経済活動が上向いてきたことを反映し、主に税収が伸びている。非税収は前年同期比で収縮した。ハイベース効果によるもので、前年同期に政府が一部の国営企業からの国庫納付を急がせたことが理由。

 物品輸出額は2か月連続でプラス成長となり、9月には前年同月比で3・5%増となった。金地金の輸出額を除けば輸出額は3・9%増加している。多くの商品の輸出が増えている。電子製品は新型スマートフォンの生産による好影響を受けた。また電化製品は、CLMV諸国、欧州、米国などの市場での需要増に備えてメーカーが生産を増強した。また輸出額が減少している製品群においても、原油相場に連動して収縮幅は縮小した。輸出が上向いていることに従って工業生産もまた上向いている。

 民間投資は全体として前年同期に比べて変わらずとなっているが、前月比では幾分上向いた。輸出向け製造業の資本財輸入額の増加に反映されるように、工業部門の投資が伸びている。このほか代替エネルギー分野の投資は持続している。特に電力は政府部門の支援政策の恩恵を受けている。いずれにしても建設投資は全体として前月並み。政府部門の投資持続が民間部門の建設投資を生んでいるものの、その一方で、政府の支援措置が満了したことによる需要の減少で不動産市場が減速している。

 物品輸入額は前年同月比で1・7%増だった。金地金を除けば輸入額は0・3%の微増となっている。多くの商品群で輸入は増加した、資本財は変圧器や発電機の輸入が拡大している。代替エネルギー事業の投資が持続していることを反映したもの。また電子・電機工業でも輸出が上向く傾向にあることで機械の輸入が増えている。同様に原材料・中間財の輸入もこれら製品の生産増にともない増えている。

 民間消費は前年同月比での伸び率がこれより前の時期に比べて鈍化している。消費財の支出が鈍化している。消費を支援する材料がまだ堅固になっていないことに一致したもので、非農業部門の所得が横ばいで推移していることに反映されている。加えて消費者の信頼感は、新憲法案の国民投票結果と第2四半期のGDP統計が市場の予測よりも良かったことの好影響を受けた前月に比べると幾分低下している。

 観光業は、外国人観光客数が前年同月比で18・3%増加した。15年8月のバンコクでの爆弾事件により比較ベースとなる前年同月の数値が低くなっていたことが理由。季節要因を取り除いた前月比で見ると外国人観光客数は2・1%減っている。特に中国人観光客数がゼロダラー・ツアー取締による影響を受けている。前月に生じた南部7県での連続爆弾事件の影響は軽微となっている。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は前月からわずかに上昇した。国内の燃油価格に連動したもの。失業率は低水準にとどまり続けている。雇用は食品工業や電子工業で増えている。経常収支は輸出額が上向いた一方で輸入額が依然として低位にとどまっていることによる貿易収支の黒字を受けて黒字となった貿易黒字は、観光収入の減少に加えてタイの外資系企業の利益・配当の本国送金時期に重なったことよるサービス・所得・移転収支の赤字を打ち消している。資本移動は純流出となった。企業グループ内の借入金の返済、さらにはタイ企業部門の海外直接投資、タイ人投資家の証券投資による流出があった。いずれにしても外国人投資家の証券投資は流入を続けている。

 第3四半期に景気は、政府支出と民間消費の拡大が続いたことにより拡大した。消費者の信頼感が主に国内要因から前四半期に比べて改善し、農業所得も干ばつの収束後は上向いた。このほかに輸出セクターも上向き始めている。一方、観光業は南部7県の連続爆弾事件やゼロダラー・ツアーの取り締まりがあったものの、引き続き成長している。しかし民間投資は依然として前年同期比で収縮している。資本財の輸入は前年に比べて低水準にとどまり、建設投資も不動産市況に沿って鈍化している。

 経済安定性については、一般インフレ率は前の四半期からわずかに低下した。干ばつの収束で生鮮食品の物価が落ち着いた。失業率は主に農業部門の雇用の増加を受けて幾分低下した。経常収支は観光収入が南部7県での爆弾事件とゼロダラー・ツアー取締前の時期に順調に伸びていたことや物品輸入額が低水準にとどまっていることを背景として黒字を続けている。


日付 : 2016年11月07日

By : 週刊タイ経済

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